しょうせつ

バレンタイン当日の昼休み。
昨日の事があるので中々気分は浮かないものの、
とうとう来てしまった運命の瞬間に、男たちは心なしかそわそわしている。

「やっぱり僕たちの予想は当たってそうですね、先生。
 僕はすでに姉上から、近藤さんはすでに柳生さんから貰っています。」
「そうか……俺はすでに猿飛がスタンバイしてた。」
「スタンバイ?チョコを渡すスタンバイですか?」
「国語準備室で全身チョコまみれで座ってた。」
「…………。」

女子や男子や甘いにおいで賑わう教室の中をボーッと見つめる銀八と新八。
ふと教室の端を見ると、神威が阿伏兎に説教を受けていた。

「アイツまた何したの?」
「何でも、また他校の生徒と喧嘩したみたいで……。」
「あぁ、それであぶさん教室で飯食ってんのか。アイツ呼んでも来ねぇから。」

ふーっと、銀八もため息をつき、
『俺が呼んでも断固として来なかったもんな』とふてくされる。
新八はあははと苦笑いをすると、また2人の方を見た。

「ちゃん、阿伏兎先生にあげちゃうのかぁ……。
 今年こそはちゃんのチョコ、ほしかったなぁ。」
「何言ってやがる。お前は明日貰えるだろ。お妙の弟という特権で。」
「そりゃ毎年余ったやつをくれますけど、今日貰うから意味があるわけで……。」

新八はそこまで言うと、はぁ、と深いため息をついた。
それに銀八が『来年はもうお前等卒業してるけどな』と、とどめを刺す。

『あ、銀ちゃ〜ん!新ちゃ〜ん!』
「ん?」
「あ、ちゃん!」

明るい声がした方向に振り返ると、
可愛らしい包みを持ったと神楽が教室に入ってきたところだった。

「何々?、銀さんにチョコくれんの?」
『残念でしたー!今年の銀ちゃん担当は別に居るから、その子から貰って!』
「……はぁ、やっぱりか。ー、義理でもいいからくれよぉ。」
『ダーメ!ところで、阿伏兎先生知らない?』

化学準備室にも職員室にも見当たらなかったんだけど、と言うに、
銀八は『ん、』と教室の端っこの方を指差す。
がそれに従って見ると、そこには神威を説教している阿伏兎の姿。

『あっれー?入れ違いになったのかなぁ?
 まぁいいや、神威も居るし。丁度いいね、神楽ちゃん♪』
「あ、えっと……。」

の言葉にガラにもなく暗い顔をしてうつむく神楽に、
新八が『どうしたの?神楽ちゃん』と聞けば、
『べ、別に、何でもないアル』とやはり暗い声色で返事が返ってきた。

『んもぉー、神楽ちゃん!大丈夫だから!ねっ?』
「おいおい神楽、まさかお前、兄貴にチョコ渡すくらいでビビッてんのかぁ?」
「べっ、別にビビッてなんかないアル!!余裕ネ!!、行くアルよ!!」

銀八の言葉に、神楽はドスドスと2人の方へ歩いて行ってしまった。

『……ありがと、銀ちゃん。』
「いいってことよ。明日のチョコ、期待してっからな。」

はにっこりと笑って、先に行ってしまった神楽を追いかけた。

「あぁ、やっぱりさん、可愛いなぁ……。」
「くっそー、後であぶさんを執拗にいじめてやろう。」
「アンタは子供か。」



続く

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ハッピーバレンタイン!(え?遅いって?かたいこというなy(ry)


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2009/02/20 管理人:かほ