「に、兄ちゃ……。あ、兄貴!!」 「ん?あぁ、じゃないか。何?俺にチョコでも渡しに来たの?」 2人に近づき威勢良く呼びかけた神楽を華麗に無視して、 神威は振り向きながらイスの上で足を組み、笑顔でそうに話しかける。 説教を放棄した神威に阿伏兎が何か言いたそうな顔をしたが、 神楽の手に持っているものを見て状況を察し、 はぁ、と深いため息をついて、そのまま何も言わずに弁当を食べ始めた。 「がくれるって言うなら、貰ってあげるよ。」 『いやいや、話しかけたの神楽ちゃんなんだけど。』 神威の予想外の対応にがやんわりと突っ込みを入れる。 そして神威は神楽の手にある包みを一瞥し、 軽くため息をつきながら『やっぱりか』と呟いた。 『へ?何?』 「いいや、何も。それより、何?」 『あぁ、ほら、神楽ちゃん?』 が神楽の背中を一押しして神威の前に立たせると、 いつも気丈な神楽が困った顔でオロオロしていた。 それが珍しかったのか、それとも事の成り行きが気になったのか、 弁当を食べながら阿伏兎も2人の様子を見学していた。 「どっ、どうせお前の事アル!チョコなんて一個も貰ってないんだろ? しょうがないから私がチョコを恵んでやるネ!」 ようやく喋りだしたかと思ったら、上から目線でそう言い放った神楽。 これにはも阿伏兎もため息と共に肩を落とす。 「いや、もう腐るほど貰ったんだけど?見えないの?このチョコレートの山。」 その態度に眉一つ動かさず真顔でそう答えた神威が指差した先には、 山盛りになったチョコレートの包みやら箱やら手紙やらが置いてあった。 『それマジで腐るんじゃないの?』 「お、女の子からのチョコなんて貰ってないくせに!!」 「何で男からチョコ貰わなきゃいけないんだよ。 ちゃんと全部女の子から貰ったよ。で、半分は告白された。」 さすが神威、モテモテだなぁ。なんて考えていただったが、 神楽が何も言えずに固まっているのを見て、こっそり神威を睨みつける。 それに気づいた神威がやれやれ、と両手を上にあげて ため息をつきつつお決まりのポーズをしてみせた。 「(の目が本気で怖い)……しょーがないなぁ。 神楽、手に持ってるもの、俺にくれるんだろ?貰ってあげるよ。」 「え!?あ、えっと…………はい。」 神威の予想外の言葉に一瞬戸惑った神楽だったが、 の『神楽ちゃん?』という言葉に、恐る恐る持っていた包みを手渡す。 「チョ、チョコが余ったから作っただけアル。」 「はいはい。一応貰っておくよ。」 『良かったね、神楽ちゃん♪』 はにっこりと笑って神楽の頭を撫でる。 すると神楽は嬉しそうに笑って、にギュッと抱きついた。 「ところで、俺にチョコは?」 『はぁ?アンタもぅそれ以上要らないでしょ?』 「要るよ。これでもまだ足りないくらいなんだ。」 『マジでか。』 は神威からチョコの山に目線を移し、それをまじまじと見つめる。 『これでも足りないってあんた……』とため息混じりに言い、 そして思い出したかのように『あ、そうだ』と目線を阿伏兎に向けた。 『先生、これ、アタシからです。』 「俺に?」 『はい!甘いものが嫌いって聞いたんで、抹茶のクッキーですけど、大丈夫でした?』 「あぁ。気ぃ遣わせちまって悪ぃな。」 『いえ、そんな。』 にっこりと微笑みながら阿伏兎に包みを手渡す。 それに阿伏兎も笑顔で返事をする。 「なにこれ、マジでつまんない。 ねぇ、あぶさんに作った残りでもいいからさ、俺にチョコ頂戴?」 『ダーメ!神威は神楽ちゃんからちゃんと貰ったでしょ? どうしても欲しいなら明日まで待って!』 「えぇー?今日がいい、のがほしい。じゃなきゃ、あぶさんの奪っちゃうよ?」 机に突っ伏してムスッとした顔でそう言う神威に、 はほとほと困り果てたような表情になる。 そしてそれに反論すべくが口を開こうとしたら、 『そうはいかねぇぞ、』と先に阿伏兎の声。 「…………?」 『あ、阿伏兎先生?』 3人が驚いて声の主の方を見ると、 声の主はにやっと笑ってを見ながら言葉を続ける。 「せっかくが俺にくれたんだもんなぁ?」 その言葉に、の心臓が飛び跳ねる。 『え、あ、あの、』と顔を赤くするに神威が面白くなさそうな顔をした。 「何だよ……結局あぶさんがイイトコ取りじゃん……つまんないの。」何かが動いたバレンタインデー
(ちゃんねぇ、自分から阿伏兎先生に渡したいって言い出したのよ?) (え!?マジですか姉上!?) (えぇ、マジですよ。ちゃんも乙女よねぇ) (そ、そうなのか……はぁ) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ ってなわけで、ちょっといつも(ラブラブ)とは違う、 阿伏兎さんオチ逆ハーでした! ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2009/02/20 管理人:かほ