しょうせつ

5時間目は服部先生の日本史だった。
でも何でだろう、痔の話しか頭に残ってないのは……。
しかも何故か授業が『座薬タイプにするように』で終わってしまった。
あれれ?私達一体何を勉強してたんだ?

「ちゃん、早く着替えに行くわよ。」
『あ、うん。』

そして6時間目は体育。
女子は松平先生(通称とっつぁん)、男子は鳳仙先生が担当している。
鳳仙先生はウチの学校で一番怖い生徒指導の先生なので、
男子はみんな体育の授業に遅れまいと必死だ。
とっつぁんはセクハラするし色々と無茶苦茶だけど、
授業遅刻なんかは大目に見てくれる先生なので私達は比較的のんびり着替えた。

「あーらお妙ちゃん、相変わらず貧相な胸ねぇ〜。」
「あら阿音ちゃん。アナタは相変わらず足太いわねぇ。」

更衣室を出て運動場へ行く途中、
偶然出くわしたお妙ちゃんと阿音ちゃんがまた口喧嘩を始めてしまった。
全く、この2人はいっつもライバル意識剥き出しなんだから……。

「お妙、その辺で止めときなって。阿音ちゃんも、お妙につっかからないの。」

多分、唯一この2人の喧嘩を止められるであろうおりょうちゃんが
2人の間に入ってまぁまぁとなだめにかかった。

「フンだ!その女が学年一のマドンナなんて世の中間違ってるわ!」
「あら、ひがみ?やだわぁ、モテる女は辛いわねぇ。」
「なんですってぇぇ!?」
「あーもうほら!!止めなってぇ!!」

大変そうだなぁ、とは思うけど、私は絶対にあの2人の喧嘩には関わりたくない。
だって、2人とも笑顔が超怖いんだもん!
だから私と神楽ちゃんと九ちゃんはいつも3人のやり取りを傍観している。

「あ、とっつぁんが来たアル。」
「お妙ちゃん、整列だぞ。」
『今日の授業何だっけ?100m走?』
「亀甲縛り大会じゃなかったかしら?」
『いやそれ授業じゃないし。』
「それ以前の問題やと思うけど……。」

私が誰にともなく質問すると、近くに居たさっちゃんが
ボケ(きっと本人は本気)で返してきたので、私はそれにツッコんだ。
しかし私のツッコミは不十分だったらしく、
隣から花子ちゃんに苦笑しながらさらにツッコまれてしまった。
うわ、私今ボケた感じになっちゃったよ。超ショック。
オイオイさっちゃん肩持つな仲間じゃねぇよ!!!!

「はいぃ、そるぇじゃあ出席はめんどくせーからパスだぁ。
 ルァンニングゥー、始めぇぇ!」

いつものように適当なとっつぁんの号令に、
私達は適当に、なんとなく、2列縦隊でランニングを始める。
ふと隣を見ると、私の隣はいつの間にか外道丸ちゃんになっていた。

『外道丸ちゃん、とっつぁんの授業初めてだよね。
 いっつもこんな感じでやる気ないんだよー。』
「そうなんでござんすか。あっしはてっきり二日酔いかと。」
『うん……見えない事もないね……。』

転校生の新たな感性に言葉を失った私。
確かに、とっつぁんは万年二日酔いみたいなテンションかもしれない。
でもそんな事を言い出すと銀ちゃんだって万年二日酔いじゃないか?
いや、あれは単にやる気がないだけか。目ぇ死んでるし。

そんなこんなでランニングも終わり、体操と柔軟も終えたところでいよいよ授業。
今日はやっぱり100m走の測定だった。
適当に前の方からどんどん測定して行き、私の番が来る。
一緒に走るのは神楽ちゃんと九ちゃん。ヤッベこれ、ビリの予感。

「よーい、ドン!」

つっきーの掛け声と共にスタートすれば、
神楽ちゃんが『ぬおおぉぉ!!』と叫びながら爆走していった。
その後ろを私と九ちゃんが同じくらいの速さで追いかける。

『ちょっ、えぇぇぇ!?神楽ちゃんそれ反則じゃないぃぃ!?』
「くっ!相変わらず運動神経が半端じゃないな……!!」

私も九ちゃんも健闘したけど、結果は14秒台。(神楽ちゃんは11秒フラット)

「も九ちゃんも頑張ったじゃない!」
『お、お妙ちゃん……。』

優しく微笑んでくれるお妙ちゃんに、ちょっと涙腺が緩くなった。
そうだよね、神楽ちゃんは体がおかしいんだもんね、比べちゃ駄目だよね。
そうさ、ナンバー1なんかにならなくてもいいんだ。
私は元々特別なオンリー1!

「よーい、ドン!」


ブオオォォンッ


私と九ちゃんが肩を組んで思いを分かち合っていると、
つっきーの声と同時に物凄い音が聞こえてきた。
まるでカーレースの会場で聞こえるような音。
私達が驚いて音のした方を向くと、そこには涼しい顔をした外道丸ちゃんと、
ストップウォッチ片手に煙草をポロリと口から零すとっつぁんの姿が。

「はっ、8秒フラットだとぅぉぉぉ!?」

とっつぁんの声と共に、あろうことか世界記録が塗り替えられてしまったのでした。




彼女はクラスの人気者

(外道丸ちゃんすげぇぇぇ!!!!) (アイツ……さては私のライバルキャラアルな!?) (あらあら、大変ねぇ) (と言うかアレ人間業じゃないだろう……) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 無理矢理だけど続きます! ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2010/01/21 管理人:かほ