「はーい、それでは今日の実習の説明をしますよー。 今日はみんなの大好きなロールキャベツを作ります。」 チャイムが鳴り、前でミツバ先生が今日の実習について説明を始めた。 退と近藤さんは結局間に合わなかったか、なんて考えながらも、 私は教室の異様な緊張感を肌で感じ取っていた。 「材料は、キャベツと、ひき肉と、玉ねぎと〜……。」 そんな重苦しい雰囲気の中、 ミツバ先生はいつもの笑顔と穏やかな口調で ホワイトボードに綺麗な文字で材料を書き込んでいく。 材料の隣にはちゃんと必要な量も書き込んでくれていて、 手順も分かりやすく書いてくれているので非常に親切……のように見える。 「そしてここで塩コショウを好みで振って、 最後にタバスコを一本投入したら完成です。」 キュキュッという気持ちのいい音がして、 ミツバ先生はとんでもない事を笑顔で口走りながらこちらを振り向いた。 その笑顔に3Zのみんなが頭を抱えながら深いため息をつく。 そう、ミツバ先生は普段は優しくて綺麗でいい先生なんだけど、 調理実習の際に異常な量のタバスコ投入を要求するという とんでもなく変な癖を持つ人物でもあるのだ。 口に出すと総悟が怖いので誰も言わないけど、 3Zの調理実習の暗黙のルールに 『タバスコ投入は何気なく拒否すべし』というものがある。 ハッキリ断っちゃ駄目だけど、ハッキリ言わなきゃ全然聞いてくれないという とんでもない板ばさみに苦しみながら、私達はいつも実習を行っているのだ。 「はい、では作り始めてー。分からないところはいつでも聞いてね。」 そんな残酷な仕打ちをする人物とは思えないほどの優しい笑顔が 恐怖の調理実習開始の合図をする。 それに皆がかなりの不安を抱きつつもロールキャベツを作り始めた。 『晋助、お願いだから暴れないでね。 タバスコはつっきーがなんとかしてくれるって言ってるから。』 アタシは作り始める前にまず一番危険な晋助に釘をさしておいた。 こいつ一番最初の調理実習の時間にミツバ先生に向かって 「んなもん食えるかァァァ!!!!!」という正論を吐いたから その場で総悟と殴り合いの喧嘩になっちゃったんだよね。 そっから3Zの暗黙のルールが出来たわけなんだけど、 とりあえず毎回これだけは必ず言うことにしている私であった。 「あんな理不尽な要求、ハッキリ言ってやりゃあいいじゃねーか。」 『だからそれが駄目なの!お願いだから普通にしてて!』 「がケチャップまみれでエロい声出してくれんなら考えてやる。」 『何それ何プレイ!?アタシ絶対嫌だよそんな気持ち悪いことするの!!!!!』 晋助の予想外の要求に力の限りツッコミをいれる私の前では、 つっきーが手際よく役割分担をしてくれていた。 「じゃあ桂にはキャベツを切るのを頼みんした。 わっちが全体の味付けと煮るのを担当するから、 は巳厘野と一緒に中身作りをしてくれなんし。」 「おい、俺は何すんだよ。」 「ぬしはキャベツを巻く係りじゃ。 そうすればがあーんしてくれると言っておるぞ。」 『え!?アタシ!?』 「あーんか……悪くねぇな。じゃあ今日はそれで勘弁してやるよ。」 そう言いながらドカッと椅子に座った晋助と 何気ない顔で調味料を探しているつっきーに色々と言いたいことはあったけど、 とりあえずこれで晋助がジッとしてくれそうだったので 私はあえてこのまま話を流すことにした。 まぁ、ケチャップまみれがあーんになったんだから、 良かったんだよね、多分……。 『じゃ、じゃあ巳厘野君、一緒に中身作ろっか。』 「あ、あぁ……。」 「タンマ。やっぱり却下。」 小太郎とつっきーがキャベツに取り掛かっている隣で 材料を取りながら私が巳厘野君に話しかけると、 後ろで晋助がガタッと立ち上がって私達の方に歩いてきた。 「俺もやる。」 『はぁ!?アンタめんどくさい!』 「お前等を2人っきりにしておけねぇんだよ。」 『どこが2人っきり!?周りにいっぱい居ますけど!?』 「文句ねぇよな、巳厘野。」 「……邪魔はするなよ。」 晋助と巳厘野君はなぜかバチバチと火花を散らしながら睨みあい、 たかがロールキャベツの中身を作る作業を3人でやることになってしまった。 何でウチのクラスの人間って仲良く出来ないんだろう、いつもいつも……。 「高杉!!貴様、を肉まみれにして楽しもうなど俺が許さんぞ!!」 「はぁ?テメーそんなこと考えてんのかよ。特殊すぎるだろ趣味が。」 『ケチャップも同じようなもんだよ……。』 「いいから早く中身を作りなんし!キャベツはもう完成じゃぞ!」 下らない言い争いをする晋助と小太郎がつっきーに一喝され、 私達はようやく中身作りを開始した。 こねるのは私担当で、材料を入れるのは巳厘野君の担当。 晋助はつっきーの指示通り調味料を入れる担当。 正直こんなに大人数でやる作業じゃないと思うんだけど…… まぁ、平和と言えば平和、かな?ロールキャベツ、50%完成
(つっきー、中身出来たよ) (こちらもキャベツの準備はバッチリだぞ) (じゃあ高杉、あとは任せんした) (…………ダルい) (なんという奴だ……) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ このメンバーで会話とか普通に疲れるわ。 だってお前等本編で接点ない奴等ばっかじゃねぇか!(八つ当たり) ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2010/03/08 管理人:かほ