『あー!終わったー!!』 怒涛のバイトも終わり、私は変態スリーと一緒に帰り道を歩いていた。 銀ちゃんたちは結局最終オーダーまで残っていたので 私は銀ちゃんたちの接客だけで今日の任務を終わらせる事が出来た。 まぁ元々接客の予定がなかったって言ったらそうなんだけど、 メイド服だったこと以外は普段となんら変わらず、 結構楽しかったかな、なんて思ってみたり。 でも帰り際、私の容姿がいい宣伝になるからだとか、 イケメンが寄ってくるからだとか言われて、 支配人に正社員にならないかと言われた時は本当に困った。 花子ちゃんにも手伝ってもらって何とか断れたけど、 異常なテンションの支配人を納得させるのにはかなり骨が折れたものだ。 まぁ花子ちゃんの正式採用も決まったし、 今日はトータルで見れば良い一日だったんじゃないかと思う。 「なぁ、俺メイド喫茶での記憶が丸々無いんだが……。」 私の隣を深刻な顔で歩いていたトシが頭を抱えながらそう言った。 それに私と銀ちゃんと神威は顔を見合わせ、 何事も無かったかのようにまた顔を前に向けて返答した。 『まぁ……気にしない方がいいと思うよトシ。』 「若気の至りだよな。」 「銀さんはもう良い大人だけどね。」 今日と明日はショックが強すぎるだろうから、 写真を見せるのは明後日以降にしよう。 私たちはアイコンタクトでそう約束し、また帰路を歩き始めた。 「それにしても、メイド姿のめちゃくちゃ可愛かったよなぁー。」 『ちょっと銀ちゃんまだ言ってんの?』 「いや、あれはマジ可愛かったって。」 『褒めても何も出ないよ。アタシは二度とゴメンだから!』 「ちぇー、可愛かったのになぁー。」 私の言葉に銀ちゃんはつまらなさそうに口を尖らせた。 こうでも言っとかないと、 後々文化祭とかでメイド喫茶しようとか言い出すに違いない。 ……まぁ、私が嫌がってても結局言うだろうけど……。 「今度は違うプレイも試してみる?例えば、義理の兄妹プレイとか。」 『神威、プレイって何?アンタは一体どこの世界に旅立っちゃってるの?』 神威の危険な発言に私がツッコミを入れれば、 その隣を歩いていたトシが急に「あ、」と声を出した。 「そう言えば兄妹で思い出したんだが、 お前等隣のクラスに転校してきた奴等覚えてるか?」 『あぁ、結野アナとそのお兄さんでしょ? 銀ちゃんが転校生騒動巻き起こしちゃったやつ。』 私はつい先日の出来事を思い出しながらそう言った。 銀ちゃんがいつまで経ってもHRに顔出さなくて、 痺れを切らしたアタシが隣のクラスを見に行ったら紙が飛んできて、 頬っぺたから血が出たと思ったら3Zの問題児がいっぱい教室に入って来て、 とんでもなく結野アナが可愛かったっていう…… まぁだいたいそんな感じだったと思う。 あれから学校ではあの日の出来事は“転校生騒動”と呼ばれている。 主犯(という名の原因)は勿論銀ちゃんね。 「だって結野アナ超可愛いんだもん。」 『アタシも同じ意見だけど、だもんとか言っても可愛くないよ銀ちゃん。』 「で?そのケツの穴のムジナがどうかしたの?」 『オイ!!!!お前結野アナに謝れ!!!!土下座しろ!!!!!』 「ケツの穴のムジナか……俺も仲間に入れるかな。」 『銀ちゃんに至っては気持ち悪い!!!!!』 神威のとんでも発言に銀ちゃんが被せボケという荒業を繰り出したので、 私は一人でバカ2人のツッコミ役をする羽目になった。 こういう時新ちゃんが居ないと非常に辛い。 「アイツ等、どうやらウチのクラスの巳厘野と因縁があるらしいぜ。 外道丸との喧嘩が絶えないからって近藤さんが山崎に調べさせたんだ。」 『へぇ〜、風紀委員ってそんなコトまでするんだ〜。』 「巳厘野が急に転校してきたのも、あの兄妹絡みらしい。」 真剣なトシの言葉に急にシリアスな雰囲気になってしまった私たち。 この前清と一緒に帰ってる時に、 何で急に登校する気になったんだろうねって気にしてたことは気にしてたけど、 まさかこんな形で手がかりを掴むなんて……。 こりゃ清にもこの話をして、探偵ごっこを再開しなきゃ! そこまで考えた私は内心ワクワクしていたけど、 とりあえずこのシリアスな空気を和ませようと冗談を言ってみることにした。 『でもさ、あれだけ可愛い妹なんだったら、 実はあのお兄さんシスコンだったりするかもねー!』 「シスコンの奴の気が知れないよ。妹の何が可愛いんだか。」 『そう言う神威だって、神楽ちゃんのこと可愛いと思うでしょ?』 「全然。」 『もー、またそういうこと言うー。』 私の言葉に神威が予想通りの反応を示したけど、 なんだかんだ言って神威はツンデレだからなぁ……。 私は小さく笑って神威の横腹をえいえいと肘打ちした。 「俺の妹がもし結野アナだったら溺愛するけどなぁ。」 『そんなのアタシだって!』 「いや、お前も女だろーが。」 そんなことを言いながら歩いていると、 タイミング良く妹喫茶の看板が見えてきた。 銀ちゃんはいかにも悪そうな顔でよっしゃ入るか!なんて言ってるし、 神威はあの喫茶店から結野が出てきたら面白いのにね、なんて言っている。 そんなわけないじゃん、と私が2人を一蹴したのも束の間、 急にその妹喫茶から誰かが飛び出してきた。 「道満!ちょっと待たんか!悪かった!今回はわしが悪かった!」 「うるさい!!!!もう二度とお前なんか信用せんぞ!!」 「ちょ、ちょっとクリステル似の子が居ったからつい……。」 「二度と俺に近づくな晴明!!!!!」 「おい、アレ……。」 『……うそでしょ。』 「ほら、ビンゴだろ?」 「おいおいおい……。」 私たちが呆然と立ち尽くしていると、 店から飛び出してきた2人がふとこちらに振り返り、そして同じくフリーズした。 「Σゲッ!?貴様等……!!!!!」 「お主等は……いつぞやの変態教師と木更戯……!!」 とある土曜日の午後のこと。 メイド喫茶という過酷な戦場の帰り道、 あろう事か私たちは第二ラウンド開始のゴングを鳴らしてしまったようです。山さん、奴ぁクロです
(ト、トシ、とりあえず一緒にタイムマシン探そっか) (そっ、そうだな。おおおおいお前等落ち着けよ) (ぎぎぎ、銀さんも一緒に探してやろうか?) (アンタ等が一番落ち着きないよ) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 超久々の更新とかこれ連載としてどうなんだろうか。← ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2010/09/18 管理人:かほ