しょうせつ

「おっ、何それ?花見?いーじゃん、俺も誘えよー。」

アタシの棒読みに周りの雰囲気が一気に冷たくなってしまった時、
急に窓の外から軽い声が聞こえ、その場に居た全員が一斉に窓の外を見た。

『銀ちゃん!』
「おい銀八、テメーそんなとこで何してやがる。さっさとHR始めろ。」
「まぁまぁ。どーせ一時間目も俺なんだから、そんなに焦ることねーだろ?」
「テメーそんな事言ってこの前も授業丸々HRで潰したじゃねーか!!」

出席簿をひらひらさせながら言う銀ちゃんにトシが怒ってつっかかった。
そんな2人を原田君がまぁまぁと宥めている。

「じゃあ銀八先生も来るとして……やっぱり男所帯になっちゃうなぁ。」

退が名簿みたいなものに綺麗な字で「銀八先生」と書きながら困ったような声を出した。
銀ちゃんの名前の横に「酒担当」と書かれていたのはあえて見ないことにする。

『じゃあ神楽ちゃんとかも誘ったら?』
「柳生さんはダメだよ。近藤さんと喧嘩になる。」
「銀八先生が来るなら猿飛さんはちょっと……。」

アタシの言葉に鴨太郎と退が間髪入れずにそう言ったので、アタシは思わず苦笑した。

『つっきーは今週末バイトがあるって言ってたし……
 結局誘うとしたら女の子は神楽ちゃんだけかぁ。』
「チャイナは俺が喧嘩するから却下でさァ。」
「沖田君の意見は却下する。」

鴨太郎がピシャリとそう言ったので、総悟はちぇっ、とそっぽを向いた。

「ねぇ、志村さんを誘うなら新八君も誘おうよ。」
『それもそうだね。ぱっつぁん居ないと退が寂しいもんね。』
「あぁ、地味属性がいねぇからなァ。」
「沖田さん、俺で憂さ晴らししないで下さいよ。」

まだぷぅ、と頬を膨らませたままの総悟に退が苦笑いでそう言った。
じゃあ今のところお花見に行くメンバーは風紀委員のみんなと、
アタシと、神楽ちゃんと、お妙ちゃんと、銀ちゃんとぱっつぁんってことか。
あれれ?なんかこのメンバーでお花見ってちょっとデジャヴ。
何でだろうか……高校に入ってからお花見なんて行った記憶ないんだけどなぁ……。

「おーい、テメーらぁ、HR始めっぞー。
 オイ志村、その粗大ごみちゃんと分別して捨てるんだぞー。」

トシとの口喧嘩が終わったのか、
銀ちゃんはいつものように気だるそうな声でそう言いながら教卓へと歩いて行った。
3Zはそれを合図に全員が大人しく席に座る。
教室の後ろの席の人間も、近藤さんの公開処刑が終わったのを確認して席に着いた。
……っていうかアタシの席にも血が飛び散ってるんですけど。
苦笑いで机を眺めるアタシの左隣では、
同じく顔を引きつらせた巳厘野君が机に付いた血を見つめていた。

「何だコレは……虐めか。」
「、巳厘野、とりあえずこれで血を拭きなんし。」

右隣のつっきーはなんと用意周到なことか、
掃除箱から取ってきた雑巾をアタシ達に手渡してくれた。
アタシはありがとうとお礼を言いながら雑巾を受け取り血を拭き始める。
そしてふとつっきーの向こう側を見ると、
同じく最後列である小太郎と晋助も雑巾片手に血を拭き取っていた。
……なんか、晋助があーゆー雑用してるとちょっと面白いよね。

「ん……?何だよ。テメー今ちょっと馬鹿にしたような目で俺を見たろ。」
『えっ!?い、いやっ、別に!?』
「いいや見たな!俺が雑巾がけしてんのがそんなにおもしれーか!」
「高杉、当然面白いと思うぞ。」

アタシの視線に気づいた晋助がアタシに突っかかってきたところに、
小太郎の天然ボケが炸裂した。(って言うか晋助コイツ人の心読めるの?)
勿論、小太郎の言葉に晋助はカチンときたようで、
「あぁん!?」と不良みたいな(いや実際不良なんだけど)声を出して
小太郎の胸倉を掴んで取っ組み合いの喧嘩を始めてしまった。
この2人相当うるさいと思うんだけど、
相変わらず銀ちゃんは最後列組はスルーの方向でHRを進めている。

「あっ、そーいやぁな、今日の二時間目も俺が担当だから。」
「え?どうしてですか?確か二時間目は服部先生のはずですけど……。」

銀ちゃんの突然の発表に、戸惑いを隠せないぱっつぁんが尋ねる。
すると銀ちゃんは面倒くさそうに頭をボリボリ掻いて平然とこう応えた。

「アイツ持病の痔が悪化してなぁ……代わりに俺が社会教えることになったから。」
「え?だって先生は国語の……。」
「大丈夫だろ。」
「いやダメですよねそーゆーの。」
「いいんだよ、高校の社会なんて大卒の俺にとっちゃ1+1みたいなもんだから。」
『大丈夫かこの学校……。』

銀ちゃんの言葉にクラス全員が不安になったところでチャイムが鳴り、
とりあえずは銀ちゃんの専門である国語の授業が幕を開けた。




った時はお互い様?

(えぇっとー……あれ?なぁ伊東、マゼランって何した人だっけ?) (全然ダメじゃないですか先生) (転校しよう……) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ こーゆーグダグダな3Zが一番好きだ! ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2010/10/02 管理人:かほ