「しっかし本当にそっくりだったなぁ。」 『あぁ、結野君と鴨太郎と鷹久さん?』 アタシは自分の席で伸びをしながらそう言った清に声をかけた。 するとアタシの前の席の鴨太郎と隣の席の巳厘野君が話に入ってきた。 「僕とはあまり似ていないと思うけど、兄さんにはそっくりだったね。」 「そうか?髪型が違うだけでお前等3人はそっくりだと思うが。」 『巳厘野君、鷹久さんのこと結野君だと思ってたもんね。』 「あーそっか。道満は鷹久にあんまり会ったことねぇもんなぁ。」 清が巳厘野君の顔を見ながらそう言えば、鴨太郎はちょっとだけ嫌な顔をした。 やっぱり自分と同じ顔がたくさん居るって言うのは気持ち悪いことなのかなぁ。 アタシはそんな経験一度もないけど、でも、 やっぱり鴨太郎と結野君と鷹久さんがそろってたら混乱しちゃうもんなぁ。 『鴨太郎が眼鏡してなかったり、鷹久さんがいっつも笑顔じゃなかったら、 きっと「どーれだ?」って言われても分かんないね。』 アタシがなんとなしにそう言えば、3人は一斉に驚いた顔をした。 「お前、もう3人の見分け方をマスターしたのか?」 『え?』 清の言葉にアタシが目を見開けば、 巳厘野君と鴨太郎が納得したような顔で口を開いた。 「なるほどな。眼鏡が伊東で、笑顔が伊東兄で、無愛想が晴明か……。」 「君はやっぱり視点が他の人とは違うようだね。」 『え?えっ??』 困惑するアタシとは裏腹に、2人は感心したようにそう言った。 アタシ、そんなに感心されるような事を言っただろうか……。 そう思ってアタシがオロオロしていると、 そんなアタシの様子を見て清があははと笑った。 「しかし良かったなぁ道満!今度から伊東兄弟と晴明を見間違わなくて済むぞ!」 「お、俺はもう見間違わん!」 そう言って眉間にしわを寄せる巳厘野君を見て、清はまたケラケラと笑った。 『清って巳厘野君と仲いいよね。それにさっき結野君のこと晴明って言ってたし。』 「ん?あぁ、俺って結構馴れ馴れしいからなぁ。 道満とだって、あんまり喋った事ねぇもんな?」 『え?そうなの?』 アタシが驚いた声を出せば、巳厘野君は「そうだ」と首を縦に振った。 『何それズルい!アタシ清と巳厘野君はずっと仲良しなんだと思ってた!』 「ズルいって君……。 清と巳厘野君は2年の一学期の時しか同じクラスじゃなかったんだよ?」 『えぇー!?そうなの!?うわー!アタシ騙された!』 「いや騙した覚えはねぇけど。」 アタシがブーブーと頬を膨らませて抗議すれば、 3人は呆れた顔で苦笑しながらアタシを見た。 『やっぱりズルいよ!名前で呼んでるだけで仲良し感をアピールするなんて!』 「はぁ?お前さっきから何言ってんだよ。」 『仲良し仲良し詐欺だ!弁護士を呼んでくれ!!』 「キミが弁護士を呼んでどうするんだ。ちょっと、落ち着いて……。」 呆れた顔でアタシを止める鴨太郎をスルーして、アタシは声高らかに宣言した。 『じゃあアタシも仲良し感を醸し出すよ! 今日からアタシも巳厘野君のこと道満君って呼ぶよ!晴明君もね!!』 「えっ!?」 「……君ってホント突拍子もない事を言い出すよね……。」 「お前の頭ん中カチ割って覗いてみたいわ。」 アタシの突然の名前呼び宣言に、鴨太郎と清は大きな溜息を吐いた。 道満君はと言うと、何故か顔を真っ赤にしてアタシを凝視している。 あれ、なんかマズかったかな。 『道満君、アタシに名前で呼ばれるの嫌?』 アタシが尋ねると、道満君はまた「えっ!?」と声をあげながら驚き、 慌てたようにオロオロとしたかと思ったら、 「好きにしろ!」と言って窓の方を向いてしまった。 そんな道満君の様子に、鴨太郎と清があはは、と乾いた笑い声をあげる。 『やった!じゃあアタシのこともでいいからね! よっしゃあ!これでアタシも友達100人計画達成にまた一歩近づいた!』 「友達100人計画!?キミそんなことをしていたのかい!?」 『ううん!今決めた!』 「なんという計画性のなさ!!」 鴨太郎がアタシにそうツッコミを入れたところで、 狙ったかのように始業を告げる本鈴が鳴り響いた。友達100人出来るかな?
(良かったなぁ道満、馴れ馴れしい俺に感謝しろよ♪) (う、うるさい!) (巳厘野君、悪いが君には渡さないよ) (望むところだ!) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 転校生騒動一段落! ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2011/08/15 管理人:かほ