雲一つない青空の下、僕たちは巷で噂の「恋愛桜」の下でお花見をしていた。 綺麗な青をバックに薄桃色の桜が初夏の風にそよそよと吹かれている。 こんなに素敵な光景を目の前に、僕の目の前では醜い争奪戦が繰り広げられていた。 「ちゃんの弁当は俺んだァァァ!!」 「あっ、テメーらちゃんの弁当独り占めすんじゃねーよ!!」 「どれだ!?どれがちゃんの弁当だ!?」 「あっ、テメッ、待ちやがれ!!」 「とったどォォ!!」 そんな言い争いをしているのは、風紀委員の面々。 この人たちはちょっとは花見をしようという気はないんだろうか。 それどころか、恋愛桜と名高い桜の目の前で 醜いちゃん(の弁当)争奪戦を繰り広げているし……。 いっそコイツ等は恋愛桜の祟りにでもあえばいいと思う。 「全く、騒がしい人達だ……。」 そう言って伊東君はちゃっかりちゃんの手作り玉子焼きを頬張った。 ちゃんと僕と神楽ちゃんが分担して作った弁当は 数箇所のブルーシートに平等に仕分けられたわけだけど、 案の定というか何というか、各シートでちゃんのお弁当争奪戦になっている。 各シート2/6がちゃんの弁当で、 みんなにはあえてどれがちゃんの作った弁当か言わなかったから、 各々テキトーな予想で弁当を取り合っているのだった。 『お妙ちゃんのお弁当がないんだから、危険なお弁当はないのにねぇ?』 ちゃんが争奪戦の様子を不思議そうに眺めながらそう言えば、 隣に座っていた神楽ちゃんがやれやれ、と言いたげな表情で肩をすくめた。 「はニブいアルなぁ。男はみんな狼ヨ。」 『え?それどういう意味?お腹すいてるって意味?』 「間違いではないけど……。」 僕はそう言ってあはは、と苦笑した。 当の本人であるちゃんがこれだもんなぁ。 風紀委員に限らず、ちゃんに思いを寄せる人達の思いは一生届かないだろう。 「んー!の玉子焼きうめぇなー!」 「にしちゃあよく出来てる方でさァ。」 『なんだとぅ!総悟!褒めるなら素直に褒めなさいよ!』 銀八先生と沖田くんがちゃんのお弁当を褒めれば、 ちゃんはムッとしたような嬉しそうな表情でそんな言葉を返した。 僕たちのシートのメンバーは銀八先生と沖田くんとちゃん、 そして神楽ちゃんと山崎くんと土方さんと伊東くんと僕だ。 他のシートよりも大人の割合が高いので、比較的穏便に花見が出来ていると思う。 ちなみに、大人というのは年齢的なものではなく、 土方さんや伊東くんのように人間がデキているという意味なので間違えないように。 銀八先生は開口早々「の弁当は俺のモノ!」と言い放った精神年齢ガキな大人なので 今回の「争奪戦を繰り広げない大人」としてはカウントしないこととする。 あとは山崎君や僕みたいな平和主義者が居るのも、 このシートが平和な花見をできている理由の一つだろう。 「ちゃん、本当においしいよ。将来いいお嫁さんになるよきっと。」 『やっだ退ったら!褒めてもなにも出ないよ!ありがと!』 「痛い!!ちゃん嬉しいからって力の限り殴らないで!!」 山崎君がちゃんの弁当を素直に褒めれば、 ちゃんは照れ隠しなのか何なのか、 山崎君の背中に向かって自分の右手を思いっきりフルスイングした。 その直後、山崎君はほとんど泣きそうな表情でちゃんに訴える。 しかし、ちゃんは山崎君の言葉なんか華麗にスルーしてクネクネしながら 『まぁアタシがいい嫁になるのは当たり前だけど!』なんて言っている。 普通にしてれば本当に美少女なのになぁ、ちゃん……。 「なぁ、銀さん家に毎日飯作りに来てよ。」 ちゃんの隣で玉子焼きを頬張っていた銀八先生が ストレートにちゃんを口説きにかかった。 その瞬間、流石の土方さんや伊東くんも目の色が変わる。 『えぇー?嫌だよ。銀ちゃん自分で何でも作れるじゃん。』 「作れるけど忙しくて作る気になんねぇんだよ。」 『じゃあ作ってくれるお嫁さんでももらえば?』 「が嫁さんになってくれたら万々歳なんだけどなー。」 『嫌ですー。銀ちゃんは年上過ぎるから嫌ですー。』 「バッカお前、知らねぇの?最近年の差婚って流行ってんだぞ? かとちゃん見てみろ、すっげぇ年の差じゃねーか。」 『かとちゃんは大人の魅力があるもん。銀ちゃんにはないもん。』 「ちゃんいつ銀さんの心をえぐる方法身に付けたの?銀さん泣きそうなんだけど。」 銀八先生がそう言うと、 ちゃんは『知ーらないっ』と言いながらプイ、とそっぽを向いてしまった。 そんなちゃんの反応に、銀八先生ががっかりしたように肩を落とす。 どうやら銀八先生のプロポーズは失敗に終わったようだった。 これには一部始終を見守っていた土方さんも伊東くんも安堵のため息をついた。花より団子より、
(全く、誰も桜なんて見てやしないんだから……) (仕方がないネ。桜よりももっと綺麗なモンがそこに居るアル) (神楽ちゃん、その発言ちょっとキザっぽいよ) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ ウチの3Zお花見篇は原作お花見メンバーでお送りしております。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2012/08/16 管理人:かほ