しょうせつ

 

【愛してるって言って!:後編】

、どうしたの?そんなに息を荒げてさ。」 『はぁっ、はあっ、あのっ、どいて下さいっ、団長っ。』 「そんなに顔を真っ赤にして、誰を誘惑しに行くつもり?  誘うなら俺にしなよ。なら大歓迎だよ。」 『ちょ、や……!』 団長がの肩に手をかけようとした瞬間、俺は急いでに駆け寄り抱き寄せた。 一瞬団長は急に出てきた俺に驚いたが、すぐにいつもの笑顔に戻って 『なにするの阿伏兎』と敵意をあらわにした。(あぁ、俺殺される……) しかしここで引き下がってはまたを追いかける羽目になる。 運のいいことに、は俺が団長に何を言うか期待しているらしく、 俺の腕の中から逃げようとしない。 団長の殺意剥き出しの笑顔から目を逸らしたいのを我慢して、俺は意を決した。 「こ、コイツは俺の女なんだから、手ぇ出さねーでくれよ。」 言い終わり、俺は激しく後悔した。 言うんじゃなかった……めちゃくちゃ恥ずかしいし、絶対に殺される。 予想通り、団長は笑顔をさらに深くして 『へぇ阿伏兎も言うようになったね』と言いながら指の骨をボキボキいわし始めた。 おいおい……俺が一体何したって言うんだよ……。 運命というものを恨みながら引きつった笑顔で団長との距離を広げようと思った時、 急に何かが俺に飛びついてきた。 予想外の衝撃に、俺は飛びついてきたものごと後ろに倒れる。 何事かと思い上半身を起こしてみると、そこにはやはりの姿があった。 「な、どうし……。」 『阿伏兎さんごめんなさい!やっぱり好き!大好き!!  さっきの大ッ嫌い取り消してください、頭の中から消し去って下さいぃ!』 「お、おい……。」 涙目になりながらは俺の首に手を回し、思い切り抱きしめてきた。 ちょ、嬉しいけど、嬉しいけど、団長が怖いから一旦離れてくんねーかな。 しかしそんなこと言える訳がなく、とりあえず俺もを抱き返す。 の怒りが収まったところで冷静になった俺の頭は、 嬉しさやら恐怖やら恥ずかしさやらで真っ白になる寸前だった。 よく考えればここ、艦内の階段の踊り場じゃねーか。 こんな所で抱き合ってる俺たちって一体何者なんだよ……。 運良くここには団長しか居ないが、誰か来たらマジで恥ずかしいだろコレ。 いやそれよりも団長だ。本気で殺されるぞこれは。 笑顔がさらに深くなってるって。肩までゴキゴキいわし始めたって。 俺はぐるぐる回る脳内の言葉を整理し、 とりあえずと一緒に部屋に戻ろうという結論に達した。 いや、違うな。 まずは団長から逃れるという難関をクリアしなければ。 「お、おい。とりあえず、へ、部屋に戻るぞ。」 『はい!阿伏兎さんと一緒ならどこにでも行きます!!』 俺が言うとはピョコッと立ち上がり、俺に向かってニッコリと微笑んだ。 ……めちゃくちゃ可愛いじゃねーか。 じゃなくて、この後が問題なんだよコンチクショー。 俺は引きつった笑い顔でドス黒い何かを背負っている団長の方を見て、 『目を逸らせ殺されるぞ』という本能と戦いながら 「じゃ、じゃあ団長、俺たちはこれで。」 と言い、逃げるようにその場を立ち去った。 が居たので攻撃こそして来なかったものの、十中八九次会ったら殺される。 あぁ……何でこんな事になったんだ。俺何も悪くねーだろ。 部屋への帰り道、もう二度と部屋から出ないと引きこもりになる決意をした時、 隣を歩くが俺の腕に抱きついて『ねぇ、阿伏兎さん』と言った。 俺は正直魂が抜けていたので気の抜けた返事をしたのだが、 そんなもんお構いなしにはとびっきりの笑顔付きで言葉を続けた。 『ずーっと大好きですからね!』 あぁ、なるほど。ようやく理解した。 俺の人生を狂わせたのは――……。

お前を得るために壊れた俺のプラン

(な、何だよいきなり……) (あはは!阿伏兎さん顔真っ赤ー♪) (う、うるせぇ!!) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ なんだ、ただのバカップルか。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2009/01/02 管理人:かほ