しょうせつ
ー?悪いけどこの任務俺の代わりに行ってくれない?
 俺めちゃくちゃ忙しいんだ。」
『へぇ〜……お菓子を食べるのにそーんなにお忙しいんですか、団長様。』
「うん、もう大変だよ。だから行ってきてね。これ団長命令。」
『…………。』


そんなこんなで、俺は今ウチの紅一点、と一緒に任務に来ていた。

「……いやいやいやいや。」
『何よ、文句あんの?あるなら団長様に言ってよね。
 あんのクソ団長、帰ったらボッコボコにしてやるんだから。』

はそうブツブツ言いながら、先ほど殺した奴の頭部を棒でグリグリしていた。
頭部はもう原型がなく、が右へ左へ棒を回す度に
グチャグチャとなんともグロテスクな音を立てていた。

「おい、そこらへんにしとけ。次行くぞ。」
『あーはいはい。ホントに阿伏兎は人使い荒いんだから。
 あのクソ団長様に似てきたんじゃないのぉー?』
「冗談でも止せよ、死にたくなるほど心外だぜ。」

両手を挙げてやれやれ、とお決まりのポーズをすると、
はひょい、と死体の山から降りてきて、俺の後ろに付いてきた。
あぁ……柄にもなく緊張する。
後ろを振り返りたい衝動に駆られるが、どうしても自然に振り向く事が出来ない。
俺は自分の行動にため息を吐きつつ、いつもよりも早めに歩みを進める。

何が楽しくてこんな60代目前のオッサンが、
こんな小娘に調子を狂わされなくちゃならんのだ。
まぁ仕方のないことだ。俺はこのに惚れてしまったのだから。

『あ、阿伏兎ー。見て見てアレ、初めて会った時に見たやつに似てない?』
「あぁ?」

俺は軽く返事をして(この前機嫌が悪そうだとに注意された)、
言われたとおりの指差す自分達の遥か上空を仰ぐ。
そこには、こんな汚れた辺境の星には珍しく、夏の大三角形が輝いていた。

「……あぁ、そういえば……。」

と初めて会った時も、こうやって星が光り輝いていた。
俺たちが一日の中で唯一思い切り暴れる事が出来る真っ暗な夜に、
まるでそこだけ日が射しているかのように、一身に強い月の光を浴びて、
その体に纏った紅が、月の光に反射してとても幻想的だった。

「覚えてたんだな。」
『それはこっちの台詞よ。阿伏兎、あの日の事なんか忘れてると思ってた。』
「……忘れるわけねーだろ。」

今まで何人もの女を見てきた中で一番印象的で、
この圧倒的な力を振りかざして捻じ伏せ抱いた女よりもずっと魅力的で、
この世に生を受けてから浴び続けた血の中で最高に綺麗な血を持つ、
夜王の右腕に最も近いと称された、この俺を惚れさせた女と出会った日なんだから。

『綺麗だねー。』
「お前もな。」
『またまたー!お世辞を言い慣れたオッサンに言われても嬉しくないっての!』

幼い子供のようにあどけなく笑うに、俺は肩をすくめて
『お世辞なんて生まれてこのかた一度も言った事ねーよ』と言ってみたが、
それでも純粋無垢なお前にはプロポーズとして届かなかったようだ。
はいはい、といつものように流され、は俺を置いて先へ先へと歩いていく。

「…………すっとこどっこい。」

苦笑とも微笑ともとれる表情をした自分に一瞬驚き、
俺は前を歩くに追いつく為に少し早歩きでまた歩き出した。




いつかこの想い
 打ち明ける日が来たならば

(お前は何て言うんだろうなぁ) (ん?何か言った?) (いんや、何にも) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ どうしよう!!ちゃんになりたい!!!!!!!(ぁ) それにしても、難しかった、愛ゆえに……。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2009/01/15 管理人:かほ