しょうせつ

『アタシは、阿伏兎さんが幸せならば、それだけで幸せですよ。』

いつものように団長の不始末の始末書を書いている時、
急に後ろで俺の傘の手入れをしていたがなんとなしにそう言った。
勿論、俺の真後ろで作業をしていたの呟きが聞こえないはずがなく、
俺は怪訝そうな顔をしながら書いていた手を止め、に振り返った。

「……んだよいきなり。」
『いえ、別に。言ってみたかっただけです。』

はそう答えたがこちらに顔は向けず、代わりに俺の背中に体を預けてきた。
そしてそのまま俺の傘を愛しそうにギュッと抱きしめながら、
もう一度『アナタの幸せが、アタシの幸せなんです』と言った。

「……悪ぃな、それならお前は今不幸せまっしぐらだ。」
『へ?阿伏兎さん、今不幸せなんですか?』

今度は俺に顔を向けて、不思議そうな驚いたような顔でが尋ねてきた。
その反応が予想外で照れくさくなり、俺は顔を逸らしながら答える。

「あ、あぁ。団長に仕事押しつけられるわ、お前は盗られるわ……。」

自分でも驚くような弱く小さな声でそう言うと、
はキョトンとした顔で俺を見つめながら小首を傾げた。

『へ?アタシがいつ団長に盗られました?
 アタシが好きなのは今も昔もこれからも、ずっと阿伏兎さんだけですよ?』
「なっ……。ば、馬鹿な事言う暇があんならちったぁ手伝え。」

あどけない表情のにあまりにも真っ直ぐな目でそう言われ、
俺は恥ずかしくてとうとう体ごと机に向き直ってしまった。
それを不思議そうに見ていただったが、
俺がまた書類を書き始めたと知ると俺の服をグイグイと引っぱり、

『いいですけど、何で団長に盗られたと思ったのかだけ教えて下さいよ。』

と、話の続きを催促してきた。

「うるせーよ、さっさと手ぇ動かせ。」
『ねぇねぇ、阿伏兎さん!』
「うっせーな!言えるわけねーだろ……。」




ちょっとカマかけてみただけなんて、
 々しい理由

(あぁ、疲れた。阿伏兎さん、癒やして下さい) (はぁ?ちょっ、バカお前……!!抱きついてくるな手つきがエロい!!!) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ あぁもうなんでこうも阿伏兎さんは可愛いのかなぁ!! ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2009/02/05 管理人:かほ