「、やっぱり本気アルか？」
「ちゃん可愛いんだし、もう少し上を狙った方がいいって、絶対！」

午前最後の授業である家庭科が終わった昼休み、
同じ班であった僕と神楽ちゃんとちゃんは
自分が調理実習で作ったクッキーを片手に廊下を歩いていた。

『何よ2人して！十分カッコいいじゃん！』
「いやいやいやいや……。」

僕はちゃんの答えを首と手を横に振りつつ否定する。
先ほどから僕と神楽ちゃんがちゃんを必死に止めているのだが、
ちゃんは全く僕達の話を聞かず、目的の場所へと歩みを進めていた。

「、よく考えるネ。アレはおっさんアルよ？40過ぎの。」
『そうだけど、カッコいいじゃん！どこがカッコいいかって言うと……
　あぁもぅ全てがカッコいいッ!!!!』

そう言うと、ちゃんは首を激しく振りながら手で顔を隠し、
ズバッとその場に座り込んでしまった。
そして、『あぁカッコいい』とか『悶え死ぬー!!!!』とか、
僕達には到底理解できないことを叫んでいた。

「ちゃん……。」
「……キモいアル。」

そのちゃんを、僕と神楽ちゃんは可哀想なものを見るような目で見た。
……いや、ある意味かわいそうなんだけど。

僕と神楽ちゃんがその可哀想なちゃんを引きつった顔で見ていると、
ちゃんがしゃがんでいる場所の前にある教室の扉がガララッと開いた。
僕達はそこからのっそりと出てきた人物に驚きつつも、
苦笑いで『こんにちは』と挨拶し、目線をまたちゃんに戻した。

教室から出て来た人物は僕達に『おぅ』と短く言って、
目線を教室の前で悶えているちゃんに移すと深いため息をつき、
そしていつものやる気のなさそうな表情と声でちゃんに話しかける。

「おい、廊下で何叫んでやがる。近所迷惑だ。今すぐ窓から飛び降りろ。」
『はぅ！？その声は……!!!!』

今の今まで悶えていたちゃんがハッと我に返り、
話しかけてきた人物の方に首が取れるんじゃないかと思うくらい激しく振り向いた。

『あ、阿伏兎先生!!!!』

ちゃんが顔を真っ赤にしてその人物の名前を呼ぶ。
いつの間にか僕達は目的地であった化学実験室に着いていたらしく、
化学教師である阿伏兎先生がそこから面倒くさそうに廊下を見ていた。

『あ、あの、あぶ……!!!』
「じゃ、飛び降りとけよ、。」

ちゃんがモジモジしながら後ろに隠してあるクッキーを渡そうと話しかけるが、
阿伏兎先生はその前に相当酷いことを言って教室の中へと戻って行ってしまった。
ピシャン、という軽い音が、虚しく廊下に響き渡る。

「ちゃん……。」
「……相当キモいアル。」

僕と神楽ちゃんは固まってしまったちゃんを慰めようと
そう声をかけるが(いや、むしろ神楽ちゃんは追い討ちかけてない？)、
ちゃんはズバッと立ち上がって

『阿伏兎せんせー！用があるので失礼します！』

と、返事を聞かぬまま勝手に化学実験室に入って行ってしまった。

「……いや、立ち直り早くね？」
「マジキモいアル。」

神楽ちゃんの言葉(愛のムチだと思っておこう、うん)は放っておいて、
僕と神楽ちゃんもちゃんを後を追って化学実験室に入った。

『あ、あの……阿伏兎せん……。』
「ん？」

阿伏兎先生は昼食を食べていたらしく、
口にご飯(エビのしっぽが出てるからエビフライ？)を頬張りながら、
ちゃんの声に振り返ってくれた。

『ぎゃああぁぁぁー!!!!!』

ブパアッ！とちゃんの鼻から真っ赤な液体が噴射された。
大量の鼻血と共にちゃんは地面に片膝を付き、
手で鼻を押さえつつ『かぁいいよぅかぁいいよぅ……!!!!』と連呼している。
僕と神楽ちゃんは正直ドン引き。
阿伏兎先生もいきなりの事に顔がこわばっていた。

『はぅぅぅ……!!!おっ、持ち帰りされてぇぇぇー!!!!!』
「、落ち着くネ！！」
「そうだよちゃん！ほら、渡すものがあるでしょ？」
『そそそ、そうだった……!!!!!』

ちゃんは鼻血を自力で止め(コレ凄くね？)、
血をスカートで拭って後ろに隠していたクッキーを先生に手渡した。

『すす、すみませんお見苦しいところを……。
　あの、コレ、調理実習で作ったんですけど……。』
「俺に？」
『はっ、はい！』
「いつも悪いな。ありがとう。」

阿伏兎先生はちゃんの手からクッキーの袋を受け取り、
お礼を言いつつちゃんに向かってにっこりと微笑んだ。

『ぎゃあああぁぁぁその笑顔反則ぅぅ!!!!!』
「��!!!？」

それが第2の血の海を作る引き金だとも知らずに……。




私は貴方に首ったけ


(ん、んまいな(にっこり))
(ぎゃあぁぁー!!!!!!(鼻血))
(あぁもぅ阿伏兎先生止めてくださいよォォ!!!!)
(わ、悪い……)

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あるお方のリクエスト。ギャグになりきれているだろうか……？


※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。

2009/03/08　管理人：かほ