『ひょっとこどっこーい。』 「……は?」 俺が団長の服を縫っているとき、一緒に縫い物をしていたが 急に意味の分からないことを口走り、俺は間抜けな声を出す。 聞きなれたような、初めて聞いたような、そんな言葉に自然と眉間にしわが寄る。 すると、それに気づいたが言葉の解説(?)をし始めた。 『いや、いつも阿伏兎さんが言ってるから。』 「それを言うならすっとこどっこいだろ?」 『えへへ、思いついたんで♪』 舌こそ出していないものの、 はお決まりの『エヘッ♪』というポーズをして、 そして何事も無かったかのようにまた縫い物をし始めた。 長年一緒に居るが、まだの切り替えの早さについていけない俺は、 『はぁ……』と深いため息をついてゆっくりとに注意する。 「あのなぁ、思いついた事をポンポン口に出すな。」 俺が言うと、は手を止め、そして真顔でこう言い放った。 『じゃあ阿伏兎さん大好き。』 「じゃあって何だよ。しかもいきなり反抗するとはイイ度胸じゃねーかコノヤロー。」 『だって、思いついた事が吉と出るか凶と出るか分からないのに、 そのまま胸にしまっておくなんてもったいないでしょ?』 冗談でもないらしく、キョトンとした顔で俺にそう言い、 『だからアタシは思いついたらその時に声に出すの!』 と、笑顔で付け足した。 確かには直情型だが、あながち間違ったことは言っていない。 運がいいのか悪いのか、の発言で上手く行った事が山ほどある。 だが、それとこれとは話が別だ。 「だがなぁ……。」 俺がまた眉間にしわを寄せて悩んでいると、 追い討ちをかけるようにが『ね?』ととびっきりの笑顔で促してきた。 流石の俺もこれには勝てず、気恥ずかしさから顔を逸らして 今日で何度目か分からないため息をついた。 「あー、はいはい。分かった分かった。いいからさっさと手ぇ動かせ。」 『あ、ちょっとぉ!さっきのアタシの言葉はどっちなんですかっ?吉?凶?』 「吉だよバーカ。ほら、早く縫え、すっとこどっこい。」 『えへへ。はぁーい!!』声に出さなきゃ伝わらないから
(阿伏兎さんも言ってくれなきゃ、アタシ分かんないですよ?) (誰が言うか、すっとこどっこい) (……阿伏兎さんってツンデレ?) (あ、アホかァ!!) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 何なんだコイツラ……!!!ママー!!!砂糖袋持って来てー!? ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2009/03/08 管理人:かほ