それは
とても苦しくて
とても悔しくて
思い出したくもない、忌々しい過去
でも
それは嬉しくて
それは愛しくて
今の私たちを創った、懐かしい過去
【I'm in need of You.】
『阿伏兎さーん!』
いつもの明るい声が、俺の姿を見つけるといつものように駆け寄って来た。
「か。どうした?」
俺はその声に振り向き、ガラにもなく穏やかな声で話しかける。
それには嬉しそうな笑顔で『あのですね、』と答え始めた。
『云業さんが今すぐに元老の所まで行ってくれって。
何でも、団長がまた何かしでかしたみたいですよ?』
「まぁたあの人は何をしでかしてくれたんだ……全く。」
俺はこの師団に入ってから何度目か分からない大きなため息をついた。
それを見ては『頑張ってくださいね』と苦笑している。
云業も云業だ、自分で行けばいいのに……。
まぁ、夜兎ってもんは人付き合いがヘタで口下手なので仕方がないが、
それでも厄介事が全部俺に回ってくるのは勘弁してほしいもんだ。
「じゃあ、元老の機嫌が悪化しないうちに、行ってくるとしますかね。」
『あ、アタシも一緒に行きます!』
「あぁ?一人で大丈夫だっつーの。」
『いえ、アタシも元老に呼ばれてるんで、一緒に行きます♪』
そう言うとは俺の返事も聞かぬまま
トコトコと元老の部屋へと歩いて行ってしまった。
「全く……問題児は一人じゃねぇってな。」
俺はやれやれ、と一人呟いて、の後を追った。
案の定、今回俺が呼ばれた理由は団長だった。
師団の奴らと行った戦場で、あろう事か依頼主の軍を皆殺しにし、
戦には勝ったものの、依頼主がカンカンに怒っているんだとか。
とりあえずお決まりの『すみませんねぇ』という言葉で相手の出方を見る。
これで済むこともあれば、罰を言い渡されるときもある。
もちろん、その罰を受けるのは俺たち第七師団の部下たちだが。
しかし、その日は運が良かったのかそれとも元老の機嫌が良かったのか、
お咎めなしで説教だけで許してくれるらしかった。
「。お前はここに残りなさい。」
俺が部屋を出て行こうとしたとき、が元老に呼び止められた。
そう言えば、呼ばれていたと言っていたな。
俺は『外で待ってる』とに言い、部屋の外で待っていることにした。
今思えば、その時のは寂しそうな顔をしていたかもしれない。
「。この間の話だが、決心はついたのであろうな?」
『…………あの、それは……。』
「お前の返答が第七師団に影響を及ぼすことを忘れるな。」
『……ッ。』
「さて、聞こう。お前の返答を……。」
全てが動き出した瞬間
(それは、切なく甘い物語)
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遂に登場しました阿伏兎連載ー!!
神威連載とは違い切ない系ですが、エンディングまで頑張ります!
※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。
2009/03/30 管理人:かほ