しょうせつ

思い出すのはお前のことばかり 考えるのはお前のあの涙 悔やまれるのは自分の非力さ 取り戻したいのはお前のその笑顔

 

【I'm in need of You.】

「ぎゃああああ!!」 「ぐあぁっ……!!!!!」 この巨大な船に侵入してからどれくらいの時間が経っただろうか。 自分が殺した人数も、きっと既に2桁では言い表せなくなっているのだろう。 「……ッ、流石はお偉い様お抱えの暗殺部隊だ……!」 俺は先ほど負傷した左腕を抑えつつ、右手の傘で敵をなぎ払う。 多分、たちはこの船の一番上に居るのだろうが、 俺はまだ甲板にすら出られていない。 「一筋縄ではいかねぇってな。」 俺は肩で息をしながらそう言った。 きっとを狙っていたお偉いさんは、 の想い人が俺であることを知っていたんだろう。 でなけりゃ、自分から嫁ぐと言い出した女1人を迎えに来るのに こんなに大勢の暗殺部隊員を連れてくるわけがない。 「ったく……。だから権力者ってのはいけ好かねぇんだ。」 俺はため息を吐きながら傘で敵を倒していく。 時々死角から飛び出てくる敵には傘で対応しきれないので 自慢の蹴りをお見舞いし、また傘で敵をなぎ倒す。 さっきからこの作業の繰り返しだ。 「それにしても巨大な船だ……いったいどこまで続いてんだ、この廊下は。」 俺はボヤきながら単調な作業を繰り返す。 何十分も前だけを見て歩いているのに甲板にさえ出れないどころか、 お偉い様お抱えの暗殺部隊とは言え、たかが人間にこのザマだ。 殺したら殺した分、自分にも傷が増えていく。 気を抜けば確実に殺される。瞬きさえろくに出来ない。 宇宙最強の戦闘部族・夜兎族が聞いて呆れる。 流石にこの大人数対1人はキツいなと、老いた体を呪った。 「だが、引き下がるわけにも負けるわけにもいかねぇんだ。」 俺はふっと笑って、やっと辿り着いた甲板への扉を蹴りとばした。 「俺から奪ったモン、きっちり返してもらうぜ。」 1000人、だろうか。 倒しても倒してもゴキブリのようにウジャウジャと湧いてくる敵を目の前に、 俺は傘を肩に担ぎ、にやりと笑いながら全員を睨みつけた。 「丁度いい。そろそろ俺もバカやらかしたくなってきたところだ。」 あれは何時の事だっただろうか。 呆れながらが団長に言った言葉があったなぁ。 俺は光り輝く星を眺めながら、目を瞑り深く息を吸い込んだ。 「あぁ……そうだ。自分の気持ちに正直に生きてんのが羨ましいんだったなぁ。」 目を瞑っていても分かる。 敵が勢いよく俺の方へ走ってきている。 コイツ等は本当に暗殺部隊なのだろうか。 いくらなんでも気配の消し方が下手糞すぎる。 しかも、真正面から突っ込んで来るときたもんだ。 「俺も団長が羨ましかったんだぁ…………本能に忠実でさ。」 そっと半目ほど目蓋を持ち上げれば、瞬く星が一層輝いていた。 「こういう時くらい、オジさんだって少年に立ち戻っちゃっていいよなぁ?」 言い終わり、俺はふっ、と1人で笑った。 そして、即座に傘を構えて襲い掛かる敵に反撃する。 俺の動きと共に、大勢の敵の体が空中に舞い上がった。 「本気になったオジさんをナメるなよ。せいぜいあの世で後悔しな。」 飛び散った肉片を全身に浴びながら、 俺はまだ残っているたくさんの障害物を睨みつける。 流石にこれには怯んだのか、全員が殺気を放ちながらも一歩後ずさった。 そんな事はお構いなしで、今度は俺から攻撃をお見舞いしてやる。 「この俺を……本気にさせた事をな。」 次は30、下半身と上半身が別れを告げた肢体が宙を舞った。

本能に従う

(大人気ないとか言うんじゃねーよ、俺だってまだ現役だ) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 阿伏兎さんがカッコいい!……ように書けてるといいのになorz ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2009/05/10 管理人:かほ