しょうせつ

を時々、殺したくなる時がある。

は相当強い。あの団長と互角に渡り合った程だ。
だから戦ってみたいと思うのは、
俺が夜兎である限り仕方のない事なのだろうが、
それでも殺したくないと苦しむのは、
俺がに心底惚れているからなんだろう。

戦いたい衝動と、守りたい愛情の二律背反。

常に俺に襲いかかるこの感情が、
いつぶっ飛んでしまうか分からないのが怖い。
俺が夜兎なんて物騒なもんじゃなかったら、
とまともな恋愛をしていたのだろうか。
しかし、夜兎じゃない俺がに出会うことは、
果たして実現したのだろうか?

の華奢な背中を見つつ、
俺は何度目か分からない考えを張り巡らせた。
夜兎の俺が勝ってしまったら、
俺は迷わずお前を殺すだろう。
そしてその後、身が千切れたような喪失感に襲われ、
俺は酷く後悔するのだろう。

『阿伏兎さん。』

俺の殺気に気付いたのか、はたまた単に声をかけただけなのか、
が背中を向けたまま俺の名を呼んだ。

「……何だ?」

俺は出来るだけ素っ気なく返事をする。
全ての感情を押さえ込まないと、今にも襲いかかってしまいそうな気がした。

『大好きですっ!』

とびっきりの笑顔と共に、振り向いたがそう言った。

何なんだ、コイツは。

「……アホか。」

俺の中の殺人衝動が一気に消え去った。
ああ、いつもこうだ。
俺が危うくなったら、いつもは俺に大好きだと言う。
そのせいで夜兎の俺が実家に帰っちまうんだ。

は相変わらず笑顔で俺の方を見ている。
そして俺に全く殺気がなくなると、
楽しそうに俺の腕に抱きついてその小さな身を擦り寄せてくる。

ああ、全く、
コイツは…………。




った兎の精神安定剤

(俺も大好きだとその身を引き寄せてやるのは) (がえへへと笑いながら俺から離れた数秒後) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ バリバリ夜兎の狂った阿伏兎さんも好き(*´∀`*) ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2009/06/15 管理人:かほ