しょうせつ

こいつは俺と居る時に、くだらない話しかしない。
クラスであったこと、授業であったこと、友達と話したこと、誰かが失敗したこと。
本当に、友達と話すような内容しか話さない。

まぁ、それをただ聞いているのも楽しいが、それでもこう、
心の奥底ではもう少しカップルらしい話をしてもいいんじゃないかと思っている。
いや、それが具体的に何かと問われれば皆目見当もつかないのだが。

『先生、お菓子好きですか?』
「……いや、甘いのはあんまりだな。」

今日も昼休みの屋上で一緒に昼食をとっていると、
がいきなりお菓子の話をし始めた。
隣のクラスの服部だか全蔵だか知らないが、
そいつが激辛せんべいを食べて痔を悪化させたそうだ。

『それでね、さっちゃんがとどめにロウソクを突き刺して面白かったんですよー!
 あははは!思い出して笑えてきた!』

の話を毎日聞いているので、こいつの友達の名前は全部覚えた。
クラスを受け持っていない生徒も大体分かる。
こいつは意外と顔が広く誰とでも仲が良いのでその数は膨大だ。
そいつの性格や特徴だって、の話を聞いていて自然と覚えてしまった。

「猿飛はドMじゃなかったのか?」
『それがね、銀ちゃん以外にはSになれるらしいんですよ。』
「なんだそりゃ。」

が食べ終わった弁当箱を片付けながら
『そんなに銀ちゃんいいかなぁー?』と言っている。

『まぁ、阿伏兎先生にちょっと似てるかも。やる気ないところとか。』
「おいおい、俺ぁあいつよりは熱血だぜ?」
『えぇー?それはないですよ〜!』

ケラケラと笑うがあまりにも可愛かったので、
俺の頭に何かしてやろうという考えがよぎった。
いや、別にやましい事じゃない。
俺もそこまで欲求不満なわけではないし、何よりに手を出さないのは
を大切にしたいという俺の勝手なポリシーだ。

しかしここは誰も居ない屋上だ。
ちょっとくらい教師が生徒に抱きついてもいいんじゃないだろうか。
そんなことを考えて、俺は自分の弁当箱を置いてを見つめたが、
運悪くチャイムが鳴り響いたのでささやかな幸せ計画は未遂に終わった。

『あっ、次の授業、噂の銀ちゃんだ。』

はそう言って軽やかにパッと立ち上がると、

『今日は神楽ちゃんたちと遊ぶ約束してるんで、さよならですね。』

とにっこりと笑って言った。

「あぁ。あんまり遅くなるなよ?」
『はい!』

そして、2人で階段を降り、俺は化学実験室に、は自分の教室へと向かった。


続く

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ほのぼの先生と生徒。萌える!!


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2009/09/02 管理人:かほ