何とかしてあげて
可哀相だから助けてあげましょう
この生き残り社会の春雨で
そんなことを言うのはお前くらいだと思ったもんだ
“情けは人の為にならず”
お前の情けが巡り巡って
今度は俺にやって来たらしい
【I'm in need of You.】
「なぁ、この船ちとデカすぎやしないか?」
「コレくらいが丁度いいんだよ。文句あるの?」
「いや……ねぇですけど。」
団長が用意した(たぶん無断で持ち出した)船は、
3人乗りにしてはやけに大きな船だった。
春雨には用途に合わせて使えるよう、大小様々な船が積んである。
丁度いい大きさの船が他にもあっただろうに……。
「さぁ、阿伏兎、云業、行くよ。」
「何でアンタがそんなにやる気満々なんだよ……。」
「あっちの暗殺部隊と手合わせが出来るって、張り切ってるんだ。」
あぁ……そういえばそうだった。
団長がずっと興味を持っていた暗殺部隊とついにご対面だからな。
これで団長に貸しを作らなくて済みそうだ。本当に良かった。
俺はそんな事を考えながら
さっさと前を歩いていってしまう団長の後ろについて行った。
「ま、待ってくれ、阿伏兎さん!!」
急にそんな声が俺を呼び止めた。
俺たちが後ろを振り返ると、そこには第七師団の団員や、
第五師団、第二師団、その他多くの師団の団員が立っていた。
その数ざっと数百人。
俺と云業は状況を理解出来ず、顔を見合わせた。
「お話は神威団長様から聞きました。」
一人の団員が一歩前へ出てきて言った。
俺はすかさず団長を睨みつける。
すると睨まれた団長は相変わらずの笑顔で俺を見つめ返す。
「ここに居る奴等はみんな
アンタやちゃんに世話になった奴等ばっかだ。」
「アンタ達の為に死ぬ覚悟がある奴だけ集まった。」
「俺たちも一緒に連れて行って下さい。」
あちらこちらから好き勝手な声が聞こえる。
よく見ると、まぁ確かにほとんどの奴が顔見知りだ。
団長の餌食になりそうな所を助けてやった奴。
任務の失敗を揉み消してやった奴。
書類整理を手伝ってやった奴。
確かに貸しがあるといえばある。
だが、今回の話は貸しを返してもらうには少々荷が勝ちすぎている。
「あのなぁ、」
俺が申し出を断ろうとした時、後ろから団長の信じられない言葉が聞こえた。
「阿伏兎って意外と慕われてるんだね。いいよ、ついておいでよ。」
「はぁ!?」
「だ、団長……。」
団長の言葉に野郎共はすっかり出陣気分になってしまった。
言いたいことを言った団長はさっさと船に乗り込んでしまうし、
それに続いて団員共が船に乗り込んでいってしまった。
「あの野郎……最初からこのつもりで……。」
「まぁまぁ、阿伏兎。頼もしいじゃないか。」
俺は云業になだめられ、
全員が乗り終えてしばらくしてから船に乗り込んだ。
自分で蒔いた種、自分を取り巻く蔦
(嬉しいだなんて思わない、感謝の意も示さない)
(ただそこに居る奴等に命を預けるだけだ)
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いよいよ出航だ!
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2009/09/29 管理人:かほ