しょうせつ

暗闇を照らしてくれる光を見つけて 自分から扉を閉ざしてしまった 誰が予想できただろう その扉をこじ開けてくれる人が現れるなんて

 

【I'm in need of You.】

「明日にはドレスを頼んだ星に到着できるらしい。  そして、一週間後にはオーロラで有名な星に着く。  そこで盛大に式を挙げよう。」 『…………。』 「どうしたね?確か嬢はオーロラが好きだと聞いたが?」 『……えぇ、大好きです。』 私はまるで人形のように無感情な返事をした。 確かに私はオーロラが大好きだ。 でもそれは、阿伏兎さんと一緒に見たオーロラの話。 ある星の敵対種族を第七師団だけで滅ぼして来いなんて とんでもない任務に駆り出され、皆でボロボロになって戦ったあの日。 星一個潰すんだから相当な時間がかかる。 勿論それは第七師団であろうと同じだ。 団長や阿伏兎さんや云業さんや私が本気を出しても、 全滅までに一週間も戦いっぱなしだった。 そして一週間後、団長の『つまんないの』という声と共に戦いは終わった。 やっと終わったと思って、私はその場に大の字に倒れこんだ。 周りにいた団員も一緒になってブッ倒れていく。 そんな中、阿伏兎さんも私の隣で大きなため息を吐きながら倒れこんだ。 やっと終わったな、そうですね、なんて、形式的な会話をしていたら、 目の前が急に真っ暗になって、そして、空一面が光輝いた。 オーロラ彗星と呼ばれる宇宙の名物である彗星が、 私たちの目の前をゆっくりと通り過ぎていくところだった。 いつもは綺麗な物に無関心な団員たちも、今回は感嘆していた。 私も、自然と笑顔になる。流れる光の筋がとても綺麗だった。 そして、隣に居る阿伏兎さんに綺麗ですねと同意を求めようとしたら、 阿伏兎さんは彗星ではなく私の方を見ていて、すごく驚いた。 そして、阿伏兎さんは疲れた顔で私に微笑みかけながら、 『負けちゃいねぇぜ』とだけ言って、私の頬に手をかけた。 それ以来、オーロラを見るとこの出来事を思い出して、 どうしようもなく恥ずかしくなってしまうのだ。 私はつい昨日のことのように思い出し、そして、自嘲した。 涙は出ないけれど、やっぱり胸がチクンと痛んだ。 もう、想い出なんだと、自分に言い聞かせた。 そんな時、突然船内にエマージェンシーアラームがけたたましく鳴り響いた。 「何事だ!?」 ジジイが叫ぶと、暗殺部隊の1人がどこからか現れ、 いつもとは明らかに違う、焦ったような口調でこう言った。 「報告します。春雨のものと思われる船がこちらに近づいています。」 「何!?」 「それも、かなりの大きさです。」 私は息を呑んだ。 私の決心を揺るがす言葉が頭にガンガン鳴り響く。 春雨の船が、こっちに……? きっと阿伏兎さんだ。 どうして来てしまったんですか、阿伏兎さん。 今度こそ助けてくれるんじゃないか。 もう一度酷い言葉を言えば、諦めてくれるんだろうか。 傷つけずに春雨に帰す方法は。 それよりもまずあの人の命を保障してもらわなければ。 私はここから抜け出せるかもしれない。 このジジイの顔をもう見なくていいかも。 私のせいで阿伏兎さんが殺されてしまったらどうしよう。 色んな感情が頭を一気に駆け巡り、頭の中が真っ白になった。 「嬢をお連れしろ。」 「はっ。」 ジジイの声で現実に戻ってきた私は、 部屋を出て行くジジイに続いて外に連れ出された。 甲板ではなく2階のバルコニーに出る廊下を渡り、外に出る。 すると、宇宙の向こうから大きな船がこちらに近づいてきているのが見えた。 「なっ……!?コレは一体何事だ!?」 ジジイの怒ったような驚いたような叫び声が宇宙の闇に吸い込まれた。 それに呼応するかのように団員の動きが慌しくなった。 私は一瞬にして暗殺部隊に取り囲まれ、 残りの部隊員はジジイと動力室、そして船の周りを守った。 昨日の阿伏兎さんの襲撃で団員の数は減っていたが、 それでもこの船を埋め尽くすほどの人間が居た。 「いいか!命を懸けてこの船を守るのだ!!  私と嬢にはネズミ一匹近づけるな!!」 甲板を2階のバルコニーから見下ろし、ジジイが吼えた。 その間にも船は着実に近づいてくる。 あれにはきっと、阿伏兎さんが乗っているんだろう。 でも、それにしては船が大きすぎやしないか……? 団長と云業さんが乗っているんだとしても、 もう一回り小さな船が春雨には積んであるはずなのに。 どんどん近づいてくる春雨の船を目の前に、この船は緊張に包まれていた。 そして、1つの人影が春雨の船に浮かび上がる。 『だ、団長!?』 それは団長の姿だった。 よく見ると、その後ろに阿伏兎さんと云業さん、 そして何故か梅蘭さんの姿もあって、 甲板にはなんと顔見知りの春雨団員が何百人も立っていた。 『何で……。』 私は全く状況が理解出来ず、それはジジイもこっちの団員も同じようだった。 私たちが見つめる中、団長が徐に組んでいた手を下ろした。 「返してもらうよ、俺たちのお姫様。」

を懸けた戦争

(世界中を敵に回そうとも、求めるものはただ一つ) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ よろしい、ならば戦争だ。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2009/10/11 管理人:かほ