『阿伏兎さん!お誕生日おめでとうございます!』 そう言ってが手渡してきたのは、 薄いスカイブルーの包みを赤い大きなリボンで閉じた小包だった。 『さっき梅蘭さんに聞いたんです。阿伏兎さん、今日が誕生日だって。』 まるで自分の誕生日が来て喜んでいるかのように話す。 そんなから受けとった小包みは、ほんのりと暖かかった。 俺が呆気に取られて言葉も発せず立ち尽くしていると、 はちょっと照れくさそうに俯いた。 『いきなりだったんで、大したものは作れなかったんですけど……。』 「……開けていいか?」 『えっ?あ、はい!どうぞどうぞ!!』 俺が尋ねると、は少々オーバーに驚きそう言った。 俺はゆっくりと赤いリボンを解いて包みを開ける。 すると中から顔を出したのは、星やら猫やら様々な形をしたクッキーだった。 俺が甘いものを苦手なことを知っているからか、クッキーの色は緑と黒。 きっと抹茶と黒ゴマあたりだろう。 「これ、お前が作ったのか?」 『はい!阿伏兎さん甘いの苦手だから、味は抹茶と黒ゴマです♪』 俺の問いにとびっきりの笑顔で答える。 ここで初めて俺は胸の辺りがジーンとなった。 が俺のために菓子類を作ってくれるのは珍しいことではないが、 自分さえ忘れていた誕生日にこうしてプレゼントをくれるというのは相当嬉しいものだ。 俺は少しだけ微笑み、の頭を撫でながら礼を言った。 「わざわざ悪かったな。」 『いっ、いえ!あのっ……。』 突然頭を撫でられ、は顔を真っ赤にしながら口をパクパクさせた。 何だコイツ、相当面白ぇぞ。 の困る顔があまりにも可愛くて、俺は頭を撫で続ける。 『あのっ、あぶ、阿伏兎さん!』 「ん?」 『たっ、食べさせてあげましょうか!?い、一個だけ!』 俺の撫で撫で攻撃に負けじとそう言ったは、 俺の返事も聞かずに俺の手の包みからクッキーを一枚手に取り、 それを俺の口の前に『はい!』と差し出した。 俺はかなり照れくさかったが、まぁ折角の誕生日だし、 の愛情をありがたく頂戴することにした。 『お、おいしいですか?』 「……ん、うまい。」 『よっ、良かったぁ!』 俺はまたしてもの極上スマイルにノックアウトされてしまった。 顔がにやけるのを隠すため、とっさに顔を逸らす。 そんな俺の行動には気づかず、は笑顔のまま言葉を続けた。 『来年も、その先も、ずーっとお祝いしてあげますからね!』 おいおい、勘弁してくれよ。 俺の心臓を破裂させる気かお前は。Happy Birthday My Darling!
(来年はお前がほしい、なんて言ったら慌てるだろうなぁ……) (え?何か言いました?) (ククク……いいや、何も) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 当日まで忘れてたけど(ぁ)、お誕生日おめでとう! ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2010/02/10 管理人:かほ