今日は女の子の祭り、バレンタインデー。 この宇宙でもそれは変わらず、私は今、調理場で戦闘中です!【阿伏兎とのバレンタインデー】
「毎年毎年よくやるわねぇ〜。師団員全員に義理チョコ配るなんて。」 『第五師団の人は春雨の皆にあげてますよ?』 「あそこは女ばっかりじゃないの。一人10個も作ればお釣りがくるわよ。 それに、第七師団の連中の消費量は半端じゃないでしょうが。」 『……それもそうですね。』 私は梅蘭さんと一緒にさっき溶かしたチョコを型に流し込みながら ぐだぐだとそんなことを話していた。 私は春雨に来てから毎年この日に第七師団の皆にチョコを作っている。 でも、第七師団は夜兎が多くてチョコの消費量が半端じゃないので 毎年14日の午前中は一人調理場で戦争状態だ。 今年はたまたま梅蘭さんが手伝ってくれることになり、 先日の団長暴走事件で団員の数も減っていたので比較的作業が楽だった。 ……いや、団員の数が減ったのは喜んじゃいけないんだけど。 「それはそうと、ちゃん?」 『はい?』 「勿論あぶちゃんには違うものをあげるんでしょうね?」 大きな球状の型に入ったチョコレートを巨大冷蔵庫に入れながら、 梅蘭さんが不敵に笑ってちょっとからかうように尋ねてきた。 『へ!?はっ、えぇ!?いやっ、ななな、何でですか!?』 「何でって、そんなの決まってるじゃないの。」 声が上ずって上手く喋れない私を見て、梅蘭さんは楽しそうにケラケラと笑った。 私は真っ赤な顔を梅蘭さんから背けるように俯く。 「もしかして、作ってないの?」 『……いっ、一応、作りました……。』 「あら♪何を作ったの?」 『……ガトーショコラです。』 「まぁ!本命チョコに相応しいチョイスねぇ♪」 『で、でも……。』 嬉しそうに話す梅蘭さんとは裏腹に、私の心の中は不安でいっぱいだった。 『阿伏兎さん……甘いもの苦手だし、 一応ビターチョコで作ってみたけど、食べてくれるか分からないし……。』 「食べるに決まってるじゃないの!ちゃんからの本命チョコなんだから♪」 『そ、それに、みんなの前じゃ、照れちゃって、渡せないですよ……。』 私が55個目の特大チョコ玉を冷蔵庫に入れながらボソボソと言えば、 梅蘭さんは一瞬考え込むような仕草をし、元気に「よし!」と言った。 「あたしがその巨大チョコ玉を師団の連中に配ってあげるから、 ちゃんはその間にあぶちゃんにチョコを渡しに行きなさいな!」 『ふえぇ!?そそ、そんな事、悪いですし……!!』 「何言ってるのよ!恋する乙女の味方よ?あたしは!」 『でっ、でも……!!』 「んなことしたらまた団員の数が減っちまうでしょーが。」 いきなり聞こえてきた声に、私はビクッと体を跳ねさせた。 一方、梅蘭さんは声の主に向かって満面の笑みで応える。 「あらまぁ〜♪噂をすればなんとやらってやつねぇ♪」 「梅蘭さん、で遊ばんで下さいよ。」 「だってちゃん可愛いんだもの♪それで?あぶちゃんは何しに来たの?」 私がまだドキドキして阿伏兎さんに背を向けている中、 梅蘭さんの問いに阿伏兎さんがカツッ、と足を止めた音が聞こえた。 「……毎年毎年、が1つだけ渡せねぇチョコがあるもんでね。」 『……ッ!!阿伏兎さん、知ってたんですか!?』 「毎年って……ちゃんアンタ……。」 私が驚いて阿伏兎さんの方にバッと顔を向けると同時に、 後ろから梅蘭さんの呆れた声が聞こえてきた。 実は私、毎年阿伏兎さんには別にチョコレートを作っているものの、 それを渡せた例が一度だってなかったりする。 みんなの前で渡そうにも、恥ずかしくて渡せないし、 第一そんなことしたら団長が何をするか分かったものではない。 別の場所に呼び出そうにも、阿伏兎さんは仕事で忙しいし、 こっそり部屋に置いておこうにも、団長が入り浸っているし……。 そうして結局、毎年自分で食べる羽目になっていたのだった。 「しょーがねーから、今年は自分から貰いに来ようと思いましてね。」 「あらあら♪優しい旦那さんじゃないのっ♪」 梅蘭さんの言葉に、2人で一緒に赤くなった。 『あ、あの……じゃあ……。』 私はすぐさま冷蔵庫の中でスタンバっていたガトーショコラを取り出し、 阿伏兎さんの前に駆けていった。 そして、恥ずかしさで出ない声を振り絞り、 やっと今年、阿伏兎さんに本命チョコを差し出すことに成功したのだ。 『い、いつもいつも、ありがとうございます……。』 「こちらこそ。」 阿伏兎さんは優しく微笑んで私の手から中くらいの箱を受け取り、 もう一方の手で私の頭をよしよしと撫でてくれた。 その手が暖かくて、心地よくて、私はその優しさに身を委ねた。 「来年もこうして貰いに来た方がいいのかな?恥ずかしがり屋のお姫様。」 『はっ、はぃ……あのっ……出来れば……。』 ニヤりと意地悪く笑いながら、からかうようにそう言う阿伏兎さんに、 私は顔を真っ赤にして俯き、小さな声で返事をした。 その様子にまた阿伏兎さんが優しく微笑み、 それを見た梅蘭さんがキャイキャイとはしゃいだのは、言うまでもない。大人な貴方に、精一杯の恋心を
(いいもの見せてもらったわー♪ビデオ回しとけばよかった) (か、勘弁して下さいよ……) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 去年も当日にアップ出来なかったとか、そんなこと言わない!← ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2010/02/15 管理人:かほ