「、クイズだ。 俺の目の前にお前と団長と云業が居たとして、 もし3人とも瀕死なら、俺は誰を助けると思う?」 ある日の休日、いきなり阿伏兎さんが得意げに私にそう尋ねてきた。 いつもの疲れたような顔とは違う、呆れた顔とも違う、 私だけに向けられる少年の悪戯っぽい笑みに、思わず顔を逸らした。 『うっ、云業はともかく、団長が瀕死になることはありえません!』 「かたいこと言うなよ。たかがクイズだろ?もっと柔軟に考えろ。」 私が照れ隠しでそう言うと、阿伏兎さんは予想外の返答に眉をハの字にした。 その表情も私のストライクゾーンを華麗に打ち抜いたので、私は思わず俯いて悶えた。 あぁ、もう。 どうしてこうもカッコいいんだ、この人は。 『も、もしそんな状況になったら…………。』 私はそっと顔を上げながら答える。 『アタシは、自分を一番に助けて欲しいですけど……。』 私が控えめにそう言うと、阿伏兎さんは予想通りの答えにニヤッと笑った。 「残念、ハズレだ。」 『えぇっ!?阿伏兎さん、まさか団長を一番に助ける気ですか!?』 思わぬ阿伏兎さんの答えに、私は慌ててそう尋ねる。 阿伏兎さんはと言うと、私がこんなにも動揺しているというのに顔色1つ変えず、 むしろますます不敵な笑みになった。 「さぁ、どうだろうな。」 『酷い……!阿伏兎さん、アタシより団長の方が大事なんだ!』 「アホか。んなわけねぇだろ。」 『でも、アタシの事助けてくれないじゃないですか!』 私が怒ってそっぽを向きながらそう言えば、 阿伏兎さんはゆっくりと私に近づいて、そして優しく抱きしめてくれた。 「そりゃそうだ。だって、お前には俺が指一本触れさせねぇからな。」 阿伏兎さんがそう言った瞬間、私の顔は真っ赤になった。 あぁ、もう! どうしてこんなにもこの人はカッコいいんだろう! 『…………ズルいです。』 「かたいこと言うなよ。たかがクイズだろ?」 私をちょっと強く抱きしめながら、阿伏兎さんは笑いながらそう言った。 その言葉に、ぬくもりに、私はそっと目を閉じる。 あったかくて、しあわせで、とってもとっても愛おしい。 初めて感じるこの感情が、最初はくすぐったくて仕方がなかったけれど、 今でも十分くすぐったくて、思わずふふ、と笑ってしまう。 「何笑ってんだよ。」 『いえ、別に。……ねぇ、阿伏兎さん?』 「ん?」 私が阿伏兎さんを抱き返しながら言うと、 阿伏兎さんも私の髪に顔を埋めながら返事をする。 『アタシも阿伏兎さんのこと、絶対に助けませんからね。』 「一丁前に生意気言うな。云業にも組み手で勝てねぇくせに。」 『いいじゃないですか!かたいこと言わないで下さいよ。』 「ククク……。はいはい、悪ぅございましたよ。」 また私を子ども扱いして笑いながら言った阿伏兎さんに突然キスしてやれば、 私がそんな行動に出るなんて思ってもいなかった阿伏兎さんは、 さっきまでの余裕の表情を脱ぎ去って、キョトンとした目で私を見た。 『ふふ、ビックリしました?』 「お前……。」 してやられた、と言うように、怒ったような、困ったような顔になった阿伏兎さんに、 私はにっこりと微笑んで言葉をつむいだ。 『ねぇ、阿伏兎さん?』貴方は私が護ります
(愛してるとか、好きとか、そんなんじゃないんです) (私はただ、貴方を失いたくないんです) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ ぬあぁ!阿伏兎さんに護られてぇぇ!← ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2010/03/25 管理人:かほ