しょうせつ

毎年、阿伏兎の誕生日にはがサプライズプレゼントを贈っていた。
本人はこっそり準備しているつもりなんだろうが、阿伏兎にはバレバレだ。
それでもの喜んだ顔を見る為に、阿伏兎は律儀に驚いたリアクションをする。
そんな2人のやり取りを見るのが、春雨の毎年恒例の行事になっていた。
しかし、今年は前日になっても一向にが準備を始めなかったのだ。
春雨の奴等はやっとが隠し事を出来るようになったのだと思っていたのだが、
誕生日当日、第七師団本部で号泣するの姿にその説は崩れ去った。

『阿伏兎さんゴメンなさい……プレゼント間に合いませんでした……。』
「オイオイ、泣くなよそんなことで……。俺は気にしてねぇから。な?」

床に正座をしながら泣くを阿伏兎が必死で慰めている。
そんな2人を遠巻きに見ているウチの団員達の顔は心配そうだった。

「がプレゼントを用意出来ないなんてめずらしいな。
 今年は何をプレゼントする予定だったんだい?」

俺が泣いているにそう尋ねると、は情けない顔でこう答えた。

『アタシです。』
「は?」

その言葉に、団員達と阿伏兎の口があんぐりと開いた。

『阿伏兎さんに大人のアタシをプレゼントしようと思ったんです……。
 それで一ヶ月前からバストアップ体操とかくびれ体操とか、
 色々やってたんですけど、結局アタシの体、全く成長してくれなくて……。』

そこまで言って、はまた泣き出した。
なに下らない事やってるんだと思ったのは俺だけだろうか。
……どうやら俺だけらしい。
団員達の顔は明らかにに同情していた。まるで近所のおばちゃんだ。

「お前……何下らねぇことやってんだよ。」

阿伏兎が呆れ顔でそう言ったので、俺は心底驚いた。
まさか阿伏兎が俺と同じ意見だとは。
そう思ったのも束の間、阿伏兎は乱暴にを抱き寄せながらこう言ってのけた。

「例えボンキュッボンじゃなくても、俺は今のお前が好きなんだ。
 下らねぇことしてんじゃねーよ、バカヤロー。」
『あ、阿伏兎さん……!』

そうだ、忘れてた。コイツ等は根っからのバカップルだったんだっけ。
の嬉しそうな顔がやけに癇に障る。
そして熱い抱擁を交わす阿伏兎とに無性に腹が立った。
挙句の果てには団員達の謎の涙だ。俺の第七師団は大丈夫なんだろうか。

『阿伏兎さん!今年のプレゼントはアタシですよ!』
「じゃあ今夜にでも頂くとするかな。」
『やだっ、阿伏兎さんのエッチ!』

気がつくと、俺は2人の頭を思いっきり叩いていた。

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バカップルに振り回される神威はすんごい可愛いと思いました作文!


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2011/02/10 管理人:かほ