しょうせつ

『晋助お願い、何とかして……。』
「別にてめぇがどうなろうと、俺の知ったこっちゃねぇな。」
『そんなこと言わないでさぁ!お願い!一生のお願い!』
「……もし俺がお前の願いを聞いたとして、お前は俺に何をするんだ?」
『こないだ晋助が欲しいって言ってたリラッ○マの人形あげる!』
「よし、さっさと行くぞ。」





 

【万斉君との奮闘記:前編】

「おい万斉、ちょっと話がある。」 「殿!!いやぁ、相も変わらず麗しいでござるなぁ!」 「オイ、話しかけたの俺なんだけど。」 「でも拙者は笑顔の殿よりも泣いている殿の方が好きでござる。」 「オイてめぇガン無視か。ぶっ殺すぞ。」 「ということで殿、  今日はどのようなプレイで泣かせてほしいでござるか?」 「を泣かせる前にまずてめぇを泣かせてやろーか!!!!!」 こうして、怒った晋助に顔の原型がなくなるまで ボッコボコに殴られた万斉を食堂のテーブルを挟んだ向かい側に座らせ、 私と晋助は隣に並んで大切な話をする環境を整えた。 ……って言うか、自分が助けられたんだとはいえ、 今の万斉の顔、相当可哀想……。 「話ってのは他でもねぇ。  万斉お前、毎日毎日に言い寄って虐めてるらしいな。」 「虐めるなんて人聞きの悪い。愛でているんでござるよ。」 「万斉知ってたか?一方的な愛は立派な嫌がらせになるんだぜ?」 普段はイっちゃってるなんて言われて変人扱いの晋助だけど、 こういう時には鬼兵隊唯一の常識人となるのでとても頼りになる。 武市さんは変態だし、この万斉も変態だし、 また子ちゃんは晋助馬鹿だしで、頼りになる人が他に居ないもんなぁ……。 「お前の異常な愛情表現にが相当迷惑してんだとよ。  そこでからお前に提案があるらしいんだが、  俺の前ではい分かりましたと宣言しろ。」 『晋助、まだ内容も言ってないのにそれは横暴すぎやしませんか?』 「いいんだよ、どうせ否定させる気なんかねぇんだから。」 俺様思考の晋助が万斉に無理な交渉を持ちかけている中、 万斉はというと何かを考え込むような素振りを見せ、 それからジッと私の顔をガン見して、ゆっくりと晋助に視線を戻した。 「一応聞こう。」 「。」 『あのね、別にアタシ、万斉のこと嫌いじゃないの。  むしろ顔も声も結構好みなの。  性格だって、変態じゃなければ問題ないし……。』 「知っているでござる。殿の好みのタイプが拙者だって事くらい。」 『うん、ちょっと黙っててくれる?それで、提案なんだけど……。』 私はここ最近エスカレートしてきた万斉の異常な愛情表現に、 どうにかして対策を立てなければと連日悩みに悩んで、 ついにたどり着いたある捨て身の解決方法を、 言おうか言うまいか迷っていた。 晋助にお願いしてやっとまともに話せる状況を作ってもらったんだし、 ここでちゃんと言わなきゃいけないんだろうけど、 この提案はあまりにも捨て身すぎて、 しかも一種の賭けみたいなところもあり、すぐに言うことが出来なかった。 「オイ、さっさと言えよ。」 『う、うん……。あ、あのね、万斉。』 私は意を決し、まっすぐ万斉の顔を見ながら言葉を紡いだ。 『万斉の彼女になってあげるから、もう変態みたいに迫ってこないで!  アタシを大事に扱って!お姫様みたいに扱って!  そうしたらアタシも、もうちょっと優しくしてあげるから!』 そう、私が日に日にエスカレートしていく 万斉の殿お願いでござる拙者に組み敷かれてくれ”攻撃に対抗するため、 悩みに悩んだ末に打ち出した捨て身の解決方法。 それは、もういっそ万斉の女になり、 その代わりにもうちょっと普通の扱いをしてもらうこと。 今まではアタシが万斉の申し出を全否定してきたから 日に日にその内容がエスカレートしていったんだと思うし、 こっちが妥協すれば、万斉だって変わってくれるはずだ。 ……そう、信じての妥協案。ほらね、賭けでしょ? 「ふむ……殿が拙者に喜んで股を開いてくれると。」 『ちょっと、そういう露骨な表現やめてくれる?  こっちが妥協してんだから、もうちょっと誠実な態度で対応してよ。』 「この俺が証人だ。分かったらさっさと俺の前で忠誠を誓え!」 『いや晋助、ちょっと趣旨変わってる……。』 私が晋助に呆れたようにツッコんでいるその目の前では、 万斉がやけに真剣に私の提案について考え込んでいた。 いやいや、今の提案に答えるのにそこまで悩む必要ある? もしかしてコイツ、私を手に入れるよりも 今までどおり変態らしく迫る方が楽しいとか考えてんじゃないでしょうね。 しばらく沈黙が続いた後、考えをまとめた様子の万斉が顔を上げ、 そして大真面目な顔で私達にこう言ってきた。 「やっぱり駄目でござる。それだけでは拙者、首を縦に振ることは出来ん。」 「何ィ?」 「殿の変態の基準をハッキリさせねば、  拙者どこまで殿に迫っていいか分からないでござる。」 予想外のNOサインに晋助が怒ったような声を出したけど、 それに物怖じせず万斉は予想外の言葉を返してきた。 これには私もかなり驚いて、間抜けな声を出してしまう。 『はぇ?いやぁ……そんなもん、一般的な基準でいいよ。』 「その基準が分からんのだ。今までのアプローチだって、  拙者の中では変態の域に達していなかったでござる。」 「嘘だろお前……にパンツくれとか言ってたじゃねぇか。」 「拙者の中の変態の基準というのはもっとこう、  縄で縛り付けて全身を舐めまくったり、座薬を使ってスカ――。」 『あー!!!!はいはい分かった!!!!  万斉がド変態なのはよーく分かった!!  じゃあ2人で基準決めよう!晋助がその証人ね!』 「万斉、今のは流石の俺でも引いたぜ……。」 万斉の危ない発言を掻き消すように大声を出した私は、 そのまま無理やり話を進めることにした。

ド変態は厄介です

(はぁ……ビックリした) (お前本当にこんな奴と付き合うのかよ……) (…………ちょっと後悔してきた) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ ごめん、ちょっと最低すぎたって自覚してる。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2010/02/28 管理人:かほ