万斉の言葉にかなり不安になってきた私は、 念のために物的証拠を残しておこうと部屋まで紙とペンを取りに行き、 一番上に“変態の基準”と大きく書き記して、 私達の会議を記録することにした。【万斉君との奮闘記:後編】
『じゃあまず無理やりアタシを押し倒そうとしたりするの禁止ね! あとキスするのもアタシの了解とってね!』 「殿をお姫様扱いすればいいでござるか?」 『そう!そういうこと!』 「ヤる時の道具はどこまで使用可能なんでござるか?」 『Σんん!?で、出来れば何も使って欲しくないかな……。』 「じゃあ事前に了解を得るでござる。」 『……そうね、そうしといてあげるわ……。』 会議は意外とスムーズ(?)に進み、 時々晋助が万斉の変態発言にツッコミを入れたりしながらも 大まかな基準値を定めることに成功した。 今まで私が嫌だと思っていたことを全部却下することが出来、 しかもお姫様扱いしてもらえるという特典までついてきた。 まぁ万斉は元々好みのタイプだったし、 付き合うのには何の抵抗もないから一石二鳥ね♪ 会議の最後に晋助が万斉に最終確認を取り、 この紙の基準を破ったらお通ちゃんの曲を全員の前で熱唱するという、 見てる方もダメージ喰らいそうな罰ゲームをつけて終了した。 「でもお前なら恥ずかしげもなく歌いそうだな……。」 「晋助……お主拙者をそんな目で見ていたでござるか……。」 「よし、じゃあ追加の罰ゲームだ。 全員の前で熱唱した後、俺がお前の前でを押し倒す。」 『えぇぇ!?ちょまっ、何でアタシまで連帯責任!? それアタシもダメージ喰らうじゃん!アタシも罰ゲームじゃん!』 「んだとテメェ。俺に抱かれるのが罰ゲームだと?喧嘩売ってんのか。」 『いや売ってないけど……あぁもうめんどくさいこの自意識過剰!!!!』 私の当然の反論に何故か気分を害した様子の晋助。 何なのその“俺に抱かれるのは女の幸せ”みたいな思考回路!! 誰がお前となんか一夜を共にするかってーの! それならまだ万斉に抱かれた方が万倍マシじゃー! 「殿!拙者、命がけで約束を守るでござる!! 晋助なんぞに殿の股、開かせてなるものか!!」 『ん、あぁ、うん……もうちょっと言い方考えてほしかったかな……。』 さっきの会議で言葉のセクハラも禁止って言っとけば良かったと、 大真面目な顔の万斉を見て私は心の底から思った。 「じゃあこれで俺は必要ねーな。」 『うん、ありがと晋助。』 「この紙は一応俺が保管しといてやる。 俺達だって、これ以上万斉に見苦しい真似されても困るからな。」 『あはは……そうだよね。』 こうして晋助は自分の部屋に戻っていった。 はぁ……これでやっと万斉の変態セクハラ行為から開放されるんだ! 私は嬉しさのあまり満面の笑みになり、 安堵のため息を盛大に吐き出しながらその場で大きく伸びをした。 「…………ほう、Cカップでござるか。」 『え?えっ!?ヤだちょっ、何まじまじと観察してんのよッ!!!!』 「言われてみれば、こうして殿とゆっくり話す機会など、 今まで持っていなかったでござるな……。」 万斉は真面目な顔でそう言って、おもむろに席を立ったかと思うと、 そのままゆっくりと私に近寄ってきて、隣に腰掛けた。 いきなりの行動に、私は反射的に万斉と距離を取る。 『え、ちょ、何……?』 「何故逃げる。殿はもう拙者の女でござろう?」 『そ、そうだけど……。』 「ならば、もっと近くに来るでござる。」 『ひゃっ!?ちょっ、待っ……!!』 急に万斉に腕をつかまれ、思わず腕を引っ込めようとしたけど、 当然私が万斉に力で敵うはずがなく、 そのままスッポリと万斉の腕の中に引き寄せられてしまった。 『ちょっ、ここ食堂……!!』 「安心するでござる。拙者たちの他には誰も居らん。」 『でも、もし誰か入ってきたら……。』 予想外の万斉の行動にドキドキしてしまっている自分が居た。 だから言ったじゃん!万斉の顔も声もタイプだって! 今まで変態に隠れて見えなかった万斉のカッコいい所が 今一気に溢れ出ちゃってるのよ、きっと! あぁどうしよう、万斉の体、筋肉ついてて超堅い……。 って言うか肩幅広すぎ。晋助とは比べ物になんないくらい広い。 うわ、めっちゃ香水の匂いするしコイツ。 あぁでも私の好きな匂いだな、これ……。 駄目だ、今まで散々酷いことされてきたのに、 こんなに急に態度変えられちゃったら、 そのギャップに思わずキュンときちゃう……。 いきなり優しく抱きしめるなんて反則だ……!! 「……殿。」 『え、何……?』 急に名前を呼ばれ、私の心臓が飛び跳ねた。 やめてその無駄に甘い声のトーン! そんなに低い声で名前を呼ばれたら、思わずドキドキしちゃうじゃない! ヤだ、私、顔真っ赤になってないかな……。 「拙者、もう我慢の限界でござる。 いますぐ拙者の部屋で股を開いて下され!!」 『…………。』 雰囲気ブチ壊しのその言葉で一気に現実に引き戻された私は、 とりあえず万斉の顔面に右ストレートをお見舞いしておきました。空気読め!!
(い、痛いでござる殿……) (アタシの傷ついた乙女心より断然ましよ!!) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ ……いや、万斉が悪いんであって私は別に悪くない気が…… いやホントマジですんません最低だって自覚してる。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2010/03/25 管理人:かほ