しょうせつ

○月×日 担当者:また子

毎度毎度思うけど、鬼兵隊の動向を書き記して一体何になるんスか?
このノートをもらった時に武市先輩にそう聞いたら、
だっていづれ我々が伝説になった時、
書物があったほうがぽいでしょう?って言われたッス。

何スかあの人は、平家物語とかでも目指してんスかね?
日本書紀なんて誰も読みやしねーんだよ変態が。
いっそ“晋助様観察日記”とかにした方がいいと思うッス。
いや、それは個人的に書いてるからいいか……。

とりあえず、今日も例によってと万斉のやりとりを記録するッス。




『武市先輩、この鬼兵隊日記さぁ、
 ほぼアタシと万斉の会話しか書いてないんだけど何で?』

武市先輩からノートを受けとったあたしを見て、
あたしと一緒に居たが不満そうにそう言った。
その質問に武市先輩が平然と返答する。

「それしか記録する事がないんですよ。」
『んなわけないじゃん。昨日だって九州でドンパチやらかしたのに
 日記にはアタシが万斉にラリアット喰らわした事しか書いてなかったよ?』
「我々の勝ち戦よりも万斉さんの負け戦の方が面白いでしょう?」
「だからこの日記の担当者から万斉がはずれてるんスね……。」

武市先輩の言葉に、あたしとが苦笑いをした。

「オイ、ちょっと万斉呼んで来い。」
「あっ、晋助様!」

颯爽と登場した晋助様は相変わらずカッコよかったッス……!
サラッサラヘアーに鋭い眼光、そして腰にくる低音ボイス……!!!!
おっといけない、これ以上書いたらまたに
『これ晋助の観察日記じゃねーか!!』って怒られるッス。

気を取り直して、
颯爽と登場した晋助様に、が思いっきり嫌な顔をした。

『はぁ?何でアタシが。』
「アイツとまともにコミュニケーションとれるのお前しか居ねぇんだよ。」
『アタシだってまともに会話出来た例がないよ!』
「まぁまぁ、あたしも一緒に行ってやるッスから。」
「日記のネタ収集ですね。面白そうだから私も一緒に行きましょう。」
「テメー等まだあの日記つけてんのか……。」

呆れる晋助様に見送られ、あたしと武市先輩とは
船内のすっげぇ奥にある万斉の部屋へと赴いた。

『おーい万斉入るよー!服は着ててねー。』

ガンガンと雑にノックをし、が返事も聞かずに部屋に入る。
その後ろからあたしと武市先輩がちょっと離れて入室した。
そしてあたし達はドアの近くで立ち止まり、
椅子に座って本を読んでいた万斉との会話を観賞することにした。

『万斉、晋助が呼んでるよ。』
「…………。(シャカシャカ)」
『オイ、聞いてんのか。』
「…………。(シャカシャカ)」
『オイ!!!!無視してんじゃねーよ!!!!
 コミュニケーションとれねぇんだったらヘッドフォンはずせ!!!!!』

毎度毎度のことにイラッときたは万斉の胸倉を掴みながらそう怒鳴った。
しかし万斉は相も変わらず無表情で、
やっと読んでいた本を下ろした程度の反応だった。

『アタシの声聞こえてる?ってか顔見てるから聞こえてんな。
 晋助が呼んでたよ。さっさと行け。』
「…………あ、そう言えば。」
『あぁ?』
「何時になったら拙者の妻になってくれるんでござるか?」
『人の話聞かねぇ上に図々しいにも程があるなテメーは!!!!』

言葉のキャッチボールが出来ない事にブチギレたが
万斉に殴りかかりそうになったので、
こりゃイカンと慌ててあたし達が間に入ってを押さえつけた。

「落ち着くッス!!いつもの事じゃないッスか!」
「そうですよさん!
 万斉さんも、さんの反応を見て楽しまないで下さい!」
「怒るも可愛いでござるなぁ。」
『テメーブッ殺すぞ!!!!
 ピー玉引っこ抜いて使い物にならなくしてやろーかァ!!!!!』
「Σ!?女の子がピー玉とか言うなッス!!!!」
「しかも止めてあげて下さいソレ痛いから絶対!!」

その後、約30分かけてを宥める事に成功したあたしと武市先輩。
あたし達が奮闘してるっていうのに元凶が平然と本を読んでいた事に腹が立ち、
とりあえず会話を再開する前に2人で万斉を一発殴っておいた。

「で?拙者に何の用でござるか?」
『テメーここまできて話を振り出しに戻す気か……。』
「、抑えて抑えて。晋助様がお前を呼んでるんスよ。」
「……そうか、分かった。」

あたしの言葉に、万斉がそう言いながら席を立った。
案外あっさり話を聞いたな、と驚いたのも束の間。
万斉は立ったその足での元に歩み寄り、
そしての両手を掴んで真顔でこう言い放った。

「つまり、が拙者に求婚していると。」
『寝言は寝てから言えよ。』
「一緒に寝よう?、いくらなんでも気が早いでござる。」
『うわどうしよう一言も言ってないそんなこと。』

全く会話になっていないやりとりに、
あたしと武市先輩は深いため息をついた。
その後なんとかが万斉の自分勝手なアプローチをかわし続け、
1時間後くらいに万斉を晋助様の元へ行かせることに成功した。
当然、遅すぎだって4人そろって晋助様に怒られた。

と万斉のやり取りから今日学んだ事は、
万斉への言伝をに頼むのは間違いなんじゃないかってことです。
だってアイツの反応見て楽しんでるもん。
だから次からはあたしか武市先輩が行こうと約束しました。

次の担当者:何コレ作文んんん!?
 ってかまたアタシと万斉のことしか書いてねーじゃねぇか!!!!』




な鬼兵隊日記

(ったく、真面目に書いてんのアタシだけじゃねーかアホらしい) (だって敵のオッサンがカッコよかったしか書いてないじゃないッスか) (それも万斉さんに見せられない原因の一つなんですからね) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 基本的に鬼兵隊はわいわい仲良くやってればいいと思うよ。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2010/05/16 管理人:かほ