しょうせつ

「じゃあちょっくら行ってくるわ。」
「行ってらっしゃい、2人とも。」
「!変な客にテイクアウトされないようにネ!」
『あはは、されないされない。』

今日は12月25日。世間一般で言うクリスマスだ。
そんなこんなで、俺とにはピザの宅配サービスの仕事が舞い込んできていた。
注文が増えるらしいクリスマスまでの一週間、
サンタの格好でピザを宅配するという素敵なお仕事だ。

俺達の役割分担はこうだ。
俺がサンタクロースの格好でスクーターを運転し、
ミニスカサンタのが客にピザを届けて金をもらう。
実はがサンタ姿でバイトするという噂が歌舞伎町中に流れ、
昨日のイブの日は歌舞伎町中に配達させられる羽目になった。
まぁそのおかげで店長からボーナス貰えたから別にいいんだけど。

「あ、そうだ。今夜のパーティは僕ん家でやりますから、
 仕事終わったら寄り道せずにすぐ帰って来て下さいよ。」
『おーっす!任しといて!アタシ果物がたくさん入ったケーキが食べたいな♪』
「あはは、分かりました。じゃあ果物いっぱいのケーキ買っておきますね。」
『ひゃっほう!じゃあ張り切って行こうぜ銀時ー!』
「おー。」

俺は軽く返事をしての後を追った。
今日は歌舞伎町から少し離れた江戸の端っこのエリアが担当区域だ。
まぁ離れているとはいえ、たったの4件だけだから早く終われるだろ。
そんなことを考えながら俺はを後ろに乗せて雪の降る街を駆け抜けた。

そして、配達4件目で事件は起こった。

『えーっと。最後の配達は……この先にあるホテルの最上階らしいよ。』
「そんじゃーさっさと行って志村家でパーっとやるかぁ。」

俺はの指示通りに道を進み、結構高そうなホテルに辿り着いた。
どこのどいつだよ、こんな高級ホテルでピザなんか食おうっていう変わり者は。
そんなことを考えながら、俺達はスクーターを駐車場に停め最上階を目指す。
そしてが紙を見ながら目的の部屋を探し当てた。

コンコン

『すいませーん。ピザキャップですけどー。』
「はいはーい。いま開けるッス。うわ!?ちょ、何スか先輩!!!」
「あ?何だぁ?」

が部屋のドアを叩くと中から女のものらしき声が聞こえてきて、
その直後ドタドタと何やら騒がしい音が聞こえた。
俺とは状況を把握出来ず顔を見合わせる。
すると突然部屋のドアがバンッと開き、
中からとんでもない顔見知りが嬉しそうな顔をして飛び出してきた。

「ー!!!!!」
『どわぁ!?おまっ、河上万斉!!!!』
「ゲッ……よく見たら鬼兵隊の奴らじゃねーか。何コレ罰ゲーム?」

急に飛び出してきてに抱きついた河上を放置して俺は部屋の中を覗き込んだ。
すると高杉やら顔の変なオッサンやら金髪のねーちゃんやら、
見知ったメンバーが部屋の中でそれぞれ好き勝手やっている。
多分さっき返事をしたのは金髪ねーちゃんなんだろう、
俺のすぐ目の前で河上の突然の行動に唖然としていた。

「銀時お前……ジョブチェンジしたのか?」
「んなわけねーだろ。馬鹿かお前は。
 って言うか何でお前らピザの出前とかとっちゃってるわけ?
 テロリストのくせにピザなんか食ってんじゃねーよ。」
「たまにはいいだろ。」
「よくねーよ。ってかお前、あのグラサンどうにかしてくれよ。
 そろそろの叫び声に警備の人たちが駆けつけそうだからさ。」
「オイ万斉、その辺にしとけ。」

高杉の声に河上は渋々から離れた。

『し、死ぬかと思った……。』
「大丈夫か。オイにーちゃん、これピザ。」
「ついでにもテイクアウト出来ぬだろうか。」
「えぇ?言っとくけどレンタル料超高いぜ?」
「大丈夫でござる。どんな額でも晋助が払う。」
「払わねーよ!下らねぇこと言ってねーでさっさと戻って来い!」

グラサンにーちゃんの予想外のボケに高杉が珍しく感情的にツッコんだ。
アイツでも一応あーゆーツッコミ出来るんだな……。
昔はいつもすかした態度しか取れなかったってのに……成長ってやつか?

「ちょ、お前等さっさと帰るッス!万斉先輩がややこしい事になる前に!!」
「時既に遅しじゃね?そもそもまだ代金貰ってないからね俺達。」
「じゃあ拙者が体で支払おう。」
『ぎゃー!!!!!近寄んなこの変態ィィ!!!!!』
「万斉!!!テメーいい加減にしねーか!!!!」

河上がを捕まえようとしたその瞬間、
奥に座っていた高杉がとうとう立ち上がって持っていた煙管を河上にブン投げた。
投げられた煙管は見事河上の後頭部にクリーンヒットし、
あだっ、という短い声と共に河上の動きが止まった。

「おいテメー等、これ持ってさっさと帰れ。」

そう言いながら高杉が奥からこっちに歩いてきて、
懐からピザの代金をキッチリ俺に手渡し、ついでにさっき投げた煙管を拾い上げた。

「ちぇっ、何だよ、チップなしかよ。」
『って言うか晋助テメー!ボンボンのくせにピザなんか注文してんじゃねーよ!
 お前が注文しなければアタシこいつに会う事もなかったのに!寿司食え寿司!』
「寿司は食い飽きたんだよ。」
『ムッキー!!あんな事言ってるよ銀時!!コイツ超腹立つ!!!
 言ってやれ!!アタシ等なんて卵かけご飯食い飽きてんだぞゴルァってな!!!!!』
「ちょっ、ちゃん黙っててくれる?悲しくなっちゃうから。」
「お前等……そんな不憫な生活送ってんのか……。」
「哀れみの目で見るな高杉コノヤロー!!」

の言葉に高杉だけじゃなく鬼兵隊の全員が俺達を哀れんだ目で見てきたので、
俺はとりあえず近くに居た高杉の胸倉を掴んで怒鳴った。
すると片手で後頭部を押さえながら河上がゆっくりとの肩を掴んだ。

「……拙者と結婚すれば今すぐにでも幸せな家庭を築いてやるというのに……。」
『いや、今でも十分幸せだからいらない。』
「今夜だけでも拙者達と一緒に過ごすでござる。」
『嫌だ。新ちゃん家でクリスマスパーティーする約束してるから。』
「晋ちゃん?」
『違う新ちゃん!』

は言いながら必死に河上の手を払いのけようとしていたが、
既に両手で両肩を掴まれていたので抜け出せなくなっていた。
しかもキッパリと申し出を断ってるっつーのに、
河上は一切聞く耳を持つ気はないようだ。
ホント鬼兵隊の連中って変な奴ばっかりだよな、高杉を筆頭に。

「なら拙者達がその新ちゃん家へ行けばいいだけの話でござる。」
『…………え?』
「え?何?何この展開。ちょ、高杉お前コイツ止めろよ暴走してんぞ。」
「祭りか……面白そうだな。よし、変平太、車出せ。」
「えぇぇ!?本気ッスか晋助様!!」
「ウチのツートップはとんでもない人達ですねぇ……。」
「って言うかお前等全員来るんじゃねぇぇぇ!!!!」

しかし、鬼兵隊の連中は全員が人の話を聞かない変人ばっかりだったので、
バイクで猛スピードを出して必死に振り切ろうと試みたものの、
結局コイツ等の車に追いつかれてしまったのでした、ちゃんちゃん。




聖なるの小さな奇跡

(ただいまー) (あっ、銀さんさんお帰りなさ……い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!?) (なっ、何でそいつ等が居るアルか!?) (いや……ちょっと色々あって……) (色々ありすぎでしょ!!!!!) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 何でこの時期にクリスマスやねんっていう。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2010/07/25 管理人:かほ