突然だけど、鬼兵隊には今や名物となっている光景がある。 これには晋助様も頭を悩ませ、 隊員たちも毎回毎回冷や冷やしながらことの成り行きを見守っている。 しかし当の本人達は全く飽きもせず、 いつものように武市先輩を巻き込んでドンパチやらかしているのだ。 これは、そんな傍迷惑な2人の、傍迷惑な話の記録である。 また子【SMカップル観察日誌】
その日も、事件は突然起こった。 「!!その首の痕は一体……!?」 驚愕した様子でそう叫びながら先輩の首筋を指差す万斉先輩に、 寝起きの先輩は面倒くさそうに『んー?』と生返事を返した。 『あー、コレ?えーっとねぇ……。』 「!!まさか拙者以外の男と寝たのではあるまいな!?」 万斉先輩は切羽詰ったようにそう叫んで先輩の肩をガシッと掴んだ。 「拙者というものがありながらお主!!」 『ちょ、痛い。離して。』 「!!」 真剣な顔で問いただす万斉先輩がよっぽど鬱陶しかったのか、 先輩は心底面倒くさそうな顔でこう言い放った。 『怒るんだったらアタシじゃなくて武市さんにしてくれる?』 先輩のその言葉を聞いた途端、 万斉先輩はいつものようにどこかへ駆け抜けていってしまった。 ……いや、行き先はもう分かりきってるけど。 「先輩、本当は何なんスか、その首の赤い痕。」 あたしが万斉先輩が去っていった方を眺めながら尋ねると、 先輩は『ふあぁ、』と大きな欠伸をしてから言葉を紡いだ。 『んー……多分蚊に咬まれた。痒いから。』 「…………。」 ボリボリと首筋の赤い痕をかきながら言った先輩に、 あたしは思わず顔を引きつらせた。 まぁそんなことだろうとは思っていたけれど、 それにしても毎度毎度被害を被る武市先輩が不憫で不憫で仕方がない。 きっと今頃嫉妬に狂った万斉先輩にボコボコにやられているんだろう。 まぁ、毎度毎度先輩の言葉を鵜呑みにする万斉先輩も万斉先輩だけど。 あたしが苦笑いでそんなことを考えていると、 全ての原因である先輩は素知らぬ顔で食堂へと歩き出してしまった。 もう既に万斉先輩にも武市先輩の行く末にも興味はないようだ。 自由人――そんな言葉が頭をよぎった時、鬼兵隊の廊下に声が響いた。 「え!?ちょ、万斉さんアナタ何を……ぎゃあぁぁぁぁー!!」 やっぱり聞こえてきたその断末魔に、あたしは大きな大きな溜息を吐いた。振り回される鬼兵隊
(先輩、また武市先輩が被害を被ってんスけど) (あららぁゴメンね武市さん。アタシご飯食べに行く) (アンタ本当に自由人ッスね……) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ ずーっと前から温めてたSMシリーズ、ついに解禁です! ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2011/07/03 管理人:かほ