♪おーまーえーのーにーいーちゃーん、ひっきー、こもっりー♪ ジャーアーアージーすーがーたーで、ひっきー、こもっりー♪ そんなP○Aの物議を醸し出しそうな歌を聴きながら、 鬼兵隊一の美少女と名高いさんは何故かうっとりとした表情をしていた。 『うへへ……お通ちゃん可愛い……結婚したい……。』 今の発言からも分かるように、さんは美少女とは名ばかりのただの変態だ。 自身も立派な女性であるにも関わらず、 可愛い女の子が大好きというギリギリアウトな変態である。 しかしそんなさんを好きだというもの好きな男性が世の中には多く存在し、 鬼兵隊のほぼ半数の男性陣がさんに恋をしているという なんともミステリアスな状況にあるのもまた事実であった。 私たちと同じテーブルでさんの変態発言を微笑ましく見ている万斉さんも、 その物好きでミステリアスな男性陣の中の一人だった。 『ヤバいよねコレ!お通ちゃんの可愛さが留まるところを知らないよねコレ! ヤバいこの可愛さ尋常じゃない!結婚したい!お通ちゃんの旦那になりたい!』 「さっきから何気持ち悪いこと言ってんスか。 お前は女なんスから、百歩譲って結婚するならプロデューサーっしょ。」 『えぇっと……なんて名前だっけ。ちんぽさんだっけ?』 「それ完全にアウトッスよ。」 また子さんがさんの下品な発言に冷たい視線を送る中、 万斉さんだけは始終微笑ましそうな表情でさんを見つめていた。 この人の意識は今一体どこにあるのだろう。 正気があるのなら今のさんの発言に少しは顔をしかめてもいいのに……。 「さん、つんぽさんですよ、つんぽさん。」 『あぁ!そうそう!つんぽさんだった!武市先輩詳しいですねー。』 「いや、だって今目の前にごぷっ!」 私がさんに言おうとした瞬間、隣に座っていた万斉さんに瞬時に口を塞がれた。 そして殺気のこもった目で睨みつけられ、 さんに聞こえないような小声で、しかしドスの効いた声でこう言われた。 「武市……貴様殺されたいのか。」 「タンマタンマ、暴力反対です。」 私が両手を挙げて降参の姿勢を見せると、 万斉さんはゆっくりと私から離れまたさんに視線を戻した。 幸いさんはまた子さんと話していたので今の様子は見ていないようだ。 それにしても、この変態女にどうしてここまで執着できるのか……。 愛は人格を変えるというが、万斉さんは多分元々変な人だったんだろうと思う。 「ってホント男に興味ないッスよねー。 昔から晋助様の傍に居たっていうのに、全く興味を示さないし。」 また子さんがあり得ないとでも言いたげな表情でそう言えば、 さんは『だって晋助可愛くないんだもん』と口を尖らせながら呟いた。 「んっだとゴルァ!!!!」 「まぁまぁ、また子さん落ち着いて下さい。 でもさん、一応、貴女も女性なんですから、女性と結婚は出来ませんよ?」 『ねぇ武市先輩、何で今“一応”って所を強調したの?ねぇ何で?』 「私フェミニストですから。」 『お前困ったらフェミニストって言っときゃいいと思ってんだろブッ殺すぞ。』 さんのこの発言にも、万斉さんはとても微笑ましそうな顔をしていた。 多分サングラスが邪魔で現実が全く見えていないのだと思う。 「、万斉先輩とかどうッスか?結構手頃な位置に居ると思うッスけど。」 「ま、また子殿……!」 万斉さんの変心……もとい恋心を知っているまた子さんが気を利かしてそう言えば、 思わぬ配慮に万斉さんが驚いたような喜んだような声を出した。 しかし、言われたさんは『うーん、』と首を捻ってしまう。 『別に万斉は嫌いじゃないけど、職場結婚はなぁ……。』 「しょ、職場結婚……。」 「ここは職場なんスか……?」 「じゃあつんぽさんはどうです?お通さんのファンならアリでしょう。」 今度は私が気を利かせれば、 万斉さんは例によって「武市……!」と感極まった声を出した。 しかしさんの反応は先程と同様、微妙な感じだ。 『武市先輩お通ちゃんまでさん付けとか……。 ってかつんぽさんは駄目だよ。あの人ホモだとかいう噂があるから。』 「それは根も葉もないデマでござる!!!!!」 さんの衝撃の発言に、 万斉さんがガタンッと大きな音を立てながらその場で立ち上がった。 そんな万斉さんの様子に驚くさんの隣では、 また子さんが頭を抱えて大きな溜息を吐いている。 『な、何……?いきなり……。』 「!まさかそんな下らぬ噂を信じているわけではあるまいな!?」 『だって芸能界って何があるか分からないよ?怖いところだよ?』 「確かにそうだがつんぽだけは無実でござる!!」 『なっ、何でそんなにつんぽさんをプッシュするの……?』 万斉さんの気迫に押されているさんは、 一体何が何だか分からないと言いたげな表情で万斉さんを見上げていた。 そして万斉さんはしばらく何かを考え込み、意を決したようにこう言った。 「お通殿に真偽を確かめるでござる。」 『は……?』 万斉さんの突然の提案に呆気に取られているさんだったが、 別にそこまでつんぽさんに興味があるわけでもないらしく、 熱くなっている万斉さんに向かって 『なにもそこまでしなくても……』と控えめに苦笑した。 「拙者が許さん!!今すぐ電話するでござるよ!!」 『えっ、えぇっ!?何!?万斉つんぽさんのこと好きなの!? 分かった分かった、聞いてあげるから、とりあえず座りなって。』 なにやら誤解の上にまた誤解が重なったような気もするが、 万斉さんの正体を知らないさんは何が何だか分からないまま、 とりあえず万斉さんを落ち着かせて携帯電話を取り出した。 そして少しの操作の後、携帯電話を耳に当て、相手が出るのを待っていた。 『あっ、お通ちゃん?忙しいのにごめんね。 実はつんぽさんの噂で聞きたいことが……そうそう、こないだ言ってたやつ。 …………うえぇ!?そうなの!?お通ちゃん大丈夫!? ……そっか、なら大丈夫か。あっ、うん! こっちこそいきなりゴメンね!インタビュー頑張って!』 さんは元気よくそう言うと案外あっさりと会話を終わらせてしまった。 そして我々の方に向き直り、先ほど得た情報を笑顔で私たちに報告してくれる。 『つんぽさんってね、見るからにゲイっぽい雰囲気なんだって! 革ジャンにグラサンの長身で、いかにも怪しい人なんだってー! 凄くね!?見てみたくね!?』 「なっ……!?」 さんの報告に、万斉さんの心が折れる音が聞こえたような気がした。 また子さんの方からは「うっわキッツ」という呟きが聞こえてきたし、 私も心の中で何とも悲惨な展開だと万斉さんに同情していた。 『世の中ホンモノって居るんだねー。万斉も気をつけなよー? ホモとかゲイとかに目ぇつけられたら大変だよー?』 「…………。」 さんがしみじみと世界の広さを実感している時、 正面に座っている万斉さんからは何ともいえない負のオーラが漂っていた。 すると返事がないことを不思議に思ったさんがふと万斉さんの方を見て、 流石に万斉さんが落ち込んでいると分かったのかハッとした様子で口を押さえた。 『ゴ、ゴメン……万斉、彼女とか居ないんだよね……。 もしかしたら誤解されてアーッなんてことも……無きにしも非ずだよね……。』 さんの心配のベクトルは全く違う方向に向いていたが、 とりあえずさんは万斉さんの様子を心配して色々考えているようだった。 『あっ、あのね、もしホモとかゲイに絡まれたら、アタシの名前出していいから。 アタシのこと彼女だって言ってもいいから、だからそんなに落ち込まないで?ね?』 その瞬間、万斉さんの負のオーラが消え去り、急に背筋がピンと伸びた。 「が拙者の彼女になってくれると?」 『えっ?あ、うん。名前だけね、名前だけ。』 「承知したでござる。じゃあ今日からは拙者の嫁ということで。」 『う、うん?ねぇ万斉、アタシの言葉聞こえてる?ねぇ。』 一瞬にして棚からぼた餅を得た万斉さんの様子に、 私とまた子さんはゆっくりと顔を見合わせて、そして同時に肩をすくめた。つんぽからぼた餅
(万斉先輩って根っからの商売人ッスよね。チャンスは逃さないって言うか……) (そしてさんは完全に万斉さんの手玉に取られるタイプですね) (先が思いやられるッス) (同感です) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 鬼兵隊のみんなって、万斉=つんぽの方程式成り立ってるのかな? ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2012/01/02 管理人:かほ