しょうせつ

『晴明ー!遊びに来たったでー!』

が元気良くそう言いながら結野家の門をくぐった時、
あろうことかわしと道満は大喧嘩の真っ最中であった。
勿論、常日頃からわし等2人に仲良くしろと口煩く言っているの雷が落ち、
もうかれこれ1時間くらい、こうして2人仲良く正座させられていたりする。

「……そろそろ足が……。」
『黙れ晴明。アタシの言いつけ守れへんかった罰や。』
「晴明はともかく、俺は痔持ちだからこのままだと悪化する……!」
『別にええんちゃう?血まみれになんのは結野家やし。』

は腕組みしながら仁王立ちというなんとも典型的なポーズで、
しかもかなり冷たい目でわし等を見下していた。
その様子に、わしも道満も意見する勇気を喪失する。

『そろそろ聞いたげるわ。喧嘩の原因は?』
「れ、例によって道満が嫌がらせを……。」
「何だと!?先に仕掛けてきたのは貴様ではないか晴明!」
「何を言うか!ちょっと巳厘野家だけに雨を降らせたからといって、
 式神を3体も送り込んでくるのは反則じゃろうが!!」
「どこが反則なんだ!自業自得だ!」
「何じゃとぉ!?」
『うるさぁぁい!!!!!』

の怒鳴り声に言い争っていたわしと道満は一瞬にして黙り込んだ。
そして恐る恐るの顔を見ると、やはりさっきより怒っている。
わし等はチラッと顔を見合わせ、心からの反省を表現するために下を向いた。

『つまり、こないだ万事屋さんを巻き込んで大騒動を起こしたのに、
 まだちゃんと仲直りしてないと。』
「「…………。」」

の明らかにイライラしている声に、わし等2人の顔から冷や汗が出る。

『道満はクリス姉さんのことまだ引きづってるし、
 晴明は晴明でまだ素直に謝れてへんと。』
「何故わしが道満に謝らねばならんのじゃ!」
『黙れブン殴るぞ。』
「すみませんでした。」

わしの精一杯の抗議も、やはりの冷たい視線には勝てなかった。

『道満もさ〜、いい加減クリス姉さんのこと諦めたら?』

わしから道満に目線を移したは、
なりの気遣いからか比較的優しい口調で道満に話しかけた。

「い、今はもう復縁しようなどとは思っておらん!」
『じゃあもう晴明に嫌がらせすんの止めぇや。』
「そ、それは……。」

の言葉に、道満が困った顔で目を逸らした。

『う〜ん……分かった。じゃあ道満、ウチに嫁においで。』
「は?」
「なっ、何を言い出すんじゃ!!!!」

わしはの予想外の発言に激しく驚いてそう叫んだ。
しかし言った本人は本気だったらしく、キョトンとした顔でわしの顔を見る。

『え、アカン?』
「アカンも何も、道満は男じゃぞ!?」
『アタシは女やけど?』
「嫁の部分を指摘しておるのじゃ!!!」

中々理解しないに、わしは力いっぱいツッコんだ。
するとはようやくわしが言わんとしている事に気づいたらしく、
あぁ、と声を上げながらポン、とありきたりな仕草をした。

『別に間違ってへんやろ?だって道満しつこいし、京都の女みたいやん?』
「みたいやん?ではないわ!!と言うかお主、本気でこやつと結婚する気か!?」
『アカン?』

またしてもキョトンとした顔をしたに、わしはとうとう言葉を失った。
別にわしはを狙っていたわけではない。
そもそも、わしとは主従関係じゃ。
ただ本家が許すならを嫁に迎えてもいいかな、と思っていた程度で、
本気で惚れていたとか、そんな感情はどこにもない。(ツンデレではないぞ!)

しかし、あろう事か道満と結婚すると言い出すなんて、
わしのプライドがズッタズタに切り裂かれた気分じゃ。
よりにもよって、この道満にを取られることになろうとは……。

「ほ、本気なのか?」

わしが放心していると、隣でも同じく放心状態の道満が鞠末に問うた。
するとはわしから道満に視線を移し、
小首を傾げるというなんとも可愛らしい仕草をしながら、
これまた可愛らしい声で『嫌?』なんて聞き返している。

今までの冷たい視線はどこへやら。
開いた口が塞がらないまま、わしは道満の方を向いた。
するとさっきまで呆気に取られていた顔が
嬉々とした表情になっているではないか。
わしは驚きのあまり開いていた口をさらに広げた。

「い、嫌なわけがないだろう!
 お前がいいのなら、喜んで嫁にでも何でもなってやる!」
『ホンマに?じゃあおいで〜。』
「……〜ッ!!ッ!!!!」

ガバッと音が聞こえてきそうな勢いで道満はに抱きついた。
しかし足がしびれていたのか、嬉しそうな顔は急に苦悶の表情に変わる。
痛みのせいでを抱きしめる腕に力が入っていたが、
は気にせず、よしよしと背中をさすってやっていた。

そんな微笑ましい光景に、わしは一気に脱力し、深い深いため息をついた。
なんか、言いたいことが山ほどあって、もう…………




逆とか言うのも面倒くさい

(よっしゃ!じゃあ道満は今日からアタシの嫁な!) (、嫁ということは俺は嫁入りか?) (ツッコまんぞ。わしは絶対にツッコまん!) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ これ晴明夢なのか道満夢なのかもうよく分かんない。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2010/02/28 管理人:かほ