「…………あれ?」 結野家でのゴタゴタも一段落した久々の休日、 僕は姉上とさんと一緒に買い物に行く途中だった。 そこで僕はあることに気がつき、隣に歩いていた姉上に声をかける。 「姉上、ストーカー1人増えてません?」 「あぁ、あれは私じゃないのよ。」 「え?じゃあ……。」 僕がゆっくりと姉上の隣で歩いていたさんの方を見ると、 さんは何とも言えない顔をして俯いていた。 僕はチラリと後ろを振り返る。 姿こそ見えないものの、いや、近藤さんは若干見え隠れしてるけど、 やっぱり背後に2人分の人の気配がする。 「ちゃんもどこで拾ってきたの?あのストーカーさん。」 『いやぁ……あのぉ……。』 「あの馬鹿ゴリラと違って全然姿を見せないわよねぇ、あのストーカーさん。」 「え、じゃあ姉上もさんも、あの人が誰か知らないんですか?」 僕がちょっと気味悪がって質問すると、さんが僕の顔を見て苦笑した。 『いや……アタシとぱっつぁんは知ってるけど……。』 「え?僕も?」 僕は自分を指差しながら驚いて聞き返す。 さんに好意を寄せている人間は銀さんを筆頭にたくさん知ってるけど、 ストーカーしそうな人間は心当たりがないなぁ……。 近藤さんとタッグを組んで土方さんが悪ノリしてるのかな? いや、悪ノリするなら沖田さんの方が可能性があるか。 僕はしばらく考えたけど、結局これという人物を思い浮かべる事が出来ず、 仕方なくさんに答えを聞くことにした。 「さん、一体誰なんですか?」 『ほら、こないだ会ったばっかりの……。』 さんが答えを言おうとしたまさにその瞬間、 いきなり後ろから爆音と共に爆風が吹き荒れてきた。 僕達は驚いてその場に立ち止まり、風が止んだところで恐る恐る後ろを振り返る。 するとそこには尻餅をつく近藤さんを前に仁王立ちしている土方さんと、 そしてなんと同じく仁王立ちしている晴明さんの姿があった。 「え!?何あの異色のコラボ!?」 「あらまぁ。」 驚く僕と姉上の隣では、さんがため息をつきながら頭を抱えている。 晴明さんの後ろに大きな式神が2体居ることから、 さっきの爆風の正体はあの式神によるものだと予想出来た。 その証拠に、近藤さんは体中が丸コゲだ。 「ん?あれは……。」 僕は近藤さんの隣でブッ倒れている真っ黒い塊に気がついた。 真っ黒といっても近藤さんみたいにコゲてるわけじゃなくて、服が真っ黒だった。 どこかで見たことあるような、ないような……。 僕がそんなことを考えていると、その塊がゆっくりと動き出し、 そしてバッと晴明さんのほうを向いて怒鳴りだした。 「晴明!!!貴様いきなり何をする!!!」 「それはこっちの台詞じゃ!! 最近仕事をサボってどこに行っているかと思えば、 女子のストーカーとは何事じゃ、道満!!」 聞き覚えのある名前に目を凝らせば、黒い塊の正体は巳厘野家の道満さんだった。 「え!?どうしてあの人たちがここに!?」 「あら、やっと姿が見れたわねぇ、ちゃんのストーカーさん。」 「えぇぇ!?じゃ、じゃあさっきの気配は……!!」 僕がさんの顔を見ながらそう言えば、さんは何も言わずに苦笑した。 ってことは……えぇぇ!? 道満さんがさんのストーカーをしてたってこと!? 何で!?あの人こないだまで結野アナの事で未練タラタラじゃなかったっけ!? 「近藤さん、仲間増やして一体何してんだ。」 「トシ!!これは列記としたパトロールだよ!!」 「そんな個人的なパトロール聞いたことねぇよ。ほら、さっさと帰るぞ。」 「お妙さぁぁぁん!!!!!また明日もお供しますからねぇぇぇ!!!!!」 「二度と来るなァァァ!!!!」 土方さんに引きずられながら近藤さんが叫べば、 姉上が落ちていた瓦礫を近藤さんめがけて思いっきり投げつけた。 それは近藤さんの頭に見事命中し、近藤さんは意識を失った。 僕とさんはそれをいつものように苦笑いで見ていた。 しかし、今日はもう1人残っている。 「さて道満、わし等も帰るぞ。この間の騒動の後始末がまだ残っておるんじゃ。」 「帰るなら貴様1人で帰れ。俺はまだやり残したことがある。」 「やり残したことってなんじゃ!!ただのストーカーじゃろうが!!! 何ちょっとカッコつけとるんじゃ馬鹿者が!!!!!」 晴明さんと道満さんは街中だというのに式神放置で喧嘩を始めてしまった。 喧嘩するのは一向に構わないけど、 せめてあの馬鹿デカい式神だけでもしまってくれないかなぁ……。 「ちゃんどうするの?放っておく?」 『いや、半分アタシのせいみたいなもんなんで、ちょっと止めてきます。』 「あ、さん、僕も行きますよ。 姉上は荷物を持って先に帰っていて下さい。」 「分かったわ。あんまり遅くならないようにね。」 こうして僕とさんは姉上と別れ、喧嘩している2人の元に向かった。 『あ、あのぉ……。』 「……ッ!?!!」 さんが恐る恐る2人に話しかけると、 道満さんは急にバッと振り返って顔を真っ赤にした。 きっとさんがいきなり近くに来てビックリしたんだろう。 一方晴明さんはさんと僕の姿を見て笑顔で対応してくれた。 「おぉ、に新八。久しぶりじゃのう。銀時は元気にしとるか?」 『え?あっ、はい、まぁ。』 「道満が迷惑をかけているようですまんの。すぐに連れて帰るとしよう。」 『あ、はい。』 「ちょ、ちょっと待て晴明!」 道満さんは晴明さんから少し離れながらそう言い、 やけに真面目な顔をしてさんの方を向いた。 それにさんは困った顔をする。 「、まさかあの言葉、忘れたとは言わせんぞ。」 『あ、やっぱりですか。あのですねぇ……。』 「さん、あの言葉って?」 頭をかきながら顔を逸らしたさんに僕が尋ねれば、 さんの代わりに道満さんが質問に答えてくれた。 「が帰り際、俺に求婚してきたんだ。」 「えっ……えぇぇ!?」 「、それは真か!?」 道満さんの衝撃発言に僕と晴明さんが驚いてさんの顔を見た。 するとさんは困ったような顔でしばらく何かを考えて込み、 そして晴明さんの顔を見ながら申し訳なさそうにこう言った。 『あの、それは全くの誤解なんですけど、 とりあえず式神だけでも直してくれません?』 さんの言葉に、その場の空気が一瞬で凍りついた。 続く .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 陰陽師初の長編です! 道満は近藤さんと気が合いそうだなぁって思ったのが始まり。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2012/03/24 管理人:かほ