「で?何でお前等がここに居るわけ?」 あの後僕達は晴明さんに式神をしまってもらって、 とりあえず話をしようということでここ、万事屋に来ていた。 僕達が晴明さん達を連れて部屋に入った瞬間、 銀さんが物凄い嫌な顔をしたけど、僕達はあえて見ないフリをした。 『ごめん銀時、完全にアタシのせいだ……。』 「どういう事か詳しく説明してもらうぞ、。」 僕はさんの隣に腰掛け、神楽ちゃんも僕の隣に座り、 向かい側には道満さんと腕組みをした晴明さんが座っている。 『えぇっと、何て言えばいいのか……。 あのですねぇ、闇天丸を倒した後、アタシだけ巳厘野家に居まして……。』 「そう言えば、帰り際までお主の姿が見えんかったな。」 「確か、巳厘野家の人に力仕事手伝わされてたんでしたっけ?」 『いや……実は、あの後道満さんの治療をしてたんですよ。』 さんの口から飛び出た意外な事実に、 万事屋メンバーと晴明さんが思いっきり驚いた。 「何ぃ!?、そうだったの!?」 『ゴメン銀時!結野家と巳厘野家の人に、銀時のタマは治せるけど、 道満さんの方は治療が難しいからって言われて、それで……。』 「確かに、さんの治癒能力は宇宙一だって、 辰馬さんにも高杉さんにも春雨の人にも言われてましたもんね……。」 僕は今までの記憶を呼び起こし、 改めてさんが凄い天人のハーフだったんだということを思い出した。 さん、普通の人間よりも常識があって優しくていい人だから、 半分天人の血が流れてることなんてすっかり忘れちゃうんだよなぁ……。 「それではコイツに求婚したアルか?」 『いや、してないよ、断じて!』 「何を言うか!俺はお前の一言一句を覚えているぞ!?」 神楽ちゃんの言葉をさんが慌てて否定すると、 それを聞いた道満さんが怒ったようにテーブルをバンッと叩いて身を乗り出した。 「うっわコイツ超しつけーよ。性格全然改善されてねーよ。」 社長椅子で面倒くさいオーラを放ちながら銀さんがそう言うと、 僕の隣に座っていた神楽ちゃんが力強くうんうんと首を縦に振った。 そんな2人の反応を苦笑いで見ていた僕とさんだったが、 晴明さんだけは冷静な表情で話を進めようとさんに声をかけた。 「、お主は道満に何と言ったのじゃ?」 するとさんはまた困ったように『う〜ん』と考え込んでしまって、 万事屋はしばらく沈黙に支配された。 『何を言ったって言うか、励ましたって言うか……。』 「励ました?道満さんをですか?」 『そう。』 「んだよ〜、じゃあソイツが自意識過剰なだけじゃねーか。」 僕とさんの会話に、銀さんがこれ以上なく面倒くさそうにそう言った。 「お前そろそろ学習しろよ。 結野アナだってお前を好きだから優しくしてたんじゃねぇんだよ。 ただ結野アナは心の底から優しくて俺達の天使なだけなんだよ。」 「銀さん、個人的意見が入りすぎです。」 「それと同じで、だって別に変なつもりで言ったんじゃねーんだよ。 分かったらさっさと帰れ、変態陰陽師。」 そろそろ本気で面倒くさくなってきたらしい銀さんが道満さんを言葉攻めし始めた。 しかしそんな銀さんの攻撃は道満さんにダメージを与えることが出来なかった。 というか、さっきから道満さん、さんしか見ていない気がする。 「、よく思い出せ。俺に言った言葉を全て。」 『えぇ?そんなこと言われても……。』 「はテメーみてぇにネチネチしてねぇから覚えてねぇよ、 んな昔言った言葉の一つ一つなんか。」 やけに真剣な顔でさんに迫る道満さんに、戸惑いを隠せないさん。 そしてその様子に若干イライラし始めた銀さん。 駄目だ、ここは完全に修羅場と化している……!! 『えぇっと、とりあえず治療中に、いい所をいっぱい言ったような……。』 「道満のいいところ?話が続かんかったじゃろうに。」 「晴明貴様……。」 『いや、結構言いましたよ?思い浮かぶ限りの褒め言葉を。』 えぇっと、と空中を見ながら当時のことを必死に思い出すさん。 小首をかしげてちょっと口を開けて考え込むその様子は、 その場に居た全員が思わずキュンとしてしまうほど可愛い仕草だった。 『一途な所でしょ、頑張り屋さんな所でしょ、実は優しい所でしょ、 あとは……意外とカッコいい所でしょ、声がいい所でしょ……。』 「、その時お前は俺の声を好みだと言ったぞ。」 『え?あぁ、言いましたっけそんなこと。』 「それは声の話だろーが!!!!どんだけ喜んでんだテメェ!!!!」 「しかも本当に一言一句覚えてる辺りがキモいアル。」 4人の会話を、僕と晴明さんは苦笑いで聞いていた。 『あとは……髪の毛長い所とか、予想以上に髪の毛がさらさらな所とか、 全身真っ黒な所とか、髪の毛が痛んでない所とか……。』 「さんそれ途中からいい所じゃなくて ただの身体的特徴になってるじゃないですか。 しかも何でそんなに髪の毛プッシュしてんですかアンタ。」 「は俺の髪に触れながら楽しそうに笑っていたぞ。 しかもこの手触りが好きだとも言っていた。」 「だからそれテメーじゃなくて髪の毛の話だろーがァァァ!!!!!!」 フフンと得意げに言った道満さんに、 銀さんがバコーンと社長机を殴って立ち上がりながら叫んだ。 黙って話を聞いていた神楽ちゃんも晴明さんも、顔が酷いことになっている。 心底興味なさそうな、正直面倒くさいとでも言いたげな顔だ。 「テメーまさかそれだけで が自分に求婚してきたとかホザいてんのかアァン!?」 「そんなわけないだろう!もっと決定的な一言があるわ!」 「さん、覚えてますか?」 『いやぁ……全然……。』 僕がさんに尋ねれば、 さんはやっぱり覚えがないらしく困ったように頭をかいて首をかしげた。 「!貴様俺が髪を切ろうかと言い出した時俺に何と言った!?」 『え?髪を……?』 道満さんがさんを指さしながらそう言うと、 さんは一応思い当たる節はあったようで、 その時自分が何と言ったのかを必死に思い出していた。 さんが記憶を呼び起こしている間に、 神楽ちゃんが台所から酢昆布を取ってきてボリボリ食べ始めたり、 銀さんが社長椅子にドカッと座ってジャンプを読み始めたりしたので、 とりあえず僕は台所に行って陰陽師の2人にミロを出した。 「あぁ、すまんな。ミロはやはり最高じゃ。」 「そうか?俺は甘ったるくてあまり好きではないが……。」 ミロをズズズと飲みながら言った2人の言葉に、 性格の不一致ってこういう所から生じるんだなぁと実感した。 続く .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 結野兄妹はミロ派、巳厘野家はみんなヴァンホーテン派だと可愛い。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2012/07/08 管理人:かほ