『銀時!アンタ甘いもん控えろって医者に言われてるでしょ!?』 「それがどうした!!今日は糖尿病患者も甘いもん食べていい日なんだよ!」 『どこの誰がんな事決めたの!?』 「ここの俺が!!」 『殴るぞお前!』 今日はさんの出勤がやけに早いなぁとは思っていたけど、 まさか銀さんがチョコレートを食べないように監視しに来たなんて……。 まぁ、この前の検診で医者に真顔で 「甘いもん控えないと死ぬよ」って言われた時から、だいたい予想はしてたけど。【銀時とのバレンタインデー】
今日は年に一度のバレンタインデー。 毎年僕は姉上からのダークマター1個という大凶作だったので、 今年も期待はしていなかったけど、意外な事に6個もチョコをもらってしまった。 1つはさんがさっき神楽ちゃんと僕にくれたチョコ。 もう1つはさんがお通ちゃんから預かって来てくれたチョコ。 そしてお登勢さんからのチョコとたまさんからのチョコと、 神楽ちゃんが月詠さんから預かって来たチョコと、 神楽ちゃんが昨日さんと一緒に作ってくれたチョコ。 銀さんはそれにさっちゃんさんから送りつけられた 等身大のさっちゃんチョコも加わって計7個の豊作なんだけど、 全てさんの手によって神楽ちゃんのお腹の中に納まってしまった。 ……ちなみに、姉上のチョコはチョコとして数えていない。 『いい?大事なのは気持ちなの!チョコは食べちゃ駄目だけど、 チョコと一緒に貰った愛情だけはしっかりと受け止めなさい!』 「出来るかァァァ!!!!!! 俺がこの日をどんだけ楽しみにしてたと思ってんだァァ!!!! 甘いもんなしに愛情なんて受け止められるかってんだ!!」 『うっわ銀時最悪!乙女の心を無駄にする気ー!?』 「テメーは俺の期待を無駄にしただろーが! ビリビリに破り捨てただろーがァァ!!!!」 甘いものを目の前で没収され、銀さんは狂ったように怒鳴り散らしている。 同じ男としてちょっと可哀想な気もするけど、命に関わることだしなぁ。 ここは唯一銀さんに対抗できるさんに頑張ってもらわねば。 「だーもうやる気なくした!銀さん完全に怒ったよ! 俺もう今日仕事しねーから。何言われたってここを動かねーから!!」 『心配しなくても仕事なんてないわよ、このマダオが!』 ふてくされて椅子に座りながら足を組んだ銀さんに、 さんが止めのキツい一言を言い放った。 って言うか、銀さんが椅子に足組んで座ってるのって いつもと同じ光景だと思うのは僕だけだろうか。 「ん?、袋にまだ一個残ってるアルよ?誰にやるアルか?これ。」 『え!?あ、それは……!!』 神楽ちゃんの言葉に、さんは焦ったような素振りを見せた。 僕が不思議に思って神楽ちゃんが覗いている紙袋の中を見ると、 確かにそこにはまだ1つチョコが残っていた。 この紙袋はさんが皆に買ってきたチョコを入れていたもので、 僕と神楽ちゃんで最後だって言ってたんだけど……。 「って言うかコレ、さんの手作りですよね? えっ?ってことはコレ、もしかして本命チョコ!?」 「何ぃ!?テメー、男でも出来たのか!?」 僕が驚いて叫べば、銀さんが過剰な反応を見せた。 実は銀さん、小さい頃からさんに片思いしてるらしいから、 さんに自分以外の男がいることに腹を立てたんだろう。 しかもさっきの糖分没収事件のイライラと合わさって その怒りは非常にマズいことになっている。 これには流石に僕も神楽ちゃんも息を飲んだ。 『べ、別に、銀時にはかんけーないでしょ!』 「大有りだね!!一体誰に渡すつもりなんだ!?あぁん!?」 『何で関係あるのよ!別に誰に渡してもアタシの勝手でしょ!?』 「いいや!お前の本命チョコの譲渡権は俺にある!! 分かったら大人しくそのチョコ俺によこせ!」 『何意味分かんないこと言ってんだこの天パ!!!!』 いつの間にか立ち上がってさんと机をはさんで睨み合っている銀さんに、 僕と神楽ちゃんはただただ黙って見ていることしか出来なかった。 いつもちゃらんぽらんな銀さんだけど、今日だけはめちゃくちゃ怖い。 さわらぬ神に祟りなし。 僕と神楽ちゃんはアイコンタクトでお互い空気になることを決めた。 「お前っ、俺にずっとついてくるって言ったじゃん!!」 『言いましたが何か!?』 「なのに何で他の男に色目使っちゃってるわけ!?」 『アンタ何か勘違いしてない!? アタシがアンタに一生ついていくって言ったのは仕事の話であって、 別に銀時の女になるなんて言った覚えはありませんけどー!?』 「んだとテメェェ!!!銀さんの恋心を弄ぶ気か!?」 『こっ、恋心って何よ!変なこと言わないで!!』 2人の喧嘩を見学しているうちに、 僕はさんの様子がちょっとおかしいことに気がついた。 神楽ちゃんも銀さんも全然気づいていないみたいだけど、 何だかさん、さっきから照れてる……? 顔だってほんのり赤いし、怒鳴り方だって照れ隠ししてるみたいだ。 まさかさんも……いや、でも、まさかなぁ……。 「一体誰に渡すつもりなんだよ!?さっさと答えやがれ!」 『そ、それは……!い、言わない!!』 「あぁん!?銀さんに隠し事かコノヤロー!」 『別に誰だっていいでしょ!?何なのアンタさっきから!! アタシの本命チョコがほしいの!?』 「あぁほしいね!!の心と体ごとほしいね!!」 『なッ……!?』 喧嘩の勢いでさんにとんでもない形で告白した銀さん。 いや、あれ告白って言うのかな? 言った本人は妙にスッキリした顔してるけど、 言われたさんは顔を真っ赤にしてそのまま固まってしまった。 まぁ無理もないか。さっきの台詞ちょっとエロかったし。 『……〜っ!そ、それ、本気で言ってんの……!?』 「あぁ本気だよ!銀さんはいつでも本気だよ!」 『…………〜ッ!!!!』 銀さんの言葉に、さんは急に体の向きを変えて銀さんに背を向けた。 そしてそのまま僕たちの方に歩いてきて紙袋を掴むと 『馬鹿!!!!』と叫びながらそれを銀さんの方に思いっきり投げつけた。 僕と神楽ちゃんが呆気に取られている中で 銀さんは見事その紙袋をキャッチし、そして驚いた顔でさんを見た。 さんは俯いてしまっているので表情は良く分からなかったが、 僕が見た限り、耳まで真っ赤になっていた。 それが喧嘩でヒートアップしたせいなのか照れているのかは分からなかったが、 とりあえず言えることは、さんが本命チョコを銀さんに投げつけたって事だ。 「お、おい……コレ……。」 『食べたきゃ食べれば!?どうせ銀時に渡すつもりだったんだし!!』 「……へっ!?」 さんの言葉に今度は銀さんが耳まで真っ赤になってしまった。 『糖分抑えてあるから、全部食べちゃってもいいよ!! でもその代わり他のお菓子は食べちゃ駄目だからね!!!!』 さんはそう言い残して万事屋を飛び出して行ってしまった。 残された僕達はしばらく呆然とその場に立ち尽くした。 一番呆気に取られていたのは、言わずもがな銀さんだった。 「…………ったく、何だよ……素直じゃねぇなぁ……。」 ボリボリと頭を掻いてそう呟いた銀さんがさんを迎えに行ったのは、 貰ったチョコを全部平らげて 「これだけじゃ全然甘くねぇよ」とため息をついたすぐ後だった。残りの糖分はその口で
(ちょっくらチョコ買いに行って来るわ) (銀ちゃんには勿体無さ過ぎるネ。死ぬ気で捕まえてくるアル) (全く、素直じゃないのはどっちなんだか) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 銀ちゃんとツンデレヒロインって 究極の萌えなんじゃないかと思い立ったが吉日生活。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2010/02/15 管理人:かほ