しょうせつ

今日は世間一般で言うホワイトデー。
僕も朝からダークマターのお返しとして姉上にバーゲンダッシュを献上し、
3倍返しどころか僕何も得てねーよみたいな事をグチりながら万事屋に出勤し、
神楽ちゃんには酢昆布を、さんにはクッキーをお返しした。

するとそれを見て今日がホワイトデーだったことに気がついたのか、
ソファーの上でジャンプを読んでいた銀さんが徐にさんに話しかけた。

「ー、ホワイトデーのお返し俺でもいい?」
『はぁ?んなもんいらないわよ。馬鹿じゃないのアンタ。』

お返しを何も用意していないのだろうと安易に予想できる銀さんの言葉に、
さんは若干イラッとしたような顔でそう言い放った。
すると銀さんはジャンプを机の上に置きながらガバッと起き上がり、
ちょっと怒ったような口調でさんに返答する。

「何でいらねぇんだよ!お前俺のこと好きなんだろーが!
 だったら可愛く『押し倒してv』くらいのこと言いやがれバカヤロー!」
『はぁぁ!?誰がんなコト言うもんですか!
 銀時を貰うくらいならお妙さんのダークマターでも貰うわよ!!』
「うっわ、銀さん今すっげぇ傷ついた。
 これ以上ない侮辱だよね今の、この世に生きる価値ないよねそれ。」
「銀さん、それ姉上の前で言ったら殺されますよ。」

でも確かに、今のさんの言葉は本当に酷い。
姉上のダークマターの下を行くなんて、口には出せないけど、
本当にこの世に存在する意味がない。

でもこれがさんなりの照れ隠しだってことは
一ヶ月前のバレンタインデーの日に3人とも確認済みだ。
銀さんから聞いた話によると、あの後さんざん江戸中を探し回ったものの、
結局さんはお登勢さんの所に居たらしい。

そしてここからはキャサリンさんとたまさん情報だけど、
やっとの事でさんを見つけた銀さんは相当頭に来ていたらしく、
カウンターに座っているさんに歩み寄りながら
「テメー灯台下暗しを実行してんじゃねーよクソアマァ!!」と叫び、
それを聞いたさんが『んだと!?誰がクソアマだコノヤロー!!!!』と
売り言葉に買い言葉で銀さんに殴りかかったんだとか。

そしてその拳を華麗に顔面で受け止めた銀さんは
床にブッ倒れながらさんにプロポーズしたんだって言ってた。
そんな恰好悪いプロポーズでよくOKしたなさんと思っていたが、
この様子じゃ関係が発展する事は全くなかったようだ。

「じゃあ、銀さんのチューでどうだ!これなら文句ねぇだろ!」
『大有りだっつの!!!!馬鹿なのアンタ、ホント馬鹿なの!?
 何で体要らないっつってんのにチューは欲しがると思ったわけ!?
 アンタ髪の毛だけじゃなく頭ん中もクルクルパーなの!?』
「テメーさっきから聞いてりゃ
 将来の夫に向かってなんつー事言いやがんだコラ!!
 いい加減にしねーと怒るよ俺も!!本気で襲っちゃうよ!?」
『いいわよ!?かかって来なさいよ、返り討ちにしてやるから!!』
「上等だコノヤロー!!!!」
「あぁ〜!!もう!2人とも落ち着いて下さいよ〜!!」

口喧嘩がヒートアップして掴み合いの喧嘩に発展しそうだったので、
僕は慌てて2人の間に入り込み、その事態を収拾した。
さんはこう見えて元攘夷志士ってだけあって腕っ節は相当強い。
白夜叉と並んで戦場の舞姫として恐れられていたとか何とか。
まぁこれは桂さん情報なのであまりあてにならないが、
とりあえずこの2人の喧嘩だけはこの世で最も避けたい事なのだ。

「銀さんもさんもいい加減にして下さい!
 特にさん!照れ隠しなのは分かりますけど、
 もうちょっと素直になって下さい!」
『だ、だって新ちゃん……。』
「そんなツンばっかりのツンデレじゃあ、
 流石の銀さんだって愛想尽かしちゃいますよ!?」

僕がちょっとキツめにそう言えば、
さんはさっきまでの様子からは想像も出来ないほどしおらしくなった。
まぁそれはさんが僕と神楽ちゃんの事を自分の子供みたいに可愛がってくれて、
やること成すこと相当甘いから言うことを聞いてくれたんだろうけど、
その様子を見た銀さんが勘違いしたのか僕の後ろでかなり調子づいてしまった。

「新八の言うとおりだぞ。銀さんにだって堪忍袋くらいあるんだからな。」
「え?ちょ、銀さん……。」
「まぁ俺も鬼じゃねぇし?
 が『ホワイトデーのお返しに銀さんがほしいv』って言えば、
 許してやらねぇ事もないけど?」
「、一発くらい殴ってもいいアルよ。私も相当腹立ったアル。」

まるで絵に描いたように調子に乗る銀さんに、
僕も神楽ちゃんも呆れた目で銀さんを見ることしか出来なかった。

『…………。』
「……??どうしたアルか?堪忍袋の緒が切れたアルか?」
「え゛っ!?ちょ、冗談だって!そんなに怒んなよ〜!」

すっかり黙り込んでしまったさんに、銀さんが情けない声を出した。
神楽ちゃんの問いかけにも答えないなんて、
もしかしてさん、本気で怒ってる……?
万事屋に嫌な緊張が走る中、さんが急に後ろを向いてこう言った。

『きょ、今日だけなら……。』
「え?何て?ちょ、マジで怒ってる?」
『……〜ッ!!今日一日だけだったら、
 銀時貰ってあげてもいいっつってんのよ!!!このハゲ!!!』
「…………え?それって、なっ、え!?」

さんの言葉に顔を真っ赤にする銀さん。
全くこの人は……実際にさんに必要とされたら照れるくせに。
さんも、顔は見えないけどきっと真っ赤なんだろうなぁ。
そんなことを考えていたらさんがドカドカと玄関に向かって歩き始めた。

『アタシ魂平糖のお団子食べたい!!銀時お前おごれ!!』
「えっ、ちょっ……!」
『早く来いよマダオ!今日はホワイトデーなんだから、
 今日一日は銀時がちゃんとエスコートしてよね!!』
「おい、待てよ!エスコートしてほしいなら俺の後ろを歩け!!」
『お前が追いつけ!!!』
「じゃあ全速力で走るなァァ!!!!」

そうやっていつものように言い合いながら出て行った2人を、
僕と神楽ちゃんはやれやれと笑って見送った。
何だかんだ言って、結構いいコンビなのかもしれないなぁ、あの2人。




喧嘩するほど仲が良い

(ほれ、手ぇ繋いでやるよ、しゃーねーから) (別に要らないけど、繋がれてやるよ、しゃーねぇからっ) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ うわあぁぁどうしようこの2人マジ可愛い萌えぇぇ!!!!← ほんと、笑顔動画だったら即座に『なにこれかわいい』タグだよキュン! ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2010/03/14 管理人:かほ