「なぁ。」 『んー?何ぃ?』 アタシは顔を真っ赤にした銀時に軽く返事をした。 今日はお登勢さんから店で余ったお酒をたくさんもらったので、 神楽ちゃんが寝た後、アタシ達は久々に大人2人で晩酌を楽しんでいた。 アタシは現在酎ハイ3本目、銀時はビール缶5本目。 流石にビール5本は呑みすぎなんじゃないかと思ったけど、 さっきから会話もちゃんと成り立ってるし、まぁいいか、なんて軽く考えていた。 でも、それはとんだ大間違いだったということに気づかされる。 「お前いつになったら俺と結婚すんの?」 『……は?』 全然いいわけなかった。 銀時は真っ赤な顔で手に持ったビール缶を見つめながら真剣にそう言った。 あまりにも突然投げかけられたその言葉に、 アタシはポカンと口を開けて銀時の横顔を見つめる。 『い、いきなり何?酔ってんの?』 「はぁ?酔ってねぇよ。バカ言うなコノヤロー。」 アタシが目を丸くして銀時に尋ねると、 銀時はちょっと怒ったような顔をしてアタシの方を向いた。 その目は真っ直ぐアタシの顔を見つめているけど、 いつも以上に垂れ下がり、今にも閉じてしまいそうだ。 本人がどう思っていようが、コレは明らかに酔っている。 また面倒なことになったなぁ、とアタシは密かに肩を落とした。 「俺ずっと言ってんじゃん。と結婚したいって。」 『あー……うん、言われてたね。』 「言われてたねじゃねぇよ。お前俺と結婚する気ねぇだろ。」 『いやいや、あるよ、ちゃんとある。でも、まだ早いって言うか……。』 「あぁん!?20代後半が何言ってやがる!」 『アタシはまだ24歳だ!!!!』 銀時の失言にアタシは咄嗟に反論した。 たかが1歳じゃないかと思ったそこの君、ちょっとそこに正座なさい。 アタシくらいの年頃になるとそのたった1歳でもめちゃくちゃ大きいのよ! 20代前半と20代後半には大きな越えられない壁があるんだからね! ……ダメだ、アタシも相当酔ってるみたい。 『銀時、アンタやっぱ酔ってるよ。今日はもうお開きにしよう。』 「あー分かったよ!俺は酔ってるよ、酔ってますよ! ずーっと前からさんに酔ってます!これで満足か!?」 『いやそういう事じゃなくて……わっ、ヤだっ!ちょっ、銀ッ……!!』 アタシが言い終わる前に、銀時はソファにアタシを押し倒した。 その拍子にアタシが持っていた酎ハイが床に零れたけど、 銀時はそんなものお構いなしにアタシのおでこに軽くキスをする。 『ちょっ、銀時……!』 「オイ、どうなんだよ。」 『なっ、何が!?』 「結婚の話だよ!何年待ってると思ってんだ!!」 完全に酔っ払ってるらしい銀時は 普段からは想像も出来ないような真面目な顔でアタシに迫ってきた。 眉と目の間は全然離れてないし、なんか、昔の銀時みたい……。 そう言えば、初めて結婚してくれって言われたのって、 攘夷戦争に参加する前だったっけ……。 「この戦争が終わったら、俺と結婚しろよ」なんて 死亡フラグバリバリの台詞を吐いたもんだから、 その場に一緒に居た晋助と小太郎が大爆笑していた。 今までずっと一緒に居たから時間の感覚が狂ってたけど、 もうかれこれ……5年?くらいは銀時を待たせちゃってるんだ……。 『あ、あの……。』 「あぁん?」 『銀時、ちょっと近いかな、なんて……。』 「はぁ?俺とお前の間に距離なんて必要ねぇだろ。 むしろ今すぐ合体してぇんだよ。このまま既成事実でも作っちまうか。」 『でっ、できちゃった結婚なんてアタシ許しません!』 言いながらキスを迫ってくる銀時に、アタシは咄嗟に銀時の顔を押しのけた。 それに不満そうに眉間にしわを寄せる銀時はもう万事屋の銀時じゃなくて、 昔アタシが戦場で心を奪われた、白夜叉である銀時だった。 その真面目な顔に、ドS感たっぷりの視線に、アタシの心臓がうるさく鳴り響く。 あぁもう、銀時って酔ったらここまでタチが悪いのか……! 本当にカッコいい。何コレ同一人物? 別にドMってわけじゃないけど、銀時のちょっと冷徹な、 でも情熱的な視線にさっきから心臓が高鳴りっぱなしだ。 あーもう、こんな事になるんだったら2人っきりで呑むんじゃなかった! 『おっ、落ち着いて話し合おう!とりあえず近い! そしてそんなに真面目な顔で迫って来ないでっ……!!』 「本気で落としにかかってんだよ。ちったぁ素直になれよ。」 アタシが恥ずかしさのあまり顔を背けると、 銀時はそんなことお構いなしにアタシの耳元に顔を近づけ、 そして普段からは想像も出来ないほど甘い声でアタシの名前を呼んだ。 「なぁ、……。」 『ひゃっ!?ちょ、イヤッ!耳はダメ……!!』 「お前が逃げっからだろーが。」 『やっ、銀時ッ……!神楽ちゃんがすぐそこに……!!』 「関係ねぇよ……。」 『……ッ!!』 嫌がるアタシの両腕を掴み、むりやり首筋に顔を埋める銀時に、 アタシは思わず硬く目を瞑って体を強張らせ、色んな事を覚悟した。 あぁどうしよう、このまま子供なんか出来て本当にデキ婚とかになったら。 でも相手は銀時だし……いやいや! 今はこんなにカッコいいけど 普段はちゃらんぽらんのマダオなんだからね!騙されるな!! あぁでもこのまま流されちゃいそう……銀時の色気マジ半端ない。 いつもこんな風に真面目だったら、アタシだってすぐ結婚でも何でも……。 首筋に感じる銀時の吐息に身悶えながらそんな事を考えていると、 アタシのうるさく鳴り響く胸の鼓動に混じって 「ぐぅ、」という気の抜けた音が聞こえてきた。 その音にアタシは一気に現実へと引き戻される。 『……は?』 あまりの衝撃で完全に酔いが醒めてしまった頭を銀時に向けると、 銀時はアタシの肩の上で幸せそうに寝息をたてていた。 その寝顔を見た瞬間、ドキドキしていた自分が一気に馬鹿らしくなった。 『……ったく、何だってのよ……。』 人の上に覆いかぶさって気持ちよさそうに眠る銀時に、 アタシは溜息と共にそんな言葉を吐き出した。 そしてしばらくしてからアタシは銀時の頬っぺたを軽くつねり、 ううん、と呻き声を上げた銀時の耳元でそっと囁いた。返事は当分お預けね
(あっれぇ……?なぁ、俺昨日お前に大事な話してなかった?) (さぁ?銀時すぐ酔いつぶれちゃったから知らない) (あれー?そうだっけなぁ……なーんか忘れてるような……) (……バカ) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 銀ちゃんってホントは相当カッコいいよねっていう話。 でも最後は締まらないのが銀ちゃんクオリティ。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2011/01/15 管理人:かほ