しょうせつ

ゼ○シィのCMのようなBGMが鳴り響く教会で、
俺は白タキシードに身を包み、は真っ白なウェディングドレスを身に纏っていた。

「おめでとネ!」
「おめでとうございます、銀さん。」

ちゃんとした服を着てちょっとはマシに見えるガキ共にそう言われ、
は照れたように頭をかいた。

『えへへ……なんだか恥ずかしいね。』
「なに恥ずかしがってるの。もっと嬉しそうにしなさいな。」
「そうだぞちゃん。今日はめでたい日だからな。」

お妙と九兵衛にそう言われ、は嬉しそうにはにかんだ。

「アンタ達、いつまでここに居るつもりだい?もうすぐ式が始まるよ。」
「あっ、はーい。」
「じゃあちゃん、また後でね。」
「ドレスにつまづいてこけちゃダメヨ。」
『こけないよ!』

ババァの一言で新八たちは一足先に式場へと向かった。
その後姿を、俺たちはお互い何を言うでもなくただしばらく眺めていた。

『そう言えばね、近藤さんたちが羞恥心踊ってくれるんだって。』

新八たちの姿が見えなくなってから、が思い出したようにそう言った。

「はぁ?羞恥心?何それ披露宴で?」
『そうそう。聞いてない?』
「初耳だけど。ってか俺披露宴の名簿見てねぇわ。」

俺は言いながら待機場所へと歩き始めた。
するとは『もう!』と言いながら俺の隣に引っ付いてくる。

『あれほど見といてって言ったのに!』
「俺は指輪選ぶのに忙しかったのー。」
『ちょっと見るだけじゃない!銀時のバカ!』

そう言ってそっぽを向いてしまったに、俺は情けない顔をした。

「ちょ、悪かったって。なにもココで怒らなくてもいいだろ。」
『知らない。』
「オイ……。」
『知らない!』

どうやら本格的に機嫌を損ねてしまったらしく、
俺の隣を歩いていたは歩く速度を早めてスタスタと前を行ってしまう。

「ちょ、!怒るなって!ちょっとは見たよ!ちょっとは!」
『へぇー。』
「ホントだって!えぇっと、あっ、ヅラは桂ップ踊るんだったよな!」
『一番上に書いてたもんね。』
「一番下も覚えてるって!確かアレだ、
 高杉とグラサンと辰馬とお通ちゃんでバンドしてくれるんだっけ?」
『名前だけ?』
「楽器まで覚えてねぇとさんの機嫌は直りませんか!」

俺がオロオロしながらそう叫べば、突然が『あはは、』と笑いだした。
そしてくるりと後ろを振り返り、いつもより一層可愛らしい笑顔で俺を見た。

『嘘だよ。そんなに怒ってない。』
「テメェ……驚かせんなよ。」

俺がしてやられたと言いたげな表情で言えば、
はまたケラケラと笑って俺の腕に抱きついてきた。
気づけば俺たちはもう式場の入り口に居て、
中からは新郎新婦の登場ですという声が聞こえてくる。

『あっ、また子ちゃんの声だ。』
「そう言えばあの変態とパンツのガキが司会だっけか。」

俺たちは顔を見合わせて笑いあった後、ゆっくりと式場の中に入っていった。
目の前に広がった光景は、右に左に、どこに顔を向けても見知った顔ばかりで、
時々俺を指差して爆笑してる奴等以外は全員穏やかな顔をしていた。

「アイツ等後でブッ殺す……。」
『ちょっと止めてよ、折角の結婚式なのに。』

俺が呟くと、は笑いながら俺を諌めた。
そして神父の前に到着し、お決まりの「誓いますか?」の一言に、
俺たちは迷わず誓いますと言葉を返す。

「では、指輪の交換を。」

その言葉に俺たちは向かい合い、俺はの手を取った。
右手には悩みに悩んだ結婚指輪がすでにスタンバっている。
新婦の親族席では母への手紙を待たずしてババァがもう既に感極まって泣いていた。
後での読む手紙に泣かされるっつーのに、気の早いババァだ。
俺はそんな事を考えつつ、の薬指に指輪をはめようとする。しかし、

「あ……あれ?」

ガタガタと震える自分の手に、俺は思わず苦笑した。

『ちょっと銀時?』
「待って待って、すぐはめるから。」

俺は深呼吸をしてから再度指輪をはめようと試みた。
しかしやっぱり手の震えは止まらず、指輪はなかなかの薬指に納まらない。
そんな事をしているうちに、とうとう式場内がザワつき始めた。
俺の耳にはあちこちから聞こえる
「何してんのアイツ」「さっさとしろ」の言葉が深く突き刺さってくる。

「ちょっと銀さん!何してるんですか!」

たまらず叫んだ新八に、俺は冷や汗ダラダラでぎこちなく振り返った。

「だ、ダメだ……震えが止まらねぇ……!!」
「はい!?」
「駄目だ、頭が混乱してきた!!が俺の嫁さん!?冗談だろ!?
 こんな奇跡が本当にあっていいのか!?コレ実はドッキリなんじゃねぇの!?」
「わざわざ鬼兵隊まで呼んどいてドッキリなわけないでしょーが!」

叫ぶ新八の隣では神楽がもんの凄い顔をして俺を睨んでいた。
そして式場内からも同じような視線がチクチクと……。
あぁぁダメだ!!今俺パニック!何で震えが止まらねぇんだ俺の腕ェェ!!!!

『銀時。』

真っ白になった脳内に、の声だけがやけに綺麗に響いてきた。

『アタシと結婚するの嫌なの?』
「バッ、んなわけねぇだろ!!
 むしろ今銀さん有頂天だからね!!アドレナリン出まくりだからね!!」
『じゃあさっさと指輪ちょーだい!じゃないとどっか飛んでっちゃうから!』

拗ねたようにそう言って左手を差し出したに、俺は思わずときめいてしまった。
何だよコイツ、むちゃくちゃ可愛いことしやがって……。
気がつくと、腕の震えは治まっていた。

「と、飛んでくなよ……。」
『じゃあ早く重りをちょうだい?』

言いながら微笑むに釣られ、俺も自然と口角が上がっていた。
そしての左手の薬指に指輪をはめようとした次の瞬間、
俺の目の前には汚い我が家の天井が姿を現した。

「夢オチかいィィィ!!!!!」

その日、俺のテンションは最悪だった。




坂田銀時の華麗なる妄想

(はぁ……夢ならさっさと指輪交換してちゅーくらいすりゃよかった……) (アンタ一体どんな夢見てんの……) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ おバカな銀ちゃんの妄想シリーズ第一弾(笑) ちなみにバントの担当はベース:万斉、ボーカル:お通ちゃん、 ギター:晋ちゃん、ドラム:辰馬の予定でした。出す余裕なかったけど。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2011/07/31 管理人:かほ