しょうせつ

「僕だけおいて勝手にいっちゃう万事屋なんて、
 受け止められるワケないじゃないかァ!!」
『あっ、新ちゃん!!』

叫んで出て行った新八に心配そうに声をかける。
上では神楽が同じく新八の後姿を心配そうに見つめていた。
しかし俺は今にも新八の後ろを追いかけたい気持ちでいっぱいだった。
心配でとかそんなんじゃねぇよ、一緒に叫んで駆け出したいんだよ。

それはなぜかって?
だって俺も2年後の世界で取り残された方の人間だから。

『新ちゃん……一体どうしちゃったんだろう……。』

困った顔でそう言ったは見た目こそ2年前と一緒だが、中身は2年後の人間だった。
いや、正直なところ俺もよく分からない。
確かに「2年後」というワードを口にしてはいたが、
別段どこかが変わったとかそういうのはなく、至って普通のだったからだ。

俺は最初、も俺と同じでみんなに合わせてるだけかと思っていた。
だってに向上心とか絶対ないと思ってたから。
神楽はナイスバディになりたいと思ってたからあんなんになったんだろうし、
ヅラも朝っぱらから「取ったどぉぉ!!」って万事屋に押しかけてきたし、
九兵衛もなんかまたややこしいことになっていると聞く。
ゴリラとお妙に関しては何がどうなってあぁなのか皆目見当もつかない。

とりあえず、は俺と一緒で今の生活に満足していると言うか、
もっとこうなりたい!みたいな、そんな向上心ないと思ってたのに、
どうにも「2年後」というワードの出し方が自然すぎると言うか、
俺みたいにアウェー感丸出しじゃないと言うか、普通に2年後と言うか……。
とにかく、は雰囲気などが完全に2年後の住人なのだ。

「銀ちゃん、私ちょっと出かけてくるネ。」
「あ?あぁ……いってらっしゃい。」
『神楽ちゃん、気をつけてね。』

の言葉に神楽(大)はにっこりと微笑んでイボ春と一緒に歩き出した。
その後姿をしばらく見守り、俺たちもとりあえず万事屋に戻る事に。

『神楽ちゃん、新ちゃんを探しに行ったのかなぁ?』
「さぁな。酢昆布でも買いに行ったんじゃねぇの?」
『もう、ちょっとは心配しなさいよ。銀時そーゆーところ全然変わってないね。』

当たり前だ。だって俺は2年前の銀時なんだから。
そんなことを考えつつ、俺は所定の位置でジャンプを読み始めた。
不思議なことにジャンプだけは2年経っていないようだった。
ちゃんと先週号の内容と繋がってる。何で?俺への配慮か?

『さーって、掃除でもしようかな。』

俺はジャンプから目を離し、意気込んで袖をまくったに「オイ、」と声をかけた。

「折角2人だけなんだしよぉ、掃除よりもっと楽しい事しよーぜ。」

言って俺がニヤリと笑えば、は『もう!またバカなこと言って!』と怒る。
……と、いつもの流れで思っていたんだけど、あれ?
なんか……照れてる?

『も、もぅ……銀時のバカ……。』

真っ赤な顔で恥ずかしそうにそう言いながらモジモジしているに、
俺のアナログスティックがジョイスティックへと進化した。
えっ、何?何あの可愛い反応。ってこんなに可愛かったっけ?

いつもだったら真っ赤にはなれど、
『バカなんじゃないのこのド変態!!』と言って洗濯物を干し始めてもおかしくない。
それなのに何で目の前のはモジモジしてんの?何であんなに可愛いの?
これはもしや2年後の影響か?胸が……胸が、張り裂けそうだ!!

俺はバクバクとうるさく鳴り響く心臓を片手で押さえつけ、
荒くなる息を整えつつに声をかける。

「な……何その反応……。」
『ぎ、銀時が変なこと言うからでしょっ。恥ずかしいじゃん……。』

ガタッ

俺は思わず立ち上がった。
だってアレ、俺を誘っているとしか思えない!!

「え、何それ何その可愛い反応。お前もしかしてそれが向上心?」
『は?何?向上心?』

突然立ち上がった俺に驚いた顔をしているもこれまた何だコレ可愛すぎるだろ。
我慢の限界がきた俺はドカドカとの方に歩み寄り、
俺の突然の行動にオロオロしている可愛いの肩をガシッと掴んだ。
するとは一瞬ビクッと体を震わせ、
上目遣いで恐る恐る俺の顔を見たかと思ったらすぐに顔を逸らしてしまった。

辛 抱 た ま ら ん……。」

俺は照れるにゆっくりと顔を近づけた。
するとは嫌がりもせず、ただ恥ずかしそうに固く目を瞑った。

『ちょっ、やだっ、銀時……。』

プツン。
そのの声に、俺の何かが切れた。

「ーッ!!!!!」
『きゃー!?』

気がつくと俺はを押し倒していた。

「いつもはツンツンツンデレのくせに今はもうデレしかねぇじゃねーかぁぁ!!
 辛抱できるか!!ーッ!!」
『やんっ!ヤだちょっと銀時……!!』

イケる!!
の反応に俺がそう確信した時、万事屋の玄関が開く音がした。

「銀ちゃーん、エチケット袋忘れ……。」

神楽の言葉が途切れたと同時に、俺の顔が真っ青になった。

「あ、あの……神楽ちゃん?これはお互いの合意の上で……。」
「お前っ、私のに何やってるアルかァァァ!!!!!」
「ぎゃああぁぁぁ!!!!」

結局、俺がデレデレを襲う前に世界は元に戻ってしまいましたとさ。




私を2まで連れてって!

(だーくそっ……例えイボでもなら……あーオシイことしたなぁー!) (アンタこないだから何言ってんの……?) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ ちなみにヒロインさんの向上心は「素直になりたい」でした。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2011/08/19 管理人:かほ