『はぁ?銀時が監獄にブチ込まれた?』 アタシが呆れたようにそう言えば、新ちゃんと神楽ちゃんは静かに頷いた。 「そうなんですよ。悪徳看守にハメられて……。」 「には言うなって言われてたけど、 まだまだ出てこないみたいだから知らせとこうと思ったアル。」 困ったようにそう言った2人に、アタシは思わず溜息を吐いた。 『それいつの話?』 「一週間前くらいネ。」 『えぇ?そんなに?どーりで最近顔見ないと……。』 「って言うか、さんもしかして本当に気づいてなかったんですか?」 『全く気づかなかった。アタシてっきりさっちゃんに拉致られてるのかと。』 「「…………。」」 アタシの言葉に、2人は同時に顔を見合わせて深い溜息を吐いた。 「とにかく、一度顔を見せてあげて下さい。銀さんきっと寂しがってますから。」 『んー、そうねぇ。無実の罪で入ってるんだもんねー、可哀想か。』 「面会時間は朝の10時からアル。今すぐ行ってあげてヨ。」 『えぇ?今から?』 正直めんどくさいと思ったんだけど、 何故か2人がかりで「「行け!!」」と凄い剣幕で言われてしまったので、 アタシは仕方がなく銀時の面会に行く事となった。 「ー!!!!!!」 ビタァン!ズルズルズル…… 面会室の扉が開いたかと思ったら、 銀時は何を思ったのかガラスに思いっきり飛びつき、 見事なくらいベッタベタにガラスにぶち当たり、下に沈んでいった。 『……久しぶり銀時。相変わらずバカ元気そうでよかったわ。』 アタシが床に倒れている銀時に声をかければ、 銀時は一瞬で回復し、ガバッと顔を上げアタシの顔を見た。 「!!お前何でこんなところに……!?まさか俺を心配して!?」 『新ちゃんたちに頼まれたの。 銀時が牢にブチ込まれて寂しいだろうから会いに行ってやってくれって。 でもその様子じゃ大丈夫そうね。それじゃ。』 「ちょっと待ってちょっと待ってちょっと待って!!!!!!」 アタシが言いながら立ち上がろうとすれば、 銀時はまたガラスにへばりついて大声をあげた。 「なぁそれはねぇんじゃねーのちゃん! 俺たち久々に会ったんだぜ!?もっと何かあんだろーが!」 『いや別に何もないけど……。』 「何でだよ!!お前彼氏が監獄にブチ込まれてんのに何とも思わねぇの!?」 銀時は珍しく泣きそうな顔でアタシにそう怒鳴った。 その姿はまるで彼氏に理不尽な別れ話を切り出された彼女のようで、 アタシは『一体どっちが女なんだか……』と頭を抱えた。 『誰が誰の彼氏だって?まず土俵が全然違うんだけど。』 「俺たちずっと一緒に居たじゃん!それが急に居なくなって “あれっ……もしかしてアタシ、アイツの事……”みたいな!! 急に寂しくなっちゃったみたいな!!そんな展開はねぇのか!!」 『ゴメン、新ちゃんと神楽ちゃんに聞くまで全然気づかなかった。』 「何でだよォォ!!!!お前が泣きながら慌てて会いに来るかと思って わざわざガキ共に口止めしといたのにぃぃ!!」 銀時はそうシャウトした後、ぐおぉと頭を抱え込んでその場に崩れ落ちた。 『アンタってホント中2よね。女が何でも悟ってくれると思ったら大間違いよ。』 アタシがもう呆れたを通り越して疲れた声でそう言えば、 銀時は突然バッと顔をあげ、情けない顔でこう続けた。 「じゃあ俺寂しかったです!ちゃんに会えなくて寂しかったです! だからもうちょっとココに居ろよ! この中バイオハザードだからむさ苦しいんだよぉ!!」 どうやらこの監獄がよっぽど居心地が悪いのか、 あのプライドが変に高い銀時がアタシに向かって「寂しい」だって。 その言葉に驚きつつ、ちょっとだけ可愛いかな、なんて思ったり。 こんなに素直で可愛い銀時初めて見たかも。 アタシはそんな銀時にキュンときて、思わず顔がほころんだ。 すると銀時の後ろに立っていた看守が時計を確認し、 「そろそろ時間だ」と言いながら銀時の元へと近づいてきた。 アタシはちょっと残念かもと思いつつ、 こんなに素直な銀時が見れるならまた会いに来てあげてもいいかな、なんて考えていた。 すると、 「うるせぇぇ!!!!久々の恋人との再会にチャチャ入れてんじゃねぇぇ!!!!!」 そんな銀時の怒鳴り声の後、ゴキッという鈍い音とドカァンという重い音が。 最初の音は看守が銀時に思いっきり殴られた音で、 次の音は吹っ飛んだ看守が壁にめり込んで気絶した音だ。 突然の出来事に、アタシは思わず顔を歪ませた。 『銀時アンタそんなことしてたら刑期延びるわよ……。』 呆れた声でアタシがそう言えば、 銀時はバッとこっちを振り向いてまた情けない顔をした。 「!!お前俺がココ出るまで待っててくれる!?」 『え?いや待たないけど。』 「お前ちょっとは俺に優しい言葉の一つでもかけたらどうなんだよ!! 俺がどんな思いでここに入ってるか!!」 『お友達がたくさん出来たみたいで良かったわねぇ。 でもお母さん面会室を覗き込むお友達は関心しないなぁ。』 アタシの言葉に銀時がハッとして扉を見た。 するとそこにはワラワラと中の様子を覗き込んでいる囚人達の姿が。 実は結構前から中の様子を覗き込んでたんだけど、 アタシは『あれは幻覚だ』と自分に言い聞かせていたのだった。 「テメー等何見てやがんだゴルァ!!」 銀時が凄い剣幕で怒鳴りつければ、 囚人の一人が何故か嬉しそうな顔をしてそそくさと中に入ってきた。 「えっ、えっ?アニキもしかしてその女アニキのツレですか?」 「あぁそうだ!!惚れんなよ!!」 自信満々にそう言い放った銀時に、 アタシは『もうツッコまないからね』と冷たい視線を送った。 しかしその視線は銀時にも囚人にも届かなかったらしく、 一人中へと乗り込んできた囚人君がアタシの方を向いて深々とお辞儀をした。 「っちゃあああっす!!俺アニキにお世話になってます鯱っす!! よろしくお願いします姐さん!!」 『こちらこそよろしくね鯱君。じゃあとりあえず姐さんって呼ぶの止めようか。』 アタシが据わった目でそう言っても鯱君には全く通用しなかったらしく、 「姐さん!!アニキのどこに惚れたんですか!?」なんて変化球を投げつけてきた。 とりあえずアタシは『惚れてねぇよ!!』と全力でツッコんでおこうかと思ったが、 アタシが口を開くよりも先に銀時が鯱君を殴ってしまったので そのツッコミは言えず仕舞いとなってしまった。 「オイてめぇ、俺のに馴れ馴れしくしてんじゃねぇよ。ブッ殺すぞ。」 『アンタこそブッ殺されたいの?誰が俺のだって?』 「さーせんアニキ!!アニキのさんに馴れ馴れしく!!」 『ねぇアンタ達刑期延ばされたいの?ここで暴力沙汰起こすわよ?ねぇ。』 結局アタシの言葉は一つたりとも2人の耳には届かず、 面会時間が長すぎると気づいた看守が面会室にやってくるまで、 アタシはバカ2人の熱血兄弟劇場に付き合わされるはめになったのでした。囚人さんいらっしゃい
(アニキにここまで想われてるなんて、姐さん羨ましいッス!) (俺がこの世で愛した女は、後にも先にもコイツだけさ……) (アッ、アニキィィィ!!!!!!) (ここの囚人はバカばっかりか……) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 監獄篇は鯱とパジャマっ子銀ちゃんがたまらんくらい可愛かったです。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2011/09/12 管理人:かほ