『あー疲れたー!!』 弾けたようにそう叫びながら、アタシは国語準備室のソファに崩れ落ちた。 すると、珍しくちゃんとスーツを着ている銀ちゃんが笑顔でアタシに歩み寄ってくる。 「お疲れさん。ほらよ、ジュース。」 『わーい!銀ちゃんありがと!』 アタシはオレンジジュースを持ってきてくれた銀ちゃんに満面の笑みでそう言って、 ちょっとだけ照れている銀ちゃんからジュースの缶を受けとった。 そしてアタシが缶を開けるのを確認してから、銀ちゃんはアタシの隣に腰掛ける。 今日は銀魂高校のオープンキャンパスで、アタシはそのお手伝いに来ていた。 毎年生徒から何人かボランティアを募って開催されるんだけど、 今年は集まりが悪いからって担任である銀ちゃんにお願いされたのだ。 別に用事も何もなかったし、面白そうだったのでアタシはすぐにOKを出した。 でも銀ちゃんがやっぱり頼んだわけだからって言うもんだから、 こうして特別に国語準備室でジュースをもらっているというわけなのです。 「お前大人気だったなー。」 低い声で面白くなさそうに言った銀ちゃんに、アタシは首を横に振った。 『そんなことないよ。』 「いいやあるね。お前のせいで来年の受験者増えるんじゃねーの?」 『えぇー?それはないよ。 確かにいっぱい可愛いって褒められたけど、みんな言ってるだけだって。』 「そーだといいんだけどな……。」 銀ちゃんはそう呟くと缶コーヒー片手に「はぁ、」と溜息を吐いた。 アタシはそこで初めて銀ちゃんがやきもちを妬いていることに気がついた。 アタシと銀ちゃんは別に付き合ってるとかじゃないんだけど、 お互いに意識し合ってるって言うか、多分もう両想いだと思う。 でも銀ちゃんは何も言わない。きっとアタシ達が生徒と教師だから。 でもそこまで深刻な関係というわけでもなくて、 銀ちゃんは何も言わないけど行動で示してくれる。 例えば、今みたいに国語準備室で2人きりになったり、 放課後に準備室に呼び出されて2人きりになったり、 修学旅行で夜中にホテルを抜け出して2人きりになったり、 2人きりになってばっかりだけど、とにかく何かと2人きりになりたがる。 ちゅーとかはまだだけど、アタシは銀ちゃんと2人きりになる時間が大好きで、 だからセクハラされるって分かっててもほいほいついて行っちゃうのだ。 『銀ちゃん怒った?』 「はぁ?別に怒ってねぇし。」 『ホント?』 「ホントホント。」 銀ちゃんは言いながらアタシから顔を背けてしまった。 どうやらアタシがちやほやされてたのがよっぽど嫌だったようだ。 そんなこと言い出したら銀ちゃんだって女生徒に囲まれてたじゃないか! アタシはそう思ったけど、口に出したら面倒くさいので言葉にはしなかった。 『ゴメンって銀ちゃん。』 「何で謝んの?怒ってねぇって言ってんじゃん。」 『でも不機嫌じゃん。』 「うるせぇ。」 銀ちゃんはムスッとした顔でそう言って、おもむろにネクタイを外し始めた。 その行動がやけに色っぽくて、アタシは思わず顔を赤くする。 男の人がネクタイを外す動作って何でこんなにも色っぽいんだろう。 ネクタイを解く手が大きくてたくましいからだろうか。 まぁ相手が銀ちゃんだからってのもあるんだろうけど。 銀ちゃんの首筋から鎖骨にかけてのラインはいつ見てもエロい。 「…………。」 『……?どうしたの銀ちゃん。』 気がつくと銀ちゃんは外したネクタイをジッと見つめていて、 アタシは小首を傾げながらそう声をかけた。 すると銀ちゃんは「んー、」と生返事をする。 『ネクタイがどうかしたの?』 「いや…………流石に学校で縛りSMはダメだろうなぁって……。」 『その思考回路が既にダメだと思うけど……。』 銀ちゃんの予想外の言葉に、アタシは呆れたように苦笑した。 すると銀ちゃんはゆっくりとこっちに振り向いて、 そして真面目な顔でゆっくりとアタシの腕をネクタイで縛り上げた。 『え!?ちょ、えぇぇ!?何してんの銀ちゃん!!』 慌てたアタシが腕を引っ込めながらそう叫んでも、 銀ちゃんは引っ込めた腕をまた自分の方に引き寄せて冷静にこう言った。 「縛ってちゅーするだけなら……。」 『何で縛るの!?ちゅーするだけでいいじゃん!!』 「え?ちゅーしていいの?」 『いやダメだけど!!』 ちょっと驚いたように言いながら顔を近づけてくる銀ちゃんから顔を逸らし、 アタシは縛られている両腕を銀ちゃんの顔の前に押しやった。 すると銀ちゃんは不機嫌そうに顔を歪め、「じゃあ妥協案、」と言った。 「からほっぺにちゅーとか。」 『えぇー?』 「口にちゅーとほっぺにちゅー、どっちがいい?」 『それならほっぺ……。』 「ん。」 強引な誘導尋問の末、銀ちゃんは自分の頬っぺたをアタシに差し出した。 『えぇぇ?ホントにやるの?』 アタシが困ったようにそう言えば、 銀ちゃんは「ったりめーだろ」とさらに頬っぺたをアタシの方に近づけた。 このままじゃアタシがちゅーしなくても銀ちゃんからアタシの口に激突して来そう。 例えほっぺでも、ちゅーはちゅーなんだからやっぱり恥ずかしいじゃない……。 アタシはだんだん熱くなる顔でしばらくオロオロしていたけど、 目の前では嬉しそうな銀ちゃんがアタシのちゅーを待っているわけで、 これはもう意を決するしかないと思った。 ちゅっ 軽いリップ音をたて、アタシは銀ちゃんの頬っぺたにちゅーをした。 すると銀ちゃんはよっぽど嬉しかったのか、 ちゅーした途端に口元がだらしなくニヤけ始めた。 その嬉しそうな顔に、アタシも何だか幸せな気分。 「あーもうお前可愛すぎっ!」 『わっ!?』 ニヤニヤ顔の銀ちゃんは嬉しさを噛み締めるように目を瞑り、 そしてガバッとアタシに抱きついてきた。 突然のことでビックリしたけど、銀ちゃんの体温が心地よくて、 アタシはそのまま銀ちゃんに体を預けた。 ちょっとヤニ臭いけど、銀ちゃんが幸せそうだから別にいっか。 あっ、でも、腕に巻きついたネクタイは早く取ってほしいかも。甘くて幸せな昼下がり
(あー可愛い。可愛い。可愛い可愛い可愛い!) (ちょ、ちょっと銀ちゃん……可愛い言いすぎ……ちょっと照れる) (んー?“ちょっと”?) (あぁんもう!だいぶ照れるっ!) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 六万打本当にありがとうございました! 先生な銀ちゃんとかもう惚れるしかないですよね。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2011/10/02 管理人:かほ