その事件が勃発したのはラブチョイスで俺と新八が痛い目を見た数週間後のことだった。 俺がもう二度とラブチョイスなんてするかボケェ!と決意し、 DSとゲーム本体を真選組に突っ返して平和な日々を送っていた矢先、 その事件はバタバタと万事屋に駆け上がってきた新八によってもたらされた。君の瞳にラブチョイス
「銀さん!!大変です!!」 「何だァ新八ィ、簡潔に述べろ。」 俺がジャンプを読みながら生返事を返すと、 新八は手に持っていたDSの画面を俺に突きつけ突然 「さんがラブチョイスに出てます!!」と叫んだ。 「何ィ!?」 新八の言葉に俺はガタタッと音を立てて社長椅子から立ち上がる。 いつもなら新八が「ラブチョイス」の名を口にした時点で 「バッキャロォォ新八また性懲りもなくテメェはあぁぁ!!!!」と 鉄拳制裁をお見舞いしているところだが、今回はそうもいかない。 なぜなら、「ラブチョイス」に引き続き「」という名前が出てきたからだ。 「なっ、何でがラブチョイスに……。」 新八の手の中にあるDSを覗き込めば、 確かにその画面の中にはそっくりの女が微笑み佇んでいた。 「それが僕にもさっぱり……。近藤さんが今日家に来て教えてくれたんです。 あのラブチョイスの続編が今日出たらしいんですけど、 そこにさんそっくりのキャラクターが居るって。」 「あのゴリラまだこんなバーチャルモンにハマってんのか。」 ほとほと呆れる童貞ゴリラだと罵り倒してやりたいが、今はそれどころではない。 目の前のゲーム画面に自分の惚れた女が佇んでいるのだ。 しかも、恋愛ゲームの攻略キャラとして。 これ以上の事件がこの世に存在するだろうか。 「さっきさんでゲームを始めてみたんですけど、 どうやらこのさん、ツンデレ属性みたいなんですよね。」 新八が言いながらゲーム画面を操作すれば、 ゲームの中のは俺たちが普段聞いているの声で喋り始めた。 その言動も、顔も、表情も、声も、性格も、見れば見るほどそっくりだ。 「オイオイ、洒落になんねぇくらいそのままじゃねぇか。」 「そうなんですよ。外見や声だけじゃなくて、 中身までさんそっくりのキャラクターなんです。 しかも近藤さんの話によれば、ラブチョイス2の中では一番人気のキャラらしいですよ。」 「オイオイオイオイ……。」 自分の女(予定)が世界中の男にいいようにされているのが癇に障るが、 しかしこうして自分の前に恋愛ゲームの攻略キャラとして出てこられるのは悪い気がしない。 現実のは昔から食えない奴だが、 このは最終的には俺の彼女になるようにプログラミングされているのだ。 それはそれでオイシイ話だと、俺の中で矛盾した気持ちがごちゃごちゃになっていた。 「銀ちゃん、ただいまー!」 そこにタイミングよく買い出しに出ていたと神楽が帰宅してきた。 俺と新八はゲーム画面から2人に視線を移す。 すると帰ってきたがゲッソリとした様子で俺たちの元に歩み寄ってくる。 『ねぇ銀時聞いてよー、なんか町中の人からニヤニヤした目で見られるんだけど……。』 「さん、それきっとコレのせいですよ。」 『えぇ?』 新八の言葉にも一緒になってラブチョイス2の画面を覗き込んだ。 『ゲッ、何コレ、アタシ?』 「どうやらラブチョイスの新作に さんそっくりのツンデレキャラが追加されたみたいなんです。」 『えぇー?』 が何とも言えない表情でゲーム画面をまじまじと見つめる。 そりゃ自分そっくりのキャラが恋愛ゲームに登場したら複雑な心境になるわな。 「新八、ちょっと動かしてみてヨ。」 「いいよ。声とか言動もそっくりだからビックリするよきっと。」 新八がそう言いながら画面のをタッチペンでタッチする。 するとがやはり現実のそっくりの声で喋りだした。 「うわっ、本当にそっくりネ。」 『なんか気持ち悪い……。』 「さん、何か心当たりとかありませんか?」 新八の言葉に、は『んん〜?』と首を傾げた。 ここまでそっくりなキャラを作り出す為にはを知る必要がある。 しかも声までそっくりときているのだから、 と面識のある人物が関わっていると考えて良いだろう。 『あー……そう言えば前に変な社長に街中でいきなり 「YOU、イイネ!」って言われたことが……。』 思い当たる節があったようで、が眉間にしわを寄せながらそう言った。 その言葉に、新八と神楽が声を揃えて「それですね」「それアルな」とため息を吐く。 どうやらラブチョイス製作会社の社長に気に入られた過去があったようだ。 それでこんなキャラクターが生まれてしまったと。 「まぁそっくりと言っても所詮作りもんだしなぁ。 いくらなんでも一回会ったくれーでの性格まで反映出来るとは思えねぇよ。」 俺がそう言いながら新八からDSを取り上げれば、 新八は「でもツンデレキャラですよ?」と異議を唱えた。 「バッカお前、にデレなんてねぇだろーが。」 『あるよ!人聞きの悪い!アタシだってデレる時くらいありますー!』 「あー、はいはい。」 の言葉を受け流しながら俺はゲームの電源を一度切った。 そして再度電源をつけ、今度はニューゲームをタッチペンでタッチする。 “あなたの名前は?”なんてお決まりの台詞をさっさとやり過ごし、 俺はさくさくとゲームを進めていった。 “あっ、” 街中で遭遇した設定のがやはり現実のそっくりの声でそう言った。 そしてゲーム開始から3分ほどが経過した時、やっと主人公の名前を呼んだのだ。 “銀時じゃない!” のその台詞の直後、後ろでゲーム画面を眺めていた3人が冷ややかな目線を俺に浴びせた。 続く .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ とんでもなくアホなお話、始動です! ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2013/04/05 管理人:かほ