3人の冷ややかな目線を後ろに感じつつ、俺はさくさくとゲームを進めていった。 いくつかの選択肢を通過してゲームを進めていくと、 どうやらこの主人公との関係性はまだ知り合いの域であるらしいことが分かった。 たかがゲームなので過去の設定は曖昧だが、 とりあえず旧知の仲であることは決まっているらしい。 “そういえば、銀時はこれからどこ行くの?” 世間話が一段落し、話を変えようとが俺にそう話しかけてきた。 いや、正確にはゲームの中のがプレイヤーに対して決められた台詞を喋っているだけだ。 しかし、その声や喋り方が本物のそのものであるため、 俺は実際にに話しかけられているかのような錯覚に陥る。 「わぁ、話し方までそっくりアル。」 「まるで本当にさんが話しかけてきたみたいですね。」 「こ、こんな喋り方なんてありふれたもんだろ。」 俺が内心ドキドキしながら話を進めると、画面に3つの選択肢が出現した。 一.ピリオドの向こうまで。 二.お前とそこの結婚式場まで。 三.ソープまで。 「何ですかこの不安しかない選択肢は。」 「明らかに三が地雷ネ。」 「いや三どころか地雷埋まってない場所が見つかんないんだけど。」 スタッフの盛大な悪ふざけとしか思えない選択肢に 新八と神楽が妙な顔をしてツッコミをいれる。 一はまだセーフだが、二と三は明らかにアウトだ。 三に関してはもはや意味が分からん。恋愛ゲームに出てきていい選択肢じゃねぇだろコレ。 「、お前ならどの選択肢がいい?」 こういう時はモデルになった人間に訊くに限る。 ということで俺がに選択権を与えれば、 は『えぇ?アタシ?』と困ったような声を出した。 『んんー……、アタシだったら一番かなぁ。二番は恥ずかしいし、三番は論外だし……。』 「じゃあ試しに二番いってみっか。」 の『ちょっと!』という声を無視して俺はタッチペンで二番の選択肢をタッチする。 すると画面の中のが顔を真っ赤にしながら “は、はぁ!?アンタ何言ってんの!? 頭おかしいんじゃないの!?バーカバーカ!!” と少し上ずった可愛らしい声で反応してきた。 「あっ、なんかそれっぽいですね。」 『なんかヤだなぁ……。』 ゲームの中のの反応に新八とがそんなことを言っている中、 俺はこれ以上ない無表情でバタンッとDSを閉じた。 「あっ、ちょっと銀さん、何してるんですか。」 「銀ちゃん!私続きが気になるネ!」 俺が突然ゲームを放棄したのでガキ共がそんなことを騒ぎ立てたが、俺は聞く耳持たなかった。 すると俺の様子がおかしいことに気づいたのか、 が『銀時、大丈夫?』と俺の顔を覗き込む。 『やっぱり知り合いが恋愛ゲームに居たら気持ち悪い?』 「……たらヤバい。」 「え?」 ボソッと呟いた俺の言葉が聞き取れなかったのか、がコテンと首を傾げた。 「このままやり続けたらハマりそうでヤバい。」 思わずゲンドウポーズでそう言った俺に、 たちは『「「はぁ?」」』と怪訝そうな顔をした。 『アンタこないだのピン子で耐性出来たんじゃなかったの?』 「だってお前、これまんまじゃん。空想のキャラじゃないじゃん。 このままプレイし続けたら絶対に前よりもっと酷い事になる。」 『何で?実際に居るからこそハマらないんじゃないの?』 「バッカお前ッ、こっちのは恋愛ゲームの攻略キャラなんだぞ!? お前は全然デレなくてもコイツは一定条件を満たしたら急にデレてくんだよ!! ある日突然俺の彼女になっちまうんだよ!!デレの嵐なんだよ!! んなもん耐えられるわけねぇだろーが!!!!」 俺が机をバンバン叩きながらそう力説すると、 新八と神楽が「銀さん……」「銀ちゃん……」と まるで可哀相なものを見るような目で俺を見つめてきた。 に至っては何とも言えない表情をしながら、しかし確実にドン引きしていた。 『ど、どう返していいのか分かんない……。』 「俺もこの高ぶった気持ちをどこに持っていけばいいのか分かんない……。」 とりあえずこれ以上は危険とみなし、俺たちはDSの電源をそっと切った。 「じゃあコレは僕が持って帰りますね。」 「待て新八。」 俺はと神楽が台所にスーパーの袋を持って行ったのを見計らい、 DSを懐にしまおうとしてる新八を制止した。 「俺にはお前をその邪悪なゲームから守る義務がある。」 「…………。」 至って真面目に言い放った俺を、新八は可哀相なものを見る目で見下してきた。 そしてゆっくりと懐からDSを取り出し、驚くほど低い声でこう言った。 「アンタ、さんを攻略したいだけでしょ……。」 新八の冷たい視線を浴びながら、俺は差し出されたDSをそっと受けとった。 続く .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 銀ちゃんがとても残念なイケメンになったのは不可抗力です。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2013/04/12 管理人:かほ