「オイ、お前今日が何の日か分かってんだろうな。」 『は?』 アタシは銀時のいきなりの問いかけに思わず間抜けな声を出してしまった。 そして何事かと思いながらもジャンプを読んでいた手を止めて後ろを振り返ると、 そこには白いタキシードに身を包み髪の毛をオールバックにしている銀時の姿が。 あまりの衝撃に、アタシはしばらく言葉を失った。 『……何してんのアンタ……。』 「何ってお前、やっぱり忘れてやがったのか。」 銀時はそう言って溜息を吐きながらおもむろにアタシの横に腰掛けた。 忘れてたって何?誰かの結婚式? いやでもそれじゃあ銀時が白タキシードの意味がよく分かんないし……。 もしかして銀時が結婚するの?誰と?さっちゃんと?お登勢さんと? 「オイ、お前いまバカなこと考えただろ。」 アタシの考えていることが分かるかのように、 銀時はそう言いながらアタシの顔をじとぉっと睨んできた。 『えっ?いやいや!全く考えてないよ!?』 「ったく……今日はプロポーズ大作戦の日だろーが。」 『プロポーズ大作戦?』 溜息混じりに放たれたその一言に、アタシは一瞬で全てを理解した。 『えっ、マジで?お前等まだそんなバカなことやってんの?』 「バカなことだと思うならさっさと終わらせろや!! 俺だってこんな格好で毎回お前にアタックすんのは飽き飽きなんだよ!!」 思わず言ってしまったアタシの言葉に銀時がウガー!と怒鳴りつけてきたので、 アタシは『あはは、』と苦笑しながらまぁまぁ、と銀時を抑えつけた。 さっきから話に出ている“プロポーズ大作戦”とは、 銀時、小太郎、辰馬、晋助の4人で四年に一回行っている本当に下らない行事だ。 本人達はワールドカップのような認識なのか、 この日がやって来ると他の事は一切忘れて行事に本気で取り組んでいる。 内容は至ってシンプル。 今日中に4人のうち一番最初にアタシをオトした人が勝ち。 オトすとはつまりアタシと結婚を前提にお付き合いを始めるということ。 だからこの行事は優勝者が出た時点で終わりを迎えるのだけれど、 こんなバカげた行事で結婚相手を選ぶなんてバカなことをしたくないアタシは、 毎年適当に参加してはおバカさんたちをあしらって全員引き分けにしているのだ。 「今年でコレも3回目だぜ?いい加減に腹くくれよ。お前ももういい歳なんだから。」 呆れたように言う銀時に、アタシは『一言多いわよ!』とチョップをかましておいた。 事の始まりは、攘夷戦争中に辰馬が言い出した一言。 「は少々無鉄砲なトコロがあるきにのー。 いつも肝の据わっちょるワシと一緒におるんがピッタリじゃと思うがよ。」 そう言って微笑みながらアタシの手を取った辰馬に、 銀時と晋助が「「その手を離せ毛玉!!」」と斬りかかり、 その勢いで「誰がに一番ふさわしいか」という口喧嘩になり、 結果的にこのプロポーズ大作戦が行われることになったのだ。 その日が記念すべき第一回目。 そして4年前に第二回目を実施し、今年がその三回目。 さすがにみんな忘れてるだろうと思ってたし、アタシも完全に忘れてたんだけど、 どうやら男達の戦いはまだまだ終わっていなかったようだ。 『アンタ達まだアタシに言い寄るつもりなの?いい加減に飽きたでしょ。』 蝶ネクタイを直している銀時にアタシが呆れた声で言えば、 銀時は目線はそのままで「だからさっき飽きたって言ったじゃねーか」と吐き捨てた。 『じゃあもう止めればいいのに。』 「バッカお前、プロポーズ大作戦には飽きたけど お前のことはまだ好きに決まってんだろーが。」 銀時が真顔でアタシに向かってそんな事を言うもんだから、 アタシは思わずキュンときてしまって咄嗟に顔を伏せた。 やっべぇぇ!何今の銀時!カッコよかった!さらっとカッコよかった!! 何なのこの銀時、今日はやけに気合入ってるじゃない! さっき『うっわ髪型ww』と思ったオールバックも心なしかカッコよく見えるわ! 何コレ!プロポーズ大作戦マジック!? 『でっ、でも、他の3人はどうか分からないし! ってか晋助が参加するわけないじゃん!あいつテロリストだし!』 「知らねぇよ、んなもん。参加しねぇ奴は不戦敗だ。」 銀時が興味なさそうにそう言った次の瞬間、 突然チャイムの音が鳴り響いて「お届けものでーす」という声が聞こえてきた。 あまりのグッドタイミングにアタシと銀時は顔を見合わせ、 とりあえず玄関に出てその配達物を受け取ることにした。 『うわっ!?何コレ!バラの花束!?』 その配達物は立派なバラの花束で、思わずアタシは大声を出してしまった。 銀時も突然届いたバラの花束に驚いていたけど、 ちゃんと奥から判子を持ってきて捺印をし、 帰っていく宅配のお兄さんに軽く手を振っていた。 「オイオイ……何だそりゃ。辰馬か?」 玄関を閉めながら銀時が呆れたようにそう言った時、 アタシは花束の中にメッセージカードがあることに気がついた。 そしてそのメッセージカードを取って中身を開けると、そこにはこんな一言が。 “昼過ぎにはそっちに着く 4年分の愛を囁いてやるから覚悟しとけ 晋助” 『晋助だった!!晋助やる気満々だ!!』 「何やってんだあのテロリスト!!上等じゃねーか!今年こそは俺が優勝する!!」 まさかの演出(?)にアタシ達が玄関先で騒いでいると、またチャイムの音が。 「すみませーん、お届けものです。判子お願いします。」 「はいはい、次は誰ですかねっと。」 銀時はまた宅配のお兄ちゃんに手を振って、届いた荷物を見下ろした。 それは結構大きめの高級そうな黒塗りの箱で、宝箱のような長方形をしていた。 「俺が開けるぞ。」 『うん、お願い。』 バラの花束で両手が塞がっているアタシに代わり、銀時が箱を開けた。 すると中からはこれまた高級そうな綺麗なウェディングドレスが出てきて、 中にはこんなメッセージカードが。 “昨日飲みすぎてしもうたき、到着は昼になりそうじゃ 今年こそはにコレを着てもらうきに、覚悟しとーせ 辰馬” 「上等じゃねぇか!!このドレスは必ずや俺たちへの結婚祝いにしてくれる!!」 『って言うかホントどうでもいいコトばっかり覚えてんのねアンタ達……。』 4年に一回しかないこの行事のことをちゃんと覚えていることに呆れつつも感心し、 アタシはウガー!と吼えている銀時を見つめながら深い溜息を吐いた。 するとまたしてもチャイムの音が万事屋に鳴り響く。 「お届けものでーす。」 「はい判子。」 慣れた手つきで銀時が宅配のお兄さんを見送る中、 アタシは届いた大きめのダンボール箱を見つめて小首を傾げた。 『この流れだと小太郎だけど……何でまた宅配便?』 「なんだよ、アイツまで二日酔いか?こっちに住んでんだから直接くりゃいいのに。」 そんな事を言いながら銀時が箱を開けると、 羽織袴に身を包みダンボールの中で三角座りをしている小太郎と目が合った。 「荷物の中でスタンバってました。」 「『どんだけ原作に忠実なんだテメーは!!』」プロポーズ大作戦、開始!
(実はエリザベスの中から登場するのと迷っていたのだがな) (そんなことどうでもいいっつーの!) (あぁ……アタシ頭痛くなってきた……) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 攘夷でドタバタするお話が大好きなのです! ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2011/07/24 管理人:かほ