しょうせつ

「お前が俺を呼び出すなんて珍しいこともあるもんだなァ。。」

作戦決行の日の午後6時、は町外れにある古びた港に高杉を呼び出していた。
俺達は万が一に備えてそれを物陰からこっそり見守る係だ。

『実は、今日は銀時に内緒で来たの。』
「ほぅ……?どーした。心変わりでもしたか?」
『うん……アタシ、やっぱり松陽先生を奪ったこの世界を許せない。』

よく女は女優だというが、も例外ではなかったようだ。
どこからそんな真剣な表情が出て来るんだと言いたいくらいの名演技。
一緒に作戦を企てた俺達ですら、
「実はアイツ裏切ったんじゃ……」と思うほどの演技力だ。

そんなの名演技にすっかり騙されたらしい高杉は、
いつものように「ククク……」と笑いながらの傍に歩み寄った。
は女の割には身長が高いので、高杉との身長差はほぼない。

「まさかお前から俺のところに来るなんて思わなかったぜ。」
『アタシもまさかここまでバカだとは思わなかった。』

ガポッ!

「「「えぇっ!?」」」

の予想外の行動に、
物陰で隠れていた俺達は思わずその場に立ち上がり、大声を出してしまった。

しかしそれも無理はない。
だって、俺達の作戦内容は
“高杉を油断させて気づかれないように薬を飲ませる”だったのに、
今が行っている内容は
“高杉の口に無理やり薬ビンを突っ込んで無理やり飲ませる”になってるんだから!!

「ええぇぇぇ!?アイツ何してんのォォ!?」
「しまった……!!が短気で荒っぽいことをすっかり忘れていた……!!」

あまりの衝撃に俺とヅラが困惑していると、
冷静に様子を見ていた辰馬が「いや、いけるかもしれん……!」と呟いた。

「ほれ、見とーせ!が高杉を組み敷いて無理やり飲ませゆう!」
「あぁ!!飲ませてるな!!傍から見たら虐めだよなアレ!!完全に虐めだよな!!」
「見ろ銀時、高杉が全て飲み終わるぞ。」

俺達が混乱している間にもは高杉に無理やり薬を飲ませ、
とうとう薬ビンの中身が全てなくなってしまった。
っていうかそもそもあの薬怪しすぎる試作品だから
飲ませるのはちょっとだけでいいって言ってたのにアイツは!!
結局俺達の計画総無視じゃねーか!

俺達が固唾を飲んで見守る中、
薬を飲み終えた高杉はその場で四つん這いになってゲホゲホと咳き込み始めた。
まあ仰向けで無理やり口ん中に液体突っ込まれりゃそうなるわな。
どうやら今のところ高杉の体に異常はないみたいなので、
俺達はそのまま物陰で様子を見守ることにした。

「……じゃない……。」
『えっ?』

俺達のところまでは聞こえなかったが、高杉が何かを呟いたようだった。
その言葉に、がいきなり真っ青になる。
何だ、何を言ったんだ?ヤバいのか?キレたのか?行った方がいいのか?
俺達の頭の中にそんなワードが飛び交っている時、
急に高杉がバッと顔をあげてを怒鳴りつけた。

「酷いじゃない!!あたしが何したって言うの!?」
『ゴッ、ゴメン!!!!アタシ何した!?』

突然聞こえてきたその言葉に、
俺達はまたその場で起立し腹の底から思いっきりシャウトした。

「うええぇぇええぇぇぇ!?」
「たっ、高杉!?一体どうしたというんだ!!」
「アッハッハッハ!そうきたか!」
「笑い事じゃねーよ!!どうすんだよアレ!!
 もうアイツ取り返しのつかねーことになってっぞ!!」

何がそんなに面白いのか、真っ青になる俺達とは裏腹に、
辰馬はいつもの能天気な声でケラケラと大笑いを始めた。
俺とヅラはというと、高杉のあまりの変貌っぷりに頭が付いていかない状態だ。
そんな高杉を目の前にしているは、俺達よりももっと困惑していた。

「酷い酷い!なんて大ッ嫌い!」
『ゴ、ゴメン晋助……まさかこんなことになるなんて……。
 あ、あの……お詫びの印に晩ご飯おごるよ、一緒に食べに行こう?』
「ぐすっ……ホント?」
『ホントホント、久しぶりに5人でご飯食べよう。』
「……なら、許してあげる。」
「バカかァァ!!!!」

話の流れがおかしな方向に行ってしまったので、
思わず俺はそう叫びながら草むらを飛び出ての元へと向かった。
そしてポロポロと泣いている気持ち悪い高杉をビシッと指差してこう叫んだ。

「俺は行かねーぞ!!そんな気持ち悪ぃ高杉と飯なんか食うかァァ!!!!」

俺は至極真っ当な意見を言ったと思ったのだが、
既にオカマ高杉を受け入れ始めているらしいは
『そんなこと言ったら晋助が可哀相じゃない!』と俺を非難の目で見つめてきた。
いやいやいや!!そいつもう高杉じゃねーから!オカマ杉だから!!

「まぁ……俺達の当初の目的は果たされたということで……。」
「どこがだァァ!!!!果たされたどころか始まっちまっただろーがァァ!!」
「アッハッハ!ほいたら今日はおまんらを快援隊で盛大にもてなすぜよ!」
「もてなすなァァァ!!!!!」

ある寒い日の夜のこと。
とある港で俺のそんな叫び声が虚しく木霊した。




解決策はディナーの後で

(……っていう初夢を見たんだけど俺一体何がしたいんだと思う?) (ここまできて夢オチかィィィ!!!!) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 晋ちゃんのこと大好きなんだけど、私の愛情表現がですね……。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2012/01/02 管理人:かほ