アタシの目の前には今、羽織袴に身を包んだ小太郎と 白タキシードに白髪オールバックの銀時が非常に腹立つどや顔で座っている。 それは何故かって?理由は至ってシンプルだ。 今日というこの日が、伝説の攘夷志士4人によるプロポーズ大作戦の日だからだ。 「、俺は今でもお前をことを愛しているぞ。」 小太郎はそう言いながらおもむろに立ち上がり、 ゆっくりとアタシの方へ歩み寄ってきたかと思えば、 「だから、俺と結婚しよう」とキメ台詞と共に アタシの隣に腰掛け、その大きな手でアタシの手を握りしめてきた。 『こ、小太郎……。』 小太郎のその行動に、アタシの心臓は思わずキュンと締め付けられる。 いつも電波な小太郎しか見ていないから、 こうして真面目な顔をして真面目なこと(?)を話している小太郎を見てると 狂乱の貴公子と呼ばれていた昔の小太郎を思い出して、何とも言えない気持ちになる。 今では原作でも「電波キャラ」として確固たる地位を築いてしまった小太郎だけど、 攘夷戦争時代はそりゃあカッコ良かったのだ。 戦場にそぐわない長髪をなびかせ、しかしその動きはまさしく真の侍。 目で追うことすら危ういその動きはまるで何かにとりつかれているようで、 いつしか小太郎は戦場で「狂乱の貴公子」と呼ばれていた。 それが今ではダンボールから出てきて「スタンバってました」と言ってみたり、 「エリザベスから出てこようかで三日三晩悩んだ」とか言ってみたり、 本当にあのカッコ良かった小太郎はどこへ行ってしまったのやら……。 アタシが小太郎と見つめあいながらそんな事を考えていると、 ふいに「オイ」とすこぶる不機嫌そうな声が聞こえてきた。 「ヅラァ、テメェいつまで俺のと手ぇつないでやがんだ。 そしていつまで俺のと見詰め合ってるつもりだ。離れやがれバカヤロー。」 「ふははは!銀時、男の嫉妬は見苦しいぞ。」 「誰が嫉妬だゴルァ!!いいから離れろっつってんだよ!!」 銀時はそう怒鳴りながら勢いよく小太郎に襲い掛かり、 小太郎もそれに反撃して取っ組み合いの喧嘩になってしまった。 『誰が俺のやねん』とツッコミそこねてしまったアタシは、 そんな2人の取っ組み合いの喧嘩をしばらく眺め、そして大きなため息を吐いた。 2人がこんなちゃらんぽらんになってしまうんだったら、 いっそあの頃のカッコいい銀時やカッコいい小太郎に言い寄られてOKしておくんだった……。 今やプロポーズ大作戦に参加するメンバーが ニート・お尋ね者・テロリスト・毛玉になってしまっているこの現実を あの頃の若かったアタシに伝えてあげたい。 そんなことを考えながらアタシがまた大きなため息を吐いたその時だった。 ドガァァン!!!!!! 突然万事屋の壁が何者かによってぶち壊され、 取っ組み合いの喧嘩をしていた2人も突然の出来事に驚いたのか お互いの胸倉を掴んだままピタリと静止して同時に破壊された壁を見た。 『なっ、何!?』 勿論アタシも例に漏れず、驚いてその場で立ち上がり破壊された壁の方を見る。 視線の先で銀時の社長椅子が粉々に破壊されているのが衝撃の大きさを物語っていた。 アタシ達3人が固唾を飲んで舞い上がった砂埃を見つめていると、 その中から非常に聞きなれたアホっぽい声が聞こえてきた。 「アッハッハッハ!またやってしもうたぜよ!」 『えっ……た、辰馬!?』 アッハッハというアホっぽい笑い声と共に砂埃から登場したのは、 プロポーズ大作戦参加メンバーの毛玉こと坂本辰馬だった。 その姿を確認した途端、銀時と小太郎のテンションが一気にガタ落ちする。 「またテメーか!!その壁弁償しろよ!!」 「坂本お前……いい加減に玄関から人の家に入ることを覚えろ。」 「アッハッハッハ!いやー、すまんすまん! はよぅんトコばぁ行きたいと思うちょったらつい力みすぎてもーてのぉ!」 辰馬はそう言いながらまたアッハッハとアホな笑い声をあげた。 『アンタも昔に比べるとずいぶん脳みそ軽くなったわよねぇ……。』 「おー!!久しぶりじゃのー!元気にしちょったか?」 アタシが昔のカッコ良かった辰馬を思い出しながら引きつった笑顔を作れば、 辰馬はアタシの姿を見た途端嬉しそうな顔をしてのそのそと歩み寄ってきた。 「おんし、しばらく見んうちにまた綺麗になったんやないがか?」 『あら、分かる?』 「アッハッハッハ!そーゆーところも相変わらずやき! どれ、もっと近くで顔を……うぇぇっぷ。」 あともう少しでアタシの傍に来るかというところで、 辰馬は急に真っ青な顔をして口元を押さえ、その場にしゃがみこんだ。 そんな辰馬の様子にビックリしたアタシは慌てて辰馬の元へと駆け寄った。 『ちょっ、辰馬大丈夫!?』 アタシが背中をさすりながら尋ねれば、辰馬は青い顔をしてアタシの顔を見上げてきた。 「アッハッハ……昨日飲みすぎたきに、朝から吐き気が……うぇぇっぷ。」 『うわー!!こんなトコで吐かないでよー!?何でそんな状態で来たのよー!』 今にも吐きそうな辰馬にアタシが慌ててそう叫ぶと、 突然辰馬がアタシの腕をガッと掴んだ。 そしてゆっくりとアタシの顔を見据え、やけに真面目な声でこう囁く。 「ワシャ例え両手両足失ぉーても、 愛するに会うためならどこへでも駆けつけるぜよ。」 その真剣な表情に、アタシは思わず顔を真っ赤にして息を呑んだ。 サングラスからのぞく大きな眼、普段のアホっぽい声からは想像も出来ないほど真面目な声、 いつもへらへら笑っているくせに、こういう時だけすごく真面目な顔をする。 普段とのギャップのせいなのか余計にドキドキしてしまう。 あぁもう、ズルいズルいズルい!!バカ共の本気
(ギャップ萌えで攻めてくるなんて、コイツ、あざとい……!!) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 攘夷4人の4色のプロポーズを書けたらなぁって思ってます。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2013/03/22 管理人:かほ