『はい鴨太郎!これ鴨太郎の分の短冊ね♪』 そんなの元気な声で今日という日が始まった。 いきなり長方形の紙切れを渡されたから何事かと思ったが、 なるほど、今日は年に一度の七夕だ。 近藤さんの思いつきで今年は全員で短冊を書いて笹に飾るらしい。 去年は確か、この時期に幕府のイベントがあったから その警備で七夕どころではなかったんだっけ。 僕は元気に走り回って隊士達に短冊を配っているの後姿を見て、 ため息混じりにフッと微笑んだ。 朝から元気なのはいいけど、もうちょっと一緒に喋りたかったな。 「まぁ、皆に分け隔てないも僕のストライクゾーンなんだけどさ☆」 「…………沖田君、一体何をしているんだい?」 「伊東先生の心の声を代弁したんでさぁ。」 「余計な事はしないでくれるかな。それに全然代弁出来てない。」 「あれっ、間違ってやしたか?」 まるで僕の心が見えたかのようにニヤリと笑う沖田君に、 僕は恥ずかしくて何も言い返せなかった。 全く、どうしてこうも勘が鋭いんだ。まさか僕が分かりやすいのか? 「おいテメー等、さっさと行くぞ。」 「へーい、指図するんじゃねぇよ土方コノヤロー。」 「返事するか悪態つくかどっちかにしろ。」 こうして、僕はちょっとした疑問を抱えたまま仕事に向かうことになった。 『うーん、いざ願い事を聞かれると困るなぁ……。』 夕方、いつものメンバーで一つのテーブルを囲んでいる中、 が頭を抱えてそう唸っていた。 それを見て近藤さんがため息をつく。 「だから昨日のうちに考えておけって言っただろ?」 『だってぇ、七夕の日に考えるからいいんじゃない。』 「何を言うか!常日頃から願っている事が真の願いなんだぞ!」 そう言いながら自慢げに自分の短冊を見せる近藤さんに、 この場に居た土方君と沖田君、そしてまでもが深いため息をついた。 『近藤さん、いい加減諦めなって……。』 「しつこい男は嫌われますぜぃ?」 「俺はしつこいんじゃないの!一途なだけなの!」 「俺ァアンタがあの女を諦めることを願うかな……。」 近藤さんの短冊には汚い大きな文字で “お妙さんと結婚できますように”と書いてある。 口には出さないが、僕もそろそろ諦めた方がいいと思う。 『そーごは何て書いたの?』 「俺も常日頃から願ってるマジな願い事を書いたぜ。」 『へー、ホントに?教えてよ。』 「全国の土方十四郎が死にますように。」 「それ完全に俺のことじゃねーか!!!!」 沖田君の予想通りの願い事に、僕とは2人して苦笑いをした。 そして例に漏れず土方君が沖田君に斬りかかり、 沖田君もそれを紙一重でかわし応戦していた。 そんな2人を近藤さんが止めようとするが、 「ストーカーゴリラは黙ってろ!」という二重奏に本人まで暴れだしてしまった。 「あぁ〜もう!局長も副長も沖田隊長も喧嘩しないで下さいよ〜!!」 そう言う山崎君を筆頭に、騒ぎに気づいた隊士立ちが3人を止めにかかる。 しかし中にはもっとやれと煽る隊士達も居て、 そう簡単には収まらないだろうな、と思った。 『鴨太郎は何て書いたの?』 僕が大騒ぎになってしまった近藤さんたちを呆れた顔で眺めていると、 隣に座っていたがおもむろにそう尋ねてきた。 「僕はまだ書けていないんだ。は?」 『ア、アタシは……別に大したことじゃないんだけど……。』 そう言ってちょっと照れながら短冊を見せる。 そこには「真選組の皆がいつまでも仲良く居られますように」と書いてあった。 「素敵な願い事じゃないか。らしいよ。」 『ホント?良かったぁ!』 僕の言葉に嬉しそうにそう言って、満面の笑みを僕に見せてくれた。 真選組のみんな、という言葉にちょっと嫉妬してしまうけど、 そんなも愛おしいと思っている自分が居るので仕方なしとした。 欲を言えば、僕の名前だけを書いてほしかったんだけどな。 「がみんなの幸せを願ったから、僕は私的な願い事でもしようかな。」 『私的な願い事?眼鏡の替えがいっぱい降ってきますようにとか?』 「……僕を一体何だと思ってるんだい?」 大真面目に尋ねてくるに、僕は呆れてそう言った。 そして自分の願い事を短冊に書く。 は僕の願い事が気になるのか書いている途中も僕の短冊を覗き込んでいたが、 その顔は見る見るうちに真っ赤に染まっていった。 『か、鴨太郎……。』 「よし、書けた。」 『そっ、そんな恥ずかしい願い事笹に飾るの!?』 「いけないかな?」 『いっ、いけなくはないけど……。』 僕の問いに、はもっと真っ赤になってしまった。 その様子が可愛らしくて、僕は思わず笑ってしまう。 「、顔が真っ赤だよ。」 『しっ、知ってるよ!鴨太郎のバカ!』 の願い事の中に一人だけで入る事は不可能だったけど、 とりあえず今はこの僕だけに向けられる顔で我慢しておくか。愛する人と
(ひぃぃ!ちゃぁぁん!そろそろ助けてぇぇ!) (きゃー!?退っ、原田さんっ大丈夫ー!?) (……やっぱりもうちょっと僕に執着してほしいなぁ) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 真選組は今日も仲良しです。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2010/07/07 管理人:かほ
死ぬまで一緒に居られますように