「これだったらまだ河上君の方がマシだったんじゃない? あの人暴走しがちだけど、ちゃんのこと大好きだし、行動力あるし。」 『えぇっ!?そんな!』 「そうアルよ。あんな草食系よりも身近な肉食系ネ。」 「ちゃん、愛されるよりも愛したいマジでだぞ。」 「「いやそれは意味分かんないけど。」」 どうやら伊東君がアタシのことをって呼んでくれないのが大問題らしく、 3人は勝手に河上君がどれだけアタシのことを好きかについて語りだしてしまった。 そりゃ河上君はアタシにすっごく良くしてくれてると思うけど、 それでもアタシの好きな人は鴨太郎君なんだもん……。 「女子が4人顔を合わせて拙者の噂話でござるか?」 突然頭上から降ってきたその声に、 アタシはビクッと体を震わせて急いで後ろを振り返った。 するとそこには口元に笑みを浮かべて立っている河上君の姿が。 『うわあぁぁビックリしたぁぁ!!黙って人の後ろに立たないでよ!』 「これは悪かった。心の中ではへの愛を叫んでいたのだがな。」 『そんな聞こえない叫び意味ないよ!いや、実際に叫ばれても困るけど!』 アタシが河上君に向かってそう叫べば、 何故かお妙ちゃんたちが一斉にニヤニヤと笑い始めた。 その行動の意味が理解できずアタシが頭に「?」を浮かべていると、 それに気づいたお妙ちゃんが「うふふ、」と意味深に微笑んで口を開いた。 「ちゃんと河上君って結構いいコンビよね。」 『へっ!?』 「志村は分かっているでござるな。拙者とは毎日が夫婦漫才でござる。」 『ちょっと何言ってんの!?夫婦漫才って何!?』 「それだぞ。」 「まるで打ち合わせしたかの如く息ピッタリネ。」 それぞれ好き勝手言いたいことを言い終わると、 今度は3人顔を合わせて「ねー?」なんて言い出した。 この3人はアタシと鴨太郎君が付き合ったことに反対なのか!? さっきまであんなに祝福してくれていたというのに! アタシが3人と河上君の連係プレイに困惑していた時、 教室の入り口から聞きなれた声が聞こえてきた。 「さん、待たせてすまない。」 その声にアタシが振り返ると、 そこには風紀委員会の話し合いを終えた鴨太郎君の姿が。 最初は笑顔でアタシに声をかけてくれていたんだけど、 アタシのすぐ傍に立っている河上君の姿を確認した途端、 急に不機嫌な表情になってしまった。 「河上君……またさんにちょっかいをかけているのかい?」 「そういう伊東殿はまだの事を他人行儀に呼んでいるのだな。 そんなことでは夫婦漫才師として名高い拙者らには勝てないでござるよ。」 『だから誰が夫婦漫才師だ!』 アタシは思わずまた絶妙のタイミングで絶妙のツッコミを入れてしまった。 それが気に入らなかったのか、鴨太郎君はアタシをムスッとした顔で睨みつける。 しまった、鴨太郎君を怒らせちゃったかもしれない。 あーもうどうしてこんなことに……。 今日も一緒に帰ろうって約束してたから、朝から凄く楽しみにしてたのに……。 アタシがそんな事を考えながら肩を落としていると、 教室の入り口付近で立ち止まってた鴨太郎君が おもむろにアタシ達の方へと歩み寄ってきた。 そして乱暴にアタシの腕を掴むと、これまた乱暴に自分の方に引き寄せ、 ムッとした顔をしている河上君を鋭い目つきで睨みつけた。 「君には悪いがは僕の彼女だ。 今後あまり馴れ馴れしくしないでもらいたいね。」 鴨太郎君のその一言に、その場にいた全員が驚いた。 さっきから好き勝手言っていたお妙ちゃん達は 「おぉぉ!」と声をあげて興奮していたし、 河上君は鴨太郎君がそんなことを言うとは思っていなかったのか、 サングラス越しでも分かるくらいに大きく目を見開いていた。 アタシはと言うと、突然腕を掴まれて抱きしめられた時点で もう既に顔が真っ赤だったと言うのに、 そんな追い討ちをかけられてもうどうしたらいいか分からなくなっていた。 鴨太郎君ってこんなに頼もしかったっけ!? って言うかいまって言った!サラッとって言った!! 一度に色んなことが起こったので、 自分でも恥ずかしいのか嬉しいのかよく分からなくなっている。 でも自分の顔が赤いことは紛れもない事実で、 アタシはその顔を隠すように鴨太郎君にしがみついていた。 「ほぅ……?随分と強気でござるな。」 河上君がそう言えば、鴨太郎君は少しだけ目を伏せた。 「ぼ、僕が強気でなかったら、 折角僕を好いてくれているに悪いじゃないか……。」 鴨太郎君はそう言い終わるとやっぱり恥ずかしかったのか、 河上君からもお妙ちゃん達からも顔を逸らして黙り込んでしまった。 やっぱり最後にはヘタレちゃってるけど、 アタシは鴨太郎君の言葉が心底嬉しくて、 しばらくぶるぶると悶えた後に思いっきり鴨太郎君に抱きついた。 『あーもう大好き!好き好き大好き!鴨太郎君可愛い!』 「えっ!?ちょ、さんっ……!」 『えぇ!?何で戻ったの!?って呼んでくれたのに!』 アタシが眉をハの字にしてそう言えば、 鴨太郎はもっと困った顔をして申し訳なさそうにこう言った。もうちょっと時間をくれないか?
(河上君!もっかい鴨太郎君にって呼ばなきゃ浮気しちゃうぜ!って言って!) (って呼んだら拙者嫉妬でを押し倒してしまうでござる) (えぇ!?そんなこと言えなんて頼んでないけど!!) (河上君!いい加減にのことは諦めろ!) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 負けん気は強いけどやっぱりヘタれちゃう鴨太郎が可愛いです。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2011/08/20 管理人:かほ