しょうせつ
!絶対にあの馬鹿兄貴の前で戦っちゃ駄目ネ!」

神楽ちゃんが言ってた、この言葉。
その時はあーはいはい、分かってるよ、ありがとう。って流してたけど、
今思うとこれはすんごい聞くべき忠告だったなぁ、と後悔する。





 

【最強夫婦計画】

吉原での戦いが終わって一週間。私は今ストーカーに遭っている。 いや別にウチの近藤さんが私に乗り換えたとかそんなんじゃなくって、また別の人物に、だ。 屯所に帰ってきた時、勿論私はボロボロで、近藤さんにこっぴどく怒られた。 吉原に行くって事、近藤さん達に話してなかったからなぁ……。 でも、すっごいすっごい心配してくれて、最後の方なんて、近藤さん泣いちゃって……。 怒られていた私が『ごめんなさい、だから泣き止んで?』って慰めたくらい。 トシも勿論怒ってたけど、『躾は親がするもんだ。』って理由で何も言わなかった。 でも怒らない代わりに『妹をこき使うのは兄貴の役目だ。』っていう理由で 一週間の厠掃除係りを命じられた。(トシ酷い……) 清蔵さんが嬉しそうに一緒に頑張ろうな!とか言ってきたのでとりあえず殴っておいた。 総悟は『旦那に付いてったんですかぃ。俺も呼んでくれよ。』って言ってたから、 別に私の心配なんてしてないんだろうなコイツとか考えてたら 何だか無性に腹が立ったのでとりあえず蹴りをお見舞いしておいた。 (その後近藤さんに『怪我人は大人しくしてなさい!!』ってまた怒られた) こうやって普通の生活に戻ってきて、心底安心してた。 退がお風呂沸いてるよって言ってくれたので、ありがたくお風呂をもらった。 攘夷時代は心底安心できる場所が無かったから、 こういう時改めて家族って良いなぁって実感する。 そして、ゆっくりとお湯に浸かって(傷にすっげぇ染みた)、 ぼんやりと天井を眺めていたら、急に壁がブチ壊された。 ドガァン!!てすっごい音が鳴ったかと思えば、軽快な足取りで誰か入ってくる。 私は口をあんぐりと開けたままその人物を見ることしか出来なかった。 「やあ、やっぱりココに居たんだ。どう?傷痛む?」 にっこりと微笑むその顔は、吉原で見覚えのある顔だった。 『か……神楽ちゃんの兄ちゃん……。』 「神威だよ。そんな覚え方しないでくれる?虫唾が走るから。」 尚もにっこりと微笑んで、バシャバシャと風呂の中を歩み寄ってくる。 あの、私一応全裸なんですけど……。 「あぁ、やっぱり傷だらけじゃないか。早く治しちゃってね。  俺が戦いたい時に万全の状態で戦えるように。」 何言ってんのコイツ。ってかアタシ全裸!!ちょっとは遠慮しろ!! 「俺と互角に渡り合った女は君が初めてなんだからね。」 そういえば……と、神楽ちゃんの言った言葉を思い出す。 『私の馬鹿兄貴は強い奴が大好きネ。本気出せば、は私よりも強いヨ。  だから、!絶対にあの馬鹿兄貴の前で戦っちゃ駄目ネ!』 そんで、その言葉を聞き流して、銀時に付いて行って(むしろ追い抜かして)、 この兄ちゃん(神威だっけ?)が居るのに目の前で鳳仙に一発お見舞いして、 その後コイツが攻撃してきたから、思わず思いっきり反撃してしまって、 私も多少気が立ってたから、マジになっちゃって……銀時が来て……。 「結局あの後うやむやになっちゃったから、いつかまた決着つけようね。」 神楽ちゃん似の可愛い笑顔でそう言われ、私は苦笑いする事しか出来なかった。 ってかアタシ全裸なんだってば、ちょっとは遠慮しろよ!!と、 普通に目の前で私を見下ろしてくる神威に今度こそ突っ込もうと思ったら、 物音を聞きつけた隊士達がやっと来て、神威は『じゃあね。』と言って外へ向かった。 「おっ、お前ェェェ!!!!の裸を拝んで逃げる気か!!名を名乗れェェ!!!!」 「近藤さん、名前聞いてどうすんだよ。」 「弱い奴に興味は無いから、名前は教えてあげない。  それと、そんな貧相な裸見たって、別になんとも思わないから。」 私は風呂桶を思いっきり神威に投げつけてやった。 その日から毎日のように屯所に現れては、必ず私に襲い掛かって来るようになった。 まだ怪我が癒えてないってのに、本気で攻撃してくる。 そして屯所のどこかを壊しては『またね。』と言って去っていってしまう。 『いや、またね、じゃねーし。』 この私のセリフももぅ何度目だろう。 巡回中も後ろに居るし、甘味処ではさも当然のように隣に座ってくる。 これ絶対ストーカーだよね、むしろストーカーだよね、と思って私がお妙さんに ストーカー被害についての悩みを聞いてもらってる時は、殺る対象がいないからって 隣で優雅にお茶を飲んでいる。(お妙さんは何故か受け入れている) 『ってか本人居たら意味無いだろーがァァァ!!!!!!』 思いっきり蹴りをお見舞いしたら、『それは違う!』と軒下から出てきた近藤さんに 運悪くクリーンヒットした。(ってか近藤さんアンタ……) この前嫌味で『ここと屯所での態度は随分違うのね。』って言ってやったら、 『何?戦って欲しいの?この人巻き込んじゃうよ?』って笑顔で返された。 「それに、君とこうしてお茶飲んでるのも悪くないし。」 尚も笑顔で言う神威に、不覚にも笑顔がこぼれそうになる。 「あら、ちゃんったらモテモテねぇ。あなた神楽ちゃんのお兄さんなんでしょう?  神楽ちゃんもちゃんがお姉さんになったらきっと喜ぶわ〜。」 「お妙さん、神楽の兄貴だとか言わないで。虫唾が走る。」 「あら、ごめんなさいね。えぇっと、神威君だったかしら?  随分ちゃんのコトが好きなのねぇ。でも、ストーカーは駄目よ?」 「ストーカーじゃないよ、マークしてるだけ。」 ってか、何でそんなに呑気に喋ってんのアンタ等……。 この会話を聞いて『はお嫁になんて出しません!!』と軒下から出てきた近藤さんが お妙さんにボッコボコにされたのは言うまでもない。 「この前、が居なくなった後、少しお妙さんと話してたんだけどさ。」 その光景をいつもの事だと見守りながら、神威はおもむろに私の隣に来て さっきお妙さんが淹れてくれたお茶をすすりながら勝手に話し始める。 『え、ってかちょ、何でアンタそんなにココに馴染んでんの?』 「あの人と自分の関係が、俺とに似てるんだって。」 『え?無視?アタシの話完全にスルー?  ってかアンタそれ遠まわしにストーカーだって言われてんのよ。』 「だからきっと、何だかんだ言って、将来結婚するんでしょうねってさ。」 『え、ちょ、アタシの話聞いてくれる?ねぇ、ちょ…………え?』 神威にツッコむことばかりに神経が行っていたので、すぐに話の意味が分からなかった。 「嫌い嫌いも好きのうちって、よく言ったものねって、言ってたよ。」 最後のお茶をすすり終わって、神威はふぅ、と軽くため息をつくと、 私のほうを見ていつもの笑顔でこう言った。 「でも、どうしてだろうね。俺はの事好きだよ。」 『え……?』 「好きだ好きだって思ってたら、それは嫌いになるのかな?」 『ぁ、えっと……。』 この時、やっとお妙さんが遠まわしに近藤さんのことを好きだって言った事に気づいた。 でも、その後の話の内容はまだ理解できてない。いや、分かってるんだけど。 「じゃあ俺はのことが嫌いだよ。どっちが強いか、戦ってハッキリさせたいけど、  でも、それでを死なせたくないし、俺もを置いて死にたくない。」 でもやっぱり戦いたいんだよねって、笑顔でケラケラ笑ってるアンタは、やっぱり……。 『……変。』 「何?喧嘩売ってるの?上等だよ、かかっておいでよ。」 『ヤだ。アタシ平和主義者だから。』 いつか、アタシもコイツの事を大切だって思える日が来るんだろうか。 「平和主義者?そんなんじゃ俺の嫁は務まらないよ。」 『嫁になる気ねーし。』 「力尽くでもなってもらうよ。だって、俺と互角に渡り合えた唯一の女だからね。」 でも今は、まだ全然そんなフラグ立ってません。

最強夫婦計画

(ところでさ、ストーカーって何?) (…………) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 何気に近妙要素が入ってるあたり、やっぱり私は雑食なんだと思う。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2008/09/21 管理人:かほ