『……アタシ、今すぐ団長から逃げられたら死んでもいい。 いや嘘、やっぱ死にたくない。』 俺に組み敷かれているが引きつった笑顔でそう言ったのを、 俺はの頭上から笑顔で眺めていた。 ちょっと早口で無気力な口調で言っているところがなんともらしい。 他の女だったら、俺に押し倒されたりなんかしたら きっと黄色い声を上げて喜ぶだろうに。 「じゃあ俺は今からと一発ヤれたら死んでもいいよ。」 『何言ってるんですか。冗談は強さだけにして下さい。』 両手を拘束されてなす術なしのが相変わらずの口調でそう言った。 その様子があまりにも可愛らしくて、俺はまたに笑いかける。 この笑顔はいつもの敵に送る笑顔じゃなくて、彼女だけに送る笑顔。 それを知ってか知らずか、 は俺の笑顔に応えるように声を上げて苦笑した。 『団長、そろそろ笑えないです。』 「何?、この状況でまだ冗談だって思ってるの?」 の両手を抑えている手に力を込めて笑顔で言ってやったら、 の顔からザアァと血の気が引いた。 「(面白い……。)」 『まさか……本気なんですか?』 「ん?あぁ、勿論。だって俺、のこと好きだし。愛してるからね。」 本当は本気で襲う気なんてない。 ただ、のくるくる変わる表情が面白くてからかっているだけだ。 勿論、のことを愛しているのは事実だけど。 毎日毎日同じような事でからかっているのに、 それでもは一回一回本気で捉えてくれるから面白い。 昨日だって全く同じシチュエーションでからかったばかりなのに。 『だだだ、団長。』 「ん?なに?」 『1つだけ何でもお願い聞いてあげますから、襲うのだけは……。』 「えぇー?どうしようかなぁー?」 昨日も同じ条件で俺はを襲うのを止めた。 は学習能力があるのかないのかよく分からない。 もしかしたら、本気で交換条件のおかげで 俺に襲われるのを免れていると思っているのかもしれない。 「じゃあ、今夜も一緒に寝てよ。」 『寝るくらいならお安い御用です!』 「ちゃんと俺に抱きついて寝てね?」 『大丈夫!アタシ寝相だけはいいですから!』 俺は必死に言うを解放してやり、そのままベッドに入り込んだ。 解放されたもごそごそとベッドに入り込み、律儀に俺に抱き付いてくる。 俺は色々我慢してを抱き寄せてやった。 「、昨日もこうやって寝たよね。覚えてる?」 『覚えてますよ!アタシを馬鹿にしてるんですか?』 「……うん、ちょっとだけ。」 覚えているならどうしてあんなにも必死なんだろう。 何事にも一生懸命なの性分なんだろうか? それとも、騙されやすいの性格なんだろうか? 「明日もを襲っちゃおうかな。」 『えぇぇ!?ちょ、マジで止めて下さい!!』 またもや本気にしたの口を、頭を引き寄せて自分の胸板で封じてやった。 ちょっとの間苦しそうにもがいていただったが、 俺が力を緩めてやるとプハッと大げさに息を吸い込んだ。 そんなに、俺は無意識のうちに笑いかけていた。 「俺、ホントにになら殺されてもいいかも……。」 『はぁ、はぁ……へ?今何て言いました?』 「ううん。何でも。」 息切れ切れに言うを抱きしめて、俺はさっさと眠ることにした。 全てのことが昨日と同じように運ぶのならば、 この後、俺が眠ってしまう前にの寝息が聞こえてくるはずだ。 『すー……すー……。』 案の定聞こえてきたの寝息に、俺は思わず噴き出した。 どうしてこうもは分かりやすく、 他の女共とは違った反応を見せてくれるんだろう。 「……おやすみ、。」 俺は昨日はしなかった行動で、の呼吸を邪魔してやった。死んでもいいけど死にたくない
(だって死んでしまったら、の寝顔を見られないから) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ 兄ちゃんが奥手だよー!ビックリだよー! ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2009/05/22 管理人:かほ