しょうせつ

『……団長、出て行って下さい。』

只今の時刻・10時ジャスト。
よい子とジジババはもう眠っている時間です。
私も任務がない日ならばすでに寝ている時間です。
夜更かしはお肌に悪いんです。
ごめんなさい、カッコいいこと言ったけど
実はお子ちゃま体質なんで無条件で眠たくなるんです。

そんな私がなぜまだこの時間に起きているのかというと――。

「何で俺が出て行かなきゃなんないの?」

この自分勝手・自由気ままな団長様が
私のベッドの上であろうことか上半身裸で寝転んでいるからです。

『いやいや、何でじゃないでしょ。ここアタシの部屋ですから。』
「春雨艦内なんだし、皆のものだよ。」
『団長、部屋ってプライベート空間なんですよ知ってました?』

私が真顔で突っ込むと、へらへら笑ってスルーされた。(この野郎……)

『第一、あなた今日は任務入ってませんでした?』
「んー?ボイコットして……いや、間違えた。阿伏兎に任せてきた。」
『明らかに今ボイコットって言いましたよね。逃げてきたんですよね。』

あぁ、最悪だ。明日私が阿伏兎さんに怒られる。
何で私なんだよ。団長を追い出さない私が悪いの?
だったらこの世のポストが赤いのも全部私のせいだよコンチクショー。
あぁ、罵れ、罵るがいいさ!

「、そんなとこで突っ立ってないで、こっちおいでよ。」

私が脳内で自暴自棄になっていると、
何も考えていない団長様から素敵なお誘いがあった。

『ふざけないで下さい団長。誰が行くか。』

私がそう言い捨てて部屋から出ようとしたら、
急に後ろから腰を引っ張られ、そのままバックドロップをかまされた。
幸か不幸か、私が落とされたのはベッドの上だったので大事には至らなかったが、
それでも頭から後ろ向きに落とされるというのは恐怖以外の何者でもなく、
解放された私は息切れ切れに団長に向かって心の底から怒鳴った。

『は、はぁぁぁ!?
 おまっ、いきなりバックドロップっておかしいだろ!!!!』
「だってがどっか行こうとするから。」
『そりゃするわッ!!!!
 アンタみたいな露出狂と一緒に居たら
 アタシの身が何個あっても足りないもんッ!!!!!』
「俺は寝る時いつもコレだけど?」
『そういう問題じゃなぁぁい!!!!!』

ゼーハーと息を整えながら、
私は自分の怒りが完全に空回りしていることに気づき、落胆した。
この人にどれだけ刺々しい言葉を投げつけても、全て避けられてしまうのだ。
知ってた。そんなこと知ってたもん。泣かないもん……。

「じゃ、寝よっか。」
『アンタ本気で死んで下さい。』
「アンタなんて他人行儀だなぁ。俺との仲じゃないか。」
『上司と部下ですね、分かります。』

私がどれだけこの人を拒否したところで、
どうせ聞く耳持たずなのは知っていた。
私がどれだけ酷い言葉を投げかけたところで、
どうせこの人には微塵も効かないことくらい知っていた。

「さ、おいでよ。寒いだろ?」

どうせ今から逃げ出したところで、
地獄の果てまで追いかけられることなんて、分かりきっている。

『……ヘンなことしないで下さいよ。』
「大丈夫だよ。今日は襲わないって約束する。」

どうせ私が団長に丸め込まれることなんて、
この人にはお見通しなんだろう。

「あったかい。あれ、また太った?」
『殴り殺しますよ?しかも腰に手ぇ回さないで下さい。』

なんだかんだ言って、貴方と過ごすこの時間が心地良いだなんて、
きっと貴方には分かりきったことなんでしょうね。




押して駄目でもしてみろ

(、いい匂いがする……) (ぎゃああ!押し倒すな契約違反んん!!!!) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ ツンデレなんですよ。(あれ、一言?) ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2009/06/21 管理人:かほ