しょうせつ
、いい子いい子して。」

団長のこの言葉に、私と阿伏兎さんと云業さんは物凄い顔になった。

何を隠そう、現在戦闘の真っ最中。
猫とネズミと盗賊とゴロツキしか居ないこの偏狭の星で、
今日の任務はあるお偉いさんに盾突いた盗賊団を壊滅させること。
別にほわほわしたメルヘン任務ってわけでもなく、
“いい子いい子”なんて可愛らしい言葉、
どこからも滲み出てきそうになかったんだけど……。

『……あの、上司にこんなこと言うのもアレですけど、
 アンタ一体何考えてんですか?』

私は敵の頭部をふっ飛ばしながら呆れた口調でそう言った。
団長様は相手が弱くてやる気がないのか、
ずっと私たちの後ろで座り込んでいる。
それを団長大好きで律儀な云業さんがちゃんと守っていた。
でも、やっぱり云業さんでも先ほどの言葉はおかしいと思ったらしく、
団長に背後から襲いかかろうとした奴の腕を持って放り投げながら
おずおずと団長に向かって意見した。

「団長、今はそれどころじゃ……。」
「それどころだよ。にいい子いい子してもらわなきゃ気がすまない。」

ホント何考えてんだろうこの人。
私はとりあえず団長の事を無視して湧き出てくる敵に集中した。
すると、部屋の奥の方を担当していた阿伏兎さんが
物凄いスピードで周りの敵をなぎ倒し、こちらに歩いてきた。

『……まさか……。』

私は嫌な予感がして、自然と顔が引きつった。
阿伏兎さんはいつものように面倒くさそうな顔で
襲い掛かってくる盗賊たちを千切っては投げ、千切っては投げ……。
そして私の前まで来ると、はぁ、とため息をついて顎で団長をしゃくった。

『え、ちょま、マジで?』
「マジだ。今やっとかねーと後々面倒なことになんだろ。」
『いやいやいや、敵は?』
「残りは俺と云業で片付ける。」
「俺も!?」

まさかのメンバー入りに云業さんが驚き、
勢い余って敵を2、3人、やたら遠くまで飛ばしてしまった。
団長はと言うと、私の方をじっと見つめて無言の訴え。
阿伏兎さんはくるりと敵のほうを向いて戦い始めてしまった。

『本気かいアンタ等……。』
「ちゃん、しょうがねぇ、さっさと済ましちゃいな。」
『云業さん……。』

私は云業さんの掲げた手のひらにハイタッチし、選手交代を宣誓した。

『いきなりマジで何なんですか団長。』

いい子いい子する前に、私は聞いておきたいことを聞いておこうと思った。
任務中に、しかも戦闘中に、いきなりの暴挙に出たその思考回路を。

「うん、猫がね。」
『猫ぉ?』
「さっきそこに居た夫婦の猫がさ、いきなり喧嘩し始めたんだよ。」
『はぁ……。』

団長は私から目線をはずし、少し遠くを見つめていた。
私はまだ団長の言いたいことが分からず、
とりあえずなんで“いい子いい子”なのかだけでも
教えてくれないかなぁと思った。

「俺たちも一緒だ。いくら愛し合っていても、いつか殺しあう。」
『…………。』
「俺が今、いくらを愛していても、
 いつかは殺しちゃうのかなぁって思ったら、急に変な気分になってさ。」

そこまで言って団長は遠くに置いていた目線を私に向けた。
その目があまりにも真剣で、ちょっとだけカッコよくて、
私は怯んで思わず目をそむけてしまった。

「だから、まだ大丈夫なうちに愛してもらおうと思って。」
『……バッカなんじゃないの。』

いつもの笑顔に戻って小首をかしげる団長に、
私は悪態をつきながらいい子いい子をしてあげた。

『訂正しときますけど、アタシと団長は相思相愛じゃないですからね。
 しかもコレは愛情表現じゃなくて、団長命令ですから。』
「ありり、そうなの?」

言葉とは裏腹に優しく団長の頭を撫でている自分がおかしくて、
私はふぅ、とため息を漏らした。

「、一方通行って不安になるよ。
 今のうちに既成事実だけでも作っとかないと。」
『…………はい?』

団長の表情がいつも通り過ぎて、
私はその言葉と言葉の意味を把握するのに時間をくってしまった。
気がつけば、私は団長様に組み敷かれている状態。

『……え、なにこれ、え?』
「ちょっとくらいなら泣き叫んでもいいよ、。」

ココだけの話、頭上の可愛らしい笑顔に腹立つくらいキュンときました。




狂ったの可愛い素顔?

(ギャアアァァァァ!!!!!!) (ちょっと、泣き叫ぶのが早いよ) (って言うか団長ストップゥゥゥ!!!!!!) (ちゃぁぁぁぁぁん!?) .。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○ あれれー?甘えた神威がリク内容だったのになぁ……。 ※誤字、脱字、その他指摘等は拍手かメールにて。 2009/06/28 管理人:かほ